「診断医」としての、自宅療養者の積極的フォローを考える

東京都では、50歳未満で無症状か軽症の自宅療養者は、今後は自分で健康観察を行うことになります。

配布されるパルスオキシメーターで酸素飽和度をチェックしながら、自分の体調は自分でみていく仕組みです。

熊本ではまだ、そこまでのシステムにはなっていませんが、実質的にはそれに近い状況かもしれません。

いま新型コロナは、発症から検査まで1〜3日、検査から結果判明までに1〜2日かかっているのが現状です。

さらに、結果判明後に発生届を提出し、それを受理した保健所が患者に連絡をとるまでにも時間がかかります。

以前は、発生届の当日中には保健所から連絡が入っていましたが、今は2,3日以上かかることもあるようです。

つまり、発症から保健所によるフォロー開始まで、5,6日かかるのが通常なのです。

新型コロナと診断された方からの、「保健所からはまだ何も言ってきませんが」という話もよく聞きます。

幸か不幸か、家族の誰かがすでにコロナに感染していて、自宅にパルスオキシメーターがあったりします。

たいていの方の酸素飽和度に問題は無く、しかし熱と強い咽頭痛の訴えがあります。オミクロンの特徴です。

保健所からの対応が間に合わないなら、それまでは「診断医」としてフォローを行う責任があるでしょう。

体調悪化時の連絡相手としてではなく、定時連絡による経過観察にまで踏み込んでも良いのかもしれません。

さっそく明日から、PCR陽性患者を積極的かつ定期的にフォローしていく仕組みを考えてみましょう。

「PCR陽性」判定を再検査する必要ある?

