療養解除時の確認検査は不要です

新型コロナ感染から回復した方にとっては、「いつから出勤できるのか」ということが、最大の関心事です。

感染者の、いわゆる「退院・療養解除基準」は、

(1)有症状の場合:発症日から10日間経過し、かつ症状軽快後72時間経過していること

(2)無症状の場合:検査日から7日間経過した時点、ただし途中で症状が出たらその日から10日間

療養解除に際して、解除当日に保健所から電話かSMSが届き、後日「就業制限解除通知書」が郵送されます。

ただし、その「通知書」がなかなか届かない方も多いようで、保健所が言うには、

「非常に感染者が多く、(就業制限解除通知書の)郵送まで2週間~1か月お時間をいただいております」だと。

ここまで遅いのでは、職場復帰時には使えません。おかげで当院などに「診断書」を求める方が出てきます。

あるいは、「自宅療養が終わるんで、確認のためPCR検査をしてもらえますか」という方も目立ちます。

会社等が、PCR検査による「陰性証明」を求めるのでしょうけど、当院でそのような検査は行っていません。

規定通りの療養期間を経過すれば、療養解除時の検査は不要です。証明書等も不要ということになっています。

それに、もしも検査して「陽性」が出たら解釈がヤヤコシイですからね。

というわけで当院では、「自費でもいいから」と言われても、「陰性証明」としての検査は行っておりません。

それは、本当に検査が必要な方に発熱外来の時間を割くためであり、また検査資源の節約のためでもあります。

5〜11歳の新型コロナワクチン、具体化してきました

小児(5〜11歳)の新型コロナワクチンの接種について、熊本市でも具体的な計画が出てきました。

対象者は約4万8千人。その全員に対して、3月10日から接種券が一斉発送されます。接種は3週間間隔で2回。

ただし第1期(3/28〜5/8)に接種できるのは、わずか9千人。ワクチンの確保数がその程度なのでしょう。

各医療機関には、この第1期における接種希望量の調査が行われています。締切は来週月曜日。

もしも接種希望量の総数が9千人分よりも多ければ(間違いなく多いでしょう)、調整が行われます。

調整というのは今回も、単純な按分計算になると思われます。

たとえば希望総数が1万8千人分であれば、各医療機関には希望量の2分の1しか配給されないことになります。

そのような手法がすでにわかっているので、医療機関は「多め」の希望数を申請する可能性があります。

となると、接種希望数の総量はますます増えてしまい、手に入るワクチンの数が読みにくくなるのです。

そもそも、いったい当院で何人に接種することになるのか、準備する接種枠の設定にも悩んでいます。

かかりつけのお子さんだけでいいのか、土日の接種枠を拡充して近隣住民全体に間口を広げるべきなのか。

小児のワクチンの接種では、高齢者のときみたいな希望者の殺到はなさそうです。

ですが、いつから接種できるのかという問い合わせは、最近増えてきました。

喘息やその他の疾患をお持ちのお子さんとか、ご高齢の方と同居している方には、早めの接種をお勧めします。

新型コロナ抗原定性検査キットの安定供給を

子どもの新型コロナ感染が増えているので、小さな子でも油断せず診療に臨まなければなりません。

オミクロン株になってからは、院内に入れて診察する前に、念のため駐車場で抗原検査を行うのが原則です。

突発性発疹でしょうか、と今日来院した38度台で元気な乳児も、原則通り検査をしたら抗原陽性でした。

先月までだと、0歳や1歳のお子さんはたいてい、そのまま院内の隔離室等に入れていました。

しかし今は、隔離室に入れる前の抗原検査がほぼ必須です。まことに面倒なことになったものです。

本来、抗原検査で「陰性証明」を行うことはできないはずですが、状況によっては利用するしかありません。

しかし、乳幼児等の診察前にいちいち抗原検査をすれば、検査キットはすぐになくなります。

今日もまた50人分のキットを発注しましたが、いまの状況が続けば今後の検査キットの品薄が心配です。

当院の発熱外来では、唾液が採れる方は原則としてPCR検査を行います。抗原検査よりも感度が良いからです。

しかし高齢者や重症化因子をお持ちの方など、PCR検査の結果を待ちきれず、抗原検査を行うことがあります。

小さなお子さんだけでなく、唾液がなかなか採れない高齢者等でも、抗原検査に切り替える場合があります。

このように発熱外来では、抗原検査キットは意外と重要なアイテムです。

医療現場で品薄になるようなことがないような、製造・供給体制を維持していただきたいものです。

PCR陽性率の高さが異常

驚いたこと、2つ。

(1)PCR検査の陽性率の高さ

おととい日曜日のPCR44件のうち陽性は32人。陽性率73%。月曜日の8例では陽性4人。陽性率50%でした。

この陽性率の高さは、検査が追いついていないことを意味するのかもしれません。

新規感染者数自体は横ばいか減少気味ですが、実際の感染者はもっとずっと多い可能性があります。

PCR検査の陽性率が高いのは、家庭内感染が多いこともその理由のひとつでしょう。

家族全員陽性とか、それに近いご家庭が増えています。こうなるともう「みなし陽性」の発動が必要です。

保健所に尋ねたら、必ずしも検査事情がひっ迫していなくても、有症状濃厚接触者はみなし陽性OKとのこと。

それなら最初から、そう言ってくれればいいのに。

(2)ワクチン配給数の少なさ

4月1日〜5月8日の接種可能人数調査に対して、当院はファイザー126人、モデルナ60人と回答していました。

ところが今日届いた熊本市からのワクチン配給上限数は、ファイザー24人分、モデルナ30人分でした。

ワクチンの希望数がこれほど削られたのでは、まともな接種計画が立てられません。

追加接種(3回目接種)はほどほどにして、4月からは5〜11歳の接種に集中しろということなのでしょうか。

にしても、熊本での小児の接種計画がハッキリしないので、こちらも計画の立てようがないのです。

政府の後手後手政策に翻弄されている自治体の苦労もわかりますけどね。

新型コロナワクチンの追加接種、予約の電話が続々と

新型コロナワクチンの追加接種(3回目接種)の問い合わせの電話が、今日はひっきりなしでした。

熊本市の接種券の発送が2月9日に行われ、それがちょうど届いたようです。その対象は、

(1)65歳以上:昨年7/28〜8/31に2回目の接種を受けた方

(2)64歳以下:昨年7/7〜7/31に、2回目の接種を受けた方

接種券が届いたらすぐ接種できるのではなく、いずれの年齢層でも2回目から6カ月の間隔が必要です。

つまり、今回接種券を受け取ってもすぐには接種できない方が、高齢者には大勢います。

ところが、今回接種券を受け取った64歳以下の方は、すぐに全員接種できます。なんか変な具合ですよね。

そもそも、3連休の2日前に接種券を発送するというタイミングは、何か効果を狙ったのか、うっかりなのか。

さらに次の接種券発送は、誰が決めたのか、これまた祝日の前日の2月22日ですか。その対象は、

(1)65歳以上:昨年9/1〜9/30に2回目の接種を受けた方

(2)64歳以下:昨年8/1〜9/10に2回目の接種を受けた方

接種券が届いてすぐ接種できる高齢者はいませんが、64歳以下であれば一定数の方が接種可能です。

早く接種したいと、首を長くして待っている高齢者はとても多いです。

それなのに今のやり方では、高齢者ほど、接種券が届いてから長く待たされるということになります。

接種券を送付する順番は、年代別に妙な区別を付けず、単純に2回目接種の順番にすればいいのに。

マッターホルン型よりも富士山型

発熱外来の受診希望者が、いっこうに減りません。とくに日曜日はひどく混み合います。

今日は新型コロナワクチンの3回目や子どもの予防接種の予約も一切入れず、発熱外来に時間を割きました。

しかし、結局いつもの日曜日と同様に、朝9時半までには夕方までの受診予約が埋まってしまいました。

なので「熊本県新型コロナウイルス感染症専用相談窓口」には、早々と紹介ストップの電話を入れました。

当院が受入を止めたら、相談窓口はどの医療機関を紹介するのかわかりませんが、やむを得ません。

第6波は、第5波に比べて急峻に立ち上がったので、逆にむしろ早期の収束を私も期待していました。

ところが、仮にピークアウトしても、その後の急激な「立ち下がり」が期待できない雰囲気になっていますね。

このピークを山にたとえた質問に対して、「マッターホルンよりも富士山型、あるいはもう少し」と尾身会長。

富士山だと、立ち上がりもなだらかなはずですが、そこには言及しないようです。

ともかく、ピークが思いのほか長くなるという意味なのでしょうけど、ほんとに富士山で済むのでしょうか。

延々とピークが続いたら、次は何と表現するんでしょう。デカン高原ですか、なんならギアナ高地ですか。

ピークが小刻みに増減を繰り返す場合には、根子岳型と呼ぶのが分かり易いですね、熊本県人には。

ていうか、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1355.html" target="_blank" title="たとえ話">たとえ話</a>って、つい話の「上手さ」とか「辻褄」に気を取られて、本筋を忘れてしまいます。

北京五輪には、感動をもらっています

当ブログも、毎日毎日コロナ関連のネタばかりで、いいかげん辟易している方も多いことでしょう。

ホントにまったく別の話題で書きたいのですが、コロナ禍を差し置いて書くほどのネタがみつかりません。

毎晩遅くまで頭を抱えている私に、いつも同情してくれる家人に言いたい。「同情するならネタをくれ」。

北京五輪は、コロナ禍第6波の真っ最中にどうなの、と思っていましたが結局、私もそれなりに楽しんでます。

東京五輪の時と同じで、いざ始まれば盛り上がってしまうのです。皆さんも、そうでしょう?

不可解な判定で納得できない事態も続出していますが、中国が有利な判定はもう仕方ない。諦めましょう。

そんな厳しいアウェーの中にありながらメダルを獲得した選手たちは、ホントにすばらしい。感動します。

国内に目を向けると、将棋の王将戦では藤井聡太竜王が4連勝し、10代での「五冠」を成し遂げました。

この人は、これまで思って来た以上に、化け物クラスなのかもしれませんね、ああ見えて。

考えてみると、この2年間で進歩したことが私には何もありません。コロナ禍で右往左往してきただけです。

どのような状況でも、つねに中長期的な目標を持ち、日々の雑事とは切り離して努力しなければなりませんね。

「みなし陽性」の判断ができるほどの検査態勢のひっ迫状況か

「みなし陽性」が今日から熊本県でも導入されることは、昨日も書きました。

家族内の感染者の濃厚接触者が有症状となった場合、医師の判断で、未検査で新型コロナと診断できます。

みなし陽性と診断した感染者は、発生届には「疑似症患者」として届け出ることになります。

新型コロナの「新規陽性者数」には疑似症患者も含まれていて、それが内数として示されます。

たとえば今日の東京都では、新規感染確認1万8,660人のうち、みなし陽性は814人。およそ5%でした。

導入初日の熊本では、みなし陽性(疑似症患者)は1人だけでしたが、明日以降は増えていくのでしょうか。

みなし陽性は、検査試薬やキットの不足によって 検査の実施に支障が生じていることが、その運用条件です。

なので、検査センターに委託すればいつでもPCR検査が可能な状況では、実際の運用は難しいかもしれません。

当院の場合だと、検査センターがストップし、しかも抗原検査キットの院内在庫がゼロのときしか使えません。

いや、そこまで厳格に考えず、検査態勢のひっ迫状況によっては運用を考慮してもよいのかもしれません。

PCR検査の結果判明までの時間がかかっている現状を「ひっ迫」と解釈してよいのであれば、助かります。

そこらへんの「機微」を保健所等に尋ねたら、きっとヤブ蛇になるので、黙ったままの自己判断が吉でしょう。

「みなし陽性」の運用が始まります

熊本県でも、いわゆる「みなし陽性」の運用が、明日から可能になります。

医師の判断により、検査を行わず、臨床症状で「新型コロナ感染者」とみなすことができます。

その取扱には、次の2つの条件を満たす必要があります。

(1)陽性者の濃厚接触者で、同居家族または同居している方が有症状となった場合

(2)PCR検査の試薬や抗原定性検査キットが不足していることにより、 検査の実施に支障が生じている

みなし陽性の運用によって、検査に伴う医療資源が節約でき、陽性診断とその後の対処も格段に早まります。

当院で今月PCR検査または抗原定性検査を行ったのは186人。このうち同居家族内濃厚接触者は53人でした。

そのうち来院時に何らかの症状のあった方は36人で、これらは(1)の条件でみなし陽性と判断できる方です。

ところが実際に検査で陽性だったのは36人中19人でした。残る17人は「みなし偽陽性」かもしれない人です。

もちろん、PCR検査等の「偽陰性」も否定できないので、有症状濃厚接触者はつねに要注意対象です。

とは言え、みなし陽性の「過剰診断」には留意すべきだと、自験例を集計してみて改めて気付いた次第です。

感染してもすぐに職場復帰

新型コロナの感染が確定すると、病状や重症化リスク等に応じた療養場所が、保健所から指示されます。

(1)入院

(2)宿泊療養

(3)自宅療養

感染者に電話して様子を聞くと、たいていの方は(3)ですが、たまに(2)の方がいます。(1)は少数です。

ところが最近は、第4のパターンの方も出始めていて、驚きます。

(4)職場復帰

「感染者なのに職場復帰?」と驚くのですが、話を聞けばその事情は切実です。

老健施設等の感染者エリアでの勤務に、軽症感染者の職員が駆り出されている、というわけです。

なるほど、よく考えたものです。感染者には当面、新たな感染のリスクはありませんからね。

感染者の病棟を、感染した医療スタッフが担当することが、大都市圏の病院等では、すでに行われています。

医療者はつねに感染のリスクに晒されており、しかも感染したらしたで、都合良く働かされるわけです。

でも考えてみると、無症状・軽症感染者はある意味「無敵状態」です。この好機を生かさない手はありません。

万一私が感染して、しかも元気なら、どこかの病院のコロナ病棟に手伝いに行きたくなるかもしれませんね。