「サル痘」のニュースを聞いててずっと気になるのは、その主な症状である「発疹」の読み方です。
NHKなど、メディアはみな「はっしん」と読んでいますが、医療従事者が言うときは普通「ほっしん」です。
このように、国語辞典に出ている読み方と、医学用語としての読み方が異なる言葉は、よくあります。
例えば「腹腔」を、メディアは「ふくこう」と言いますが、医療現場では「ふっくう」です。
歴史的な観点からどちらが「元祖」なのかはともかくとして、医学用語の読み方の方が私はしっくりきます。
なぜなら、「はっしん」には同音異義語が多い一方で、「ほっしん」にはそれが比較的少ないからです。
日国を引くと、前者は「八神・発信・発振・発疹・発軫・発進・発震」、後者は「法身・発信・発心・発疹」。
とくに前者の「発信・発振・発進」は日常的によく使う言葉ですが、後者でよく使うのは「発疹」だけです。
これは「腹腔」でも同じで、その意味では、医学用語は同音異義語を嫌う傾向があるとも言えます。
「発足」とか「発端」のように、「発」を「ほつ」と読む言葉には、何か「こなれた」印象がありますね。
でも手元の「新明解第3版」では、「ほっしん」は「『はっしん』の老人語」となっていてガッカリします。
第6版からは「『はっしん』の古風な表現」に改善していますが、古風だとしても、業界標準なんですけどね。