医薬品の欠品は責任重大です

ジェネリック医薬品の供給不足が報じられています。

「小林化工」や「日医工」などの大手が不祥事で供給を停止し、代替薬の増産も追いつかないようです。

メーカーとしては絶対に避けたい「安かろう悪かろう」の評価を、もはや払拭することができません。

しかし問題はジェネリックに限りません。むしろ、先発品の方が影響は甚大です。

いま私がいちばん困っているのは、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3551.html" target="_blank" title="禁煙補助薬「チャンピックス」の出荷停止">禁煙補助薬「チャンピックス」の出荷停止</a>です。

新型コロナワクチンで有名な「ファイザー」の製品ですが、今年6月から世界中で出荷が止まったままです。

そのため、当院の生活習慣病診療における大きな柱の一つである「禁煙外来」が、完全に頓挫しています。

あれから半年経った今も、出荷再開のメドはまったく立っていません。

最近のプレスリリースによれば、早くとも来年後半以降の出荷再開に向けて尽力している、とのこと。

じつはこのチャンピックスは、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-50.html" target="_blank" title="11年前にも欠品騒ぎ">11年前にも欠品騒ぎ</a>を起こしたことがあります。

あの時は、タバコの値上げによる禁煙外来需要の拡大を、メーカーが見誤ったのが原因でした。

そのような需要急増が理由の欠品なら、別の医薬品でもときどき起きます。

これも11年近く前、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-80.html" target="_blank" title="無料接種が始まったばかりの「HPVワクチン (子宮頸がん予防ワクチン) 」">無料接種が始まったばかりの「HPVワクチン (子宮頸がん予防ワクチン) 」</a>がそうでした。

無料ならぜひこのワクチンを接種したいと考える人が、当時は日本中で殺到したのです。

やっと供給も改善し、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-542.html" target="_blank" title="2年後には定期接種化">2年後には定期接種化</a>にこぎ着けましたが、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-620.html" target="_blank" title="その3カ月後から積極勧奨接種が停止中">その3カ月後から積極勧奨接種が停止中</a>です。

こんどは、ワクチンは足りているのに打ちたい人がいなくなるという、真逆の状況。日本だけの珍現象です。

最近ようやく接種希望者が増え始めています。こんどはもう欠品だけは起こさないよう、お願いしますよ。

外来で使う外来語

世間を騒がせている「オミクロン株」ですが、すごく怖いのか、ぜんぜん怖くない(かもしれない)のか。

感染がまた世界中に広がって、しかしいつしか普通の風邪になっていく、今はその過渡期なのでしょうか。

よくわからないので横道にそれて、「omicron」の英語の発音で気になったことなど。

私はてっきり「オウマイクロン」(「マイ」にアクセント)と言うんだろうと思ってました。

しかし実際に外人が言ってるのをTVで見てたら、ほとんどが語頭にアクセントの「オミクラン」ですね。

コロナ禍でよく耳にする外来語としては、前に<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3495.html" target="_blank" title="「ウイルス(virus)」の発音">「ウイルス(virus)」の発音</a>について書きました。

「ワクチン(vaccine)」もよく聞きますが、発音は後半にアクセントのある「ヴァクスィーン」ですね。

たまに外人が来院して、「ヴァッスィネーションやってるか?」みたいに尋ねてくることがあります。

なんて?(pardon?)と聞き返して、やっと予防接種(vaccination)のことだとわかります。

日本語では「ワクチン」の「ワ」を強く言うものだから、英語の発音とのギャップが大きいのです。

こういうのを、ワクチンギャップと言うのかもしれませんウソ。

医学知識や用語の多くはドイツから入って来たため、ドイツ語読みが定着している、という説があります。

私もそう思ってきましたが、確認したら「Vakzine」の読みは「ワクツィーン」で、アクセントは後半です。

日本語とのアクセントが一致しないのが気に入らない。

そういえば、ワクチンを考案したのはパスツール。ドイツ人じゃなくてフランス人じゃないですか。

で、フランス語「vaccin」の発音を聞いてみると、「ヴァクスァン」でアクセントは語頭にある。

つまり、日本語の発音は、ドイツ語の発音にフランス語のアクセントが加味されたと、そんな感じですかね。

近代のワクチン・感染症学は、独仏の両国が牽引したゆえでしょうか。

ちなみにイタリア語の「vaccino」は、「ばっちいの」と聞こえます。

スマートリモコンを買いました

遅ればせながら、「スマートリモコン」を買いました。略して「スマリ」(って言うのか知らんけど)。

2階の寝室のエアコンを、1階のリビングに居ながらスイッチONするという、今回はそのために買いました。

だって、寝る少し前にあらかじめエアコンをつけておくために2階まで上がるのって、面倒じゃないですか。

いわゆる「スマート家電」じゃない従来型のエアコンなので、赤外線リモコンでON/OFFするしかないのです。

スマリは、スマホからWi-Fiを介して指示(電波信号)を受けると、家電等に対して赤外線信号を出します。

設定は簡単。エアコンのリモコンの赤外線をスマリに照射して信号を覚え込ませ、スマホに登録するだけです。

さっそく今夜、スマリの設定を行った後、1階のリビングで2階のエアコンをONしてみました。

ホントにONになったかどうか、念のため2階に上がって確認。OK。うまくいってます。

温度設定も可能なので、今度はリビングで設定温度を変更してみました。で、また2階に上がって確認。OK。

そんなに何度も昇り降りするぐらいなら、2階で普通にエアコンONすればいいじゃん、と思ってはいけません。

こういう確認作業は別物です。「生活」を省力化するためなら、「研究」には労を厭わないのです。

本来であれば、「スマートスピーカー」を使えばさらに快適なんでしょうけど、まだ持っていません。

サンタさんに頼んでみます。

新型コロナ検査価格の大幅改定が唐突すぎます

新型コロナウイルス感染のPCR検査や抗原検査の診療報酬が、大幅に減額されることになりそうです。

今日行われた「中央社会保険医療協議会(中医協)総会」の提案は、まさに青天の霹靂、寝耳に水の大激震。

現在の診療報酬は、PCR委託検査が1,800点(18,000円)、抗原定性検査は600点(6,000円)です。

これを今年12月31日から、それぞれ1,350点と300点に、来年4月からは700点と300点にせよ、との提案。

検査センターに支払っている委託料や、抗原検査キットの原価をも大きく下回ってしまう、異常な改定です。

この改定は、「誰もが簡易かつ迅速に利用できる検査の環境整備」のためだそうです。