この時期の日曜日ですから、予想以上に激しい発熱外来でした。

午前中のうちに夕方の予約枠まで埋まってしまい、午後の予約は早々と中止する羽目になりました。

県の新型コロナ感染症相談窓口には、今日はもう紹介をしないでくれと、かなり早い時間帯に連絡しました。

どうしても検査して欲しいと電話してきた方を何人もお断りしなければならず、申し訳ありませんでした。

今日はPCR検査だけでも63人でした。予約電話を全部受け入れていたら100人を超えていたかもしれません。

今日PCR検査をしてくれるのはそちらだけだと聞いた、という方もいて、断るのが辛い一日でした。

相談センターからの紹介なのだからなんとか検査してくれ、という方も、何人もいらっしゃいました。

どうして検査できないのか(こちらは困っているのに)、とお怒りの方も、実は少なくありませんでした。

前にも書いたように、無料PCR検査で陽性だったので検査してくれ、という方の受診が今日も目立ちました。

すでにPCR陽性と判定されたのに、また検査を受けるなど二度手間の極みです。

ところが聞いてみると、無料検査所からの指示で、当院で確定検査を受けるように名指しされたとのこと。

その「確定検査」のために、医療資源(検査試薬と医療費)を費やし、時間を2,3日ムダにするんですよ。

再検査の必要な「PCR陽性判定」など無意味です。陽性判定を出した人が、責任をもって確定してください。

「Excel文書」にはもう、目くじらは立てません

昨日書いた「濃厚接触者」の待機解除基準の緩和については、熊本県からも正式に連絡が入っています。

その「熊本県健康危機管理課」から届くコロナ関連メールの差出人はいつも、「コロナ報告」となっています。

差出人名としてどうなの?と最初は思いましたが、意外とパソコン等で見つけやすくていいですね。

昼夜かまわず届く「コロナ報告」ですが、昨日は夕方と夜の2回、さらに午前1時過ぎにも発信されていました。

お疲れ様です。

メールを一読したら、添付ファイルをダウンロードして専用フォルダに格納するのが私のルーティンです。

ひところまでは、これをEvernoteにも入れ、さらにプリントアウトして日付順にファイリングしていました。

しかし書類の数があまりにも多くなったので、少なくともコロナ報告は、デジタルデータでの保存のみです。

「熊本市感染症対策課ワクチン対策PT」からもよくメールが来ます。

「PT」とは「プロジェクトチーム」のことですが、最近は「TF(タスクフォース)」もよく聞きます。

お役人とか学者って横文字が好きですね。でもPTもTFも全部「班」で済むんじゃないの、と思ったりします。

そのワクチンPTからのメールには、回答が必要な連絡が多く、しかも締切が近いので、最も注意を要します。

うっかりしてたら、配給されるはずのワクチンを失うようなことにもなりかねません。

たいていの添付ファイルが「Excel文書」で、その中に記入をして、それを返信するのが基本です。

しかし私の場合、Mac版のExcelで作業を行うので、あちこち文字がズレたりマクロが狂ったりします。

以前はそれがイヤで、あえてプリントアウトしてからFAXしていましたが、最近はもうメール返信のままです。

内容さえ伝わればそれでいいわけで、多少の文字化けやズレはもう気にしません。なんとかなるでしょう。

手袋も足りません

新型コロナの濃厚接触者の待機期間が、これまでの10日間から7日間に短縮されることになりました。

さらに「エッセンシャルワーカー」は、最後の接触から5日目に、待機を解除できるようになります。

感染拡大のリスクはわずかに高まるとしても、待機を最小限にして社会をを回す方に舵を切ったわけです。

エッセンシャルワーカーの待機解除は、4日目と5日目に抗原検査で陰性であれば、という条件付きです。

さて検査キットが入手できるかどうか、そもそもこの場合の抗原検査が妥当なのかどうか、疑問はあります。

万一当院でスタッフ10人が濃厚接触者となった場合、全員が職場復帰するためにはキットが20回分必要です。

そうでなくても不足気味の、お宝のキットですから、そのような無駄遣いはできるだけ避けたいところ。

最初から職員同士が互いに濃厚接触者とならないよう、常日頃の行動に留意しておかなければなりません。

私の発熱外来の防護具は、マスク2枚+フェイスシールド+ガウン+手袋に、最近はキャップも加わりました。

国や市からの物品配給によって、たいていの物品は足りていますが、手袋だけがどうしても不足気味です。

この機会に言わせてもらいますけど、国から定期的に配給される物品ってバランスが悪いですね。

先週届いたのは、マスク200枚、ガウン200枚、手袋1200枚でした。

患者ごとに必ず取り替える手袋は、他の物品と比べても桁違いの消費量。手袋が真っ先に足りなくなります。

国のやることって、全体の規模が大きいためか小回りが利かず、ムダとムラが大きいのです。

なので手袋だけは、厚労省のサイト「G-MIS」から「緊急配布」を要請して調達することになります。

こういう「緊急ルート」があるのは助かります。だって、通販サイトから買うと、いまだにバカ高いし。

検査キットが足りません

新型コロナのPCR検査や抗原検査を行うための「検査キット」の不足が問題となっています。

医療機関以外の、家庭や事業者等での検査数が増えたことも、その原因のひとつでしょう。

しかしこれは医療機関の負担を減らすための「予備検査」的な位置づけとして、推奨されている面もあります。

「市販の抗原検査で陽性だった」とか「無料PCR検査で陽性だった」と来院する方は、たしかに増えています。

「市販の抗原検査では陰性だったけど」とか「無料PCR検査では陰性だったけど」と言って来る方さえいます。

家庭や事業所レベルで一種の「トリアージ」が行われているわけで、使い方によってはとても有益です。

しかしここまで感染が拡大することを業界も想定していなかったのか、検査キットが足りなくなりました。

地域によっては、発熱外来での検査を抑制、あるいは休止せざるを得ない一大事になっているようです。

当院では、抗原検査キットの在庫にはまだ余裕がありますが、来週以降どうなるかはわかりません。心配です。

さらに今日、検査センターから、PCR検査用の唾液検体採取容器が足りないという連絡を受けました。

医療用の特殊な試薬やキットではなく、単なる容器の不足なのに、PCR検査ができなくなりかねない事態です。

交渉の末、来週までの想定検査数をカバーできる程度の容器は入手できましたが、先行きはまったく不透明。

検査関連消耗品を増産するだけでよいのか、あるいは検査の流れを変えるべきなのか、抜本的対策が急務です。

濃厚接触者の未検査での臨床診断は妥当

平日だというのに、今日も発熱外来受診者が多数いました。

その多くが、同居家族に感染者が出た人たち、すなわち「濃厚接触者」でした。

今週日曜と月曜に当院でPCR検査または抗原検査をした90人のうち28人、約3割が濃厚接触者でした。

その28人のうち検査結果が陽性だったのは11人で、そのほとんど(10人)は発熱等の症状がありました。

一方、検査で陰性だった濃厚接触者17人のうち6人にも、微熱や咽頭痛や咳などの症状を認めました。

有症状の濃厚接触者は16人。新しく示された基準では、その全員を検査なしで感染者と診断できます。

しかし実際には、そのうち6人は、臨床診断によって誤って感染者とみなされてしまうことになります。

さて今日は、30人の方が当院でPCRまたは抗原検査を受けました。家族内の濃厚接触者は11人(36.6%)。

濃厚接触者の割合は、どんどん増えてきている印象です。このうち有症状者は8人。うち1人は抗原陽性でした。

オミクロン株だから濃厚接触者が増えているのではなく、検査を希望する濃厚接触者が増えている印象です。

そして無症状の方よりは、たしかに有症状の方の方が明らかに、陽性率は高いようです。

医療ひっ迫対策としては、有症状濃厚接触者を未検査で感染者とみなすのは、いまは妥当と言えそうです。

たしかに濃厚接触者の検査が多すぎます

新型コロナの感染者数が増える中で、病床だけでなく、検査態勢が熊本でも急激にひっ迫しています。

当院のPCR検査を委託している検査センターも最近はパンク気味で、ついに今夜はトラブって大変な事態です。

当初は、朝11時までの検体提出なら当日夕方に、夕方までの提出なら翌日昼には検査結果が出ていました。

ところが最近は、朝出した検体の結果判明が夜遅くなり、ついに夜中を回るようになりました。

また、夕方提出した検体の検査結果も、翌日夜にやっと判明するようになりましたが、今夜はそれも厳しい。

あまりにも検査数が多くなりすぎたのは、単純に感染者数が増えただけではありません。

感染力が強くてあちこちでクラスターが発生し、家庭内感染も多く、濃厚接触者が増えすぎているのです。

当院でも、陽性診断をした翌日に、その家族が数名まとまって発熱外来を受診するようなケースが増えました。

後藤厚労相は今日、「有症状の濃厚接触者では医師の判断で未検査でも感染が診断できる」方針を示しました。

先日の「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3762.html" target="_blank" title="若年層は検査をせず症状だけで診断可">若年層は検査をせず症状だけで診断可</a>」には反対ですが、濃厚接触者なら話は別。賛同できます。

「過剰診断」のリスクよりも、検査や診療の資源を減らす効果の方が、いまは確実に有意義でしょう。

ただ、濃厚接触者本人が、そのような「状況証拠」に基づく確定診断に納得してくれるかどうか。

納得が不十分だと「感染者意識」が希薄で、その後の自粛や隔離が不十分になりはしないかと、心配です。

日常化してきた発熱外来

今日は新たに18道府県が「まん延防止等重点措置」の適用を政府に要請しました。

これで適用地域は34の都道府県に拡大されることになり、人口的には日本の大半を占めます。

平日の今日も、当院の発熱外来受診者は多く、まだまだピークアウトを語るには早いかもしれません。

近隣の小中学校や病院でもクラスターが発生しており、むしろ今後さらに感染が拡大しそうな勢いを感じます。

「じつは抗原検査で陽性でした」と、診療の終わり頃になって教えてくれる方がいて、少々困惑します。

もちろんそのぐらいのことで、ひるんだりはしません。常に受診者全員が感染者と想定して接していますから。

「無料PCR検査で陽性だったので来ました」という方は、相変わらず多いですね。

最初の検査所で発生届を出してくれたらいいのに、ムダな検査と待ち時間(=感染拡大時間)を生むだけです。

診察中にクシャミを浴びそうになることがありますが、瞬時に横っ飛びに逃げるのも上手くなりました。

マスクや手袋等の防護具や消毒液の消費は著しいですが、物品が不足することはなくなりました。

スタッフが保険証や領収証・処方箋や現金を受け渡す流れも、安全な方法が完全に確立しています。

かように発熱外来はもう日常診療となりましたが、いかんせん、いまは受診者や感染者数が多すぎます。

明らかに、非発熱者の診療を圧迫しています。待ち時間が長くなったり、予定検査の取りやめもしばしば。

保健所へのFAXは届かないし、ネットで出した発生届もなかなか読んでもらえず、妙な行き違いも出てきます。

もうそろそろ、「全例検査」は見直す時期なのかもしれませんね。

発熱外来受診者がようやく横ばいになったということは・・・

日曜日にはいつも、発熱外来の予約電話が、朝から多数入ります。当院の2回線がずっと塞がりっぱなしです。

その多くは、「発熱患者専用ダイヤル」や「新型コロナ相談センター」から当院を紹介された方です。

午前中のうちに夕方までの予約枠が埋まってしまい、昼からはずっと、予約のお断りをする対応に追われます。

今日の検査数は、PCR検査49人、抗原定性検査8人の、合計57人でした。

先週の日曜日は、PCR検査55人、抗原定性検査2人と、やはり合計57人でした。

毎週のように検査数が増えて来たのにこの2週間は横ばいなので、ちょうどいまがピークなのかもしれません。

当院では日曜日には基本的にPCR検査をしていますが、何が理由がある場合には抗原検査を行います。

たとえば、唾液がうまく採取できない3歳以下のお子さんとか、ご高齢の方などです。

今日も抗原検査をした8人のうち4人が陽性でしたが、そのうち2人は1歳児と90代の方でした。

0歳や1歳のお子さんの発熱など珍しくはないのですが、たまたま怪しんで検査すると陽性が出たりします。

家族に感染者がいて濃厚接触者の場合には、最初から用心しますが、まさかと思うような陽性者も時々います。

すべてがオミクロン株かどうかは分かりませんが、最近のコロナの特徴は、咽頭痛を訴える方が多いことです。

とくに、溶連菌感染のような真っ赤な咽頭炎所見が無いわりに「ものすごく痛い」という方は、怪しいですね。

その咽頭をじっくり観察するのはリスキーなので、半身になりながら短時間で診察しなければなりません。

私自身はコロナワクチンを3回接種しており、多少の安心感をもって診療していますが、油断はできません。

第6波もそろそろピークアウトしてもらわないと、来月からはワクチン接種で忙しくなるんですけどね。

コロナ禍の地震の緊張感

久々に大きく揺れましたね。夜中1時過ぎの地震は、私の住んでいる場所では震度4程度だったでしょうか。

枕元のiPhoneから、けたたましい警告音が3回鳴り、次いで大声で「地震です」というアナウンスが1回。

「んっ?」と身構えた次の瞬間、たぶん1,2秒後から揺れ始めました。そこそこ強く、長く感じる地震でした。

「だいぶ違う」と思いました。5年近く前に起きた熊本地震の記憶と比べた印象です。

まず、地震よりも前に「緊急地震速報」が鳴ったという当たり前のようなことに、意外な感動がありました。

直下型の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1657.html" target="_blank" title="熊本地震の時">熊本地震の時</a>は、激しい揺れに翻弄されている途中でやっと速報が鳴り始め、うるさいばかりでした。

速報なんて全然ダメじゃん、と当時は思いましたが、海溝型(プレート型)地震では速報が間に合うんですね。

揺れを長く感じたのも、遠隔地で起きた海溝型地震ゆえでしょうか。なかなか終わらんなぁ、というのが印象。

まあその程度なら良いのですが、大分・宮崎では被害も出ているようです。

コロナ禍のいま、地震に限らず豪雨災害でもそうですが、3密を余儀なくされる避難所生活が心配です。

避難所の入口で抗原検査等を行う余裕もないでしょうし、ワクチン接種歴で区別するわけにもいきません。

いま首都直下地震が起きたらどうすんの、って私はいつも最悪の事態を妄想してしまいます。