「感染者の全数把握取りやめ」に賛成

日曜の発熱外来はいつもキャパオーバー。今日も多くの方の受診予約をお断りすることになりました。

「他にはどこもあいてないのです。お願いします」と言われても、物理的に無理なものは無理なのです。

それでもなんとかしてほしいという方には特別に、明日の診療枠の予約を受け付けました。

そしてそんな方々の予約が明日の夕方分まで埋まってしまい、明日の新規予約の受け入れがすでに困難です。

流行拡大に加えて日曜日が5回と祝日が1回あった今月は、月間の発熱外来受診者総数もかなりの数値でした。

今月のPCR検査478件、抗原検査57件は、6月(PCR 216、抗原66)よりも大幅に増えています。

しかし、今日のPCR検査41件、抗原検査15件は、先週の日曜(PCR55、抗原21)より減っています。

もしかすると、ちょうどピークを超えつつあるのかもしれません(希望的観測)。

今日のPCR検査の結果が判明する明日は、結果連絡と届出(HER-SYS入力など)に追われることになります。

このような事後の事務作業に費やす労力は、発熱外来の疲れを倍増させ、従事者をひどく疲弊させます。

作業時間を作るために、当院では発熱外来の時間を短縮していますが、それって本末転倒な話です。

政府が検討を始めている「感染者の全数把握取りやめ」には、今となっては諸手を挙げて賛成します。

「第7波を乗り越えた後には見直しが不可避だ」なんて言ってますが、それは考え方がおかしい。

この第7波を乗り越えるためにも、作業を合理化すべきなのです。やるなら今すぐでしょう。

「2類」だ「5類」だと議論するから結論が出ないのです。とりあえず全数把握だけ、やめてみませんか。

「熊本市医療非常事態宣言」発令

爆発的な感染拡大に伴う病床使用率の急上昇を受け、昨日、「熊本市医療非常事態宣言」が発令されました。

大西市長が会見で述べた、市民と医療機関あての「お願い」をまとめてみると、

市民へ

(1)基本的な感染防止対策の徹底と、感染に備えた食料・日用品や解熱剤・咳止め等の事前準備を

(2)高齢者や重症化リスクの高い方も若い世代も、積極的なワクチン接種を(強制ではなく希望者のみ)

(3)医療機関はできる限り平日の昼間に事前予約して受診し、軽症の場合や検査目的で救急病院を受診しない

医療機関へ

(1)現在コロナ診療を行なっていない医療機関は、発熱外来への登録と陽性患者の診療への協力を

(2)コロナ診療している医療機関は、診療日・時間の拡大と受入対象・体制の拡大に協力を

現時点では一般的な「行動制限」は求めない代わりに、市民に求めるのは「受診抑制とワクチン接種」です。

「発熱外来の拡大」も喫緊の課題ですが、当院はキャパオーバー気味なので、できるのはせいぜい現状維持。

抜本的にコロナ診療体制を拡充するためには、何かインセンティブを付けるなどの効果的な方策が必要です。

一昨日も書いたように、発生届に関連する事務作業を減らしてもらえば、少しは余裕が出るんですけどね。

発熱外来に忙殺されて発熱以外の患者さんの診療が手薄になっている状況は、ホントに不本意です。

接種専用日のメリット

2週間ぶりに今日も、休診日を返上して新型コロナワクチンの<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3937.html" target="_blank" title="接種専用日">接種専用日</a>としました。

わずかながらファイザーのワクチンも入手できたので、午前中はファイザー、午後はモデルナを接種しました。

両者は希釈の有無や、接種量が違うので、同一日にその両方を接種する場合には、とくに注意が必要です。

休診日に接種するなんて大変ですね、と言ってくれる方がいますが、褒められるほどのことでもありません。

なにしろ、明日土曜は臨時休診しますから、「休診日を返上」なんて偉そうに言うことがおこがましいのです。

最大のメリットは、発熱外来や他の外来者に邪魔されないこと。今日は完全に、接種だけに専念できました。

被接種者の方々にとっても、今日は接種専用の「クリーン」な日であることで、一層安心ができるでしょう。

まとまった数の接種を行うと、その準備を効率良く行うことができます。一種のスケールメリットです。

また1日に50人以上に接種すると、熊本県から補助金が出ます。これも決して無視できない制度です。

さらにもうひとつ、休診日を返上して接種をすると、接種の委託料が加算されて休日料金となります。

これはインチキではなく、ちゃんと認められている裏技です。

そんなこんなで、いろんなメリットを求めて、8月や9月もまた金曜日に接種専用日を設定する予定です。

その代わり土曜休診が増えますが、これは日曜の地獄の発熱外来前の体力温存期間として、有意義なのです。

新規感染者の全例報告は、医療現場をムダに疲弊させています

新型コロナ感染者への熊本市の対応は、「重症化リスクのある方に集中した対応」に切り替えられています。

以前は、医療機関が「発生届」を出すと保健所が感染者全員に電話連絡を入れていましたが、今は違います。

原則としてSMS送信によって今後の流れが通知され、電話連絡は高齢者等に限定して行われます。

高齢者の他に、重症化リスク因子を複数持っている方や妊婦等の特別に連絡が必要な方に、電話がかかります。

酸素飽和度を測定するための「パルスオキシメーター」の貸し出しも、今は重症化リスクの高い方限定です。

感染者全員を一律にフォローする従来の態勢が破綻しつつあるので、このような方針転換は理解できます。

重症化因子のなさそうな感染者が重症化してしまう可能性はあるとしても、やむを得ない対応です。

しかし、これによって保健所の仕事量は減るかもしれませんが、医療機関の仕事量はあまり変わりません。

保健所がポイントをしぼってフォローするというのに、医療機関には全例報告する義務があるからです。

事ここに至れば、医療機関に対しても、一律に発生届の提出を求めるのをやめてもらえませんかね。

国が感染者の数やプロフィールの把握をしたいのであれば、HER-SYSの入力項目はもっと減らして欲しい。

氏名・性別・生年月日・電話番号・診断日。それだけにしてくれませんか。

そのかわり、重症化リスク因子をもっていると判断したケースについては詳細な報告をしますから。

発熱外来では診療に集中させていただきたい。国の統計解析や疫学調査の手伝いで疲弊するのは御免です。

発熱外来の受付時間は、実質的に毎朝30分以内です

「発熱患者専用ダイヤル」や「新型コロナウイルス感染症専用相談窓口」に電話がつながらない問題。

やっと電話がつながって当院の紹介を受けたものの、こんどは当院に電話してもなかなかつながらない。

その顛末は、2パターン。いずれも悲惨です。

(1)やっと電話がつながった患者さんに、「当院はもう予約が一杯です」とお断りする

(2)どうしても電話がつながらないので直接当院に来た方にも、「当院はもう予約が一杯です」とお断りする

「どうして診てもらえないのか・検査してもらえないのか」と、多くの方が困惑、もしくは少々お怒りです。

しかし、早朝から予約を入れて順番通り来院した方よりも、予約せずに来た方を優先するわけにはいきません。

そもそも、当院のキャパなど考えずに無限に紹介し続ける、市の「ダイヤル」や県の「窓口」が問題でしょう。

その相談窓口に紹介ストップの連絡を入れようにも、発熱者が使う番号にかけたのでは、つながるはずがない。

もっと別の、医療機関用の「緊急裏番号」を教えてもらおうと、県の健康危機管理課に電話しました。

すると担当者の個人携帯番号を教えてくれました。これはなかなか臨機応変で親切な対応ですね。ありがたい。

平日なのに今日も発熱外来の予約電話が多いので、朝のうちに早速その電話を使わせていただきました。

ていうか、平日なのに発熱外来の予約が朝から当院に殺到するって、どうしてなんでしょうね。

全国ニュースに出るほどの「HER-SYS」トラブル

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3914.html" target="_blank" title="HER-SYS">HER-SYS</a>」に不具合が発生したけど解決して、嬉しいような嬉しくないような話。

今朝9時台にはまだ、快適に利用できていました。7件の発生届を、HER-SYSからストレスなく入力しました。

10時台にいちどログアウトした後、再ログインを試みたら、「未登録ユーザーのためログインできません」と。

ちょうどその直前に、HER-SYSヘルプデスクに不満の電話をぶつけたので、仕返しされたのかと思いました。

でも、こういう場合の対処法には慣れてますので、順に試していきました。

(1)ブラウザ(Safari)を再起動 → ダメ

(2)Mac自体の再起動 → ダメ

(3)キャッシュのクリア&再起動 → ダメ

(4)ブラウザをChromeに変更 →ダメ

(5)ヘルプデスクに電話 →つながらない

(6)保健所の専用番号に電話 →つながらない

ダメじゃん。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3797.html" target="_blank" title="2月のトラブル">2月のトラブル</a>に愛想をつかして約5カ月間離脱していたHER-SYSに、ついに本格復帰した矢先の不具合。

よほど私はHER-SYSとの相性が悪いのか。システム障害は大規模で、大きな影響が出ているようです。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3947.html" target="_blank" title="昨日のブログ">昨日のブログ</a>のタイトルが、いま思えば妙な予兆を感じさせますね、偶然にしても。

と思ってたら、夕方にはシステムが復旧しました。なので午後の発生届12件はちゃんとHER-SYSできました。

ホンネを言えば、昨夜HER-SYS入力で懲りたので、私には手のかからないFAXに戻りたかったのですけどね。

ところで、保健所にFAX送付する発生届や「入院チェックシート」は、メールによる受け入れが始まりました。

いつも混雑しているFAXを、今後は使わなくても済みます。次のHER-SYSトラブルの際にも使えそう。

感染急拡大に伴うトラブルに対処しながら、いろんな仕組みが洗練されていきますね、後手後手だけど。

HER-SYSへ完全復帰したけれど

さまざまな理由で、HER-SYSから離脱(=入力を拒絶)していた私ですが、先週木曜日から復帰しています。

第一には、この感染拡大のなか、保健所の作業を少しでも減らそうという、ごく当たり前の理由からです。

念のためご説明しますと、HER-SYSとは、新型コロナ感染者の発生届をネットから提出するシステムです。

これまで、HER-SYSの入力項目が多すぎました。フォームのデキも劣悪で、入力1件当たり数分を要しました。

HER-SYS以外に、患者さんへの電話連絡や、保健所提出用のチェックシートの作成にも時間がかかります。

当院では、1日に数十件を超える発生届を提出することが多く、それらの作業の時短が課題でした。

そこで、電子カルテと連動して発生届のFAX様式が印刷できるようにして、HER-SYSを回避してきました。

そんな苦労に厚労省も気付いたのか、最近になって必須入力項目数が激減し、フォームも改善されました。

FAX提出用の様式もOCR対応になったので、これで保健所の仕事も減っただろうと喜んでしました。

がしかし、ここまで簡略化されたのなら、自分で最初から入力するのがスジだと、そう改心したわけです。

さて今日は、HER-SYS復帰後最初の日曜日、の翌日。52件のPCR検査の陽性は31件でした(陽性率60%)。

診療終了後、陰性者も含めて全員に電話連絡、陽性者からは病状等を詳しく聴取し、そして、作業開始です。

測ってみると、電話連絡に約3時間、HER-SYS入力に1時間半、チェックシート作成等に30分。

さて、チェックシートのFAX送信がうまくいくことを祈りつつ、気がつけば時刻は23時半になってる!!

なのでいま帰宅前に職場で、当ブログを書いて投稿したところです(23時59分締切なので)。あ〜、疲れた。

発熱外来は完全予約制です

過去最大級の感染拡大の中、当院の発熱外来も今日は、過去最多の予約が集中しました。

日曜日にはいつも、朝の9時台には夕方までの予約枠が埋まるのですが、今日はそれが8時台でした。

「新型コロナ相談センター」等からの紹介を止めてもらうために電話しても、その電話がつながりません。

先週までは、延々と保留音(パッヘルベル)を聞かされる状態でしたが、最近は電話が切られてしまいます。

しょうがないので、医療機関用の保健所の番号に電話するのですが、これもまたつながらない。

やっとこさつながって、相談センターからの紹介を止めてくれと頼んでも、部署が違うので折り返しますと。

このような電話のやりとりは最近何度も経験しましたが、折り返しの電話がかかってきたタメシがありません。

まして、市民の方が「相談センター」にかけた電話がつながることなど、ほぼほぼ奇跡に近い話なのでしょう。

それと同じぐらいに、当院の電話もつながらないのかもしれません。

電話がつながないので直接来ました、という方も多いですが、直接来られても診療順は早まりません。

高齢者は優先しますが、原則として発熱外来は完全予約順です。これは公平と動線分離のためです。

受診者の多くは熱でキツイので、その中で優先順位は付けられないのです。ご理解ください。

無料PCR検査陽性の方には、確定検査を行わない方針に変更

今日から当院は、無料PCR検査の判定が陽性であれば、その結果を採用して確定例とすることにしました。

抗原検査も同様に、簡易検査キットの陽性判定をそのまま信用して、COVID-19と診断する方針としました。

これまで、そのような方針ではなかったのは、簡易抗原検査キットの信頼性を疑っていたからです。

また、無料PCR検査所の間違い診断症例(陰性なのに手違いで陽性と報告)に遭遇することがあったからです。

医療機関が責任を持って検査・診断した結果以外は、原則として鵜呑みにしない方針だったのです。

なので無料PCRや簡易キットが陽性だった方にも、改めて「確定検査」としてのPCR検査を行なってきました。

しかし、これだけ感染者が増えてくると、確定検査のために再検査を行っている場合ではなくなりました。

特に今日は、無料PCRで陽性だった方や簡易抗原検査で陽性だった方の受診が、かなり目立ちました。

でも土曜日の午後というのは、検査センターの体制を考えると、PCR検査には一番不向きな時間帯なのです。

そこで今日から、少なくとも有症状の方は、無料PCRや簡易抗原検査の結果を採用することにしたわけです。

さっそく今日は、その方針によるCOVID-19確定診断が3例ありました。

当院での確定検査(PCR検査)を省いたことで、その3人の確定診断を2日早めることができました。

発症後は早めに処方すべき治療薬「ラゲブリオ」を、発症初日の高齢者に処方することもできました。

偽陽性のリスクはゼロではありませんが、早期治療と検査体制のひっ迫対策としては、確かに有効ですね。

実質的に発熱専門外来、しかもパンク

濃厚接触者の自宅待機期間が、これまでの7日間から5日間に短縮されます。社会経済活動維持のためです。

さらに岸田首相が医師会会長と面会して、

( 1 ) 休日診療の発熱外来を増やすことや、発熱外来で抗原検査キットを無料で配布することに協力を求め、

( 2 ) 医療機関への財政支援策のうち今月末が期限となっているものを、9月末まで延長する考えを伝えました。

数日前にも書いたように、休日の発熱外来体制が手薄です。やっている医療機関があまりにも少ないのです。

日頃から日祝診療を行っている当院は、行きがかり上、休日にも発熱外来を行っていますが、パンク寸前です。

電話での受診予約をお断りする方が毎日何十人もいるし、そもそも電話が繋がらない方が何人いることやら。

休日の当院はもはや発熱専門外来のようになってしまい、他の疾患の診療を受け入れる余裕がありません。

なので(1)のような要請に対して医師会側が実際にどのような対応をとるのか、とても気になります。

とりあえず(2)は歓迎します。感染爆発の中で発熱外来の診療報酬が減らされることは、避けられました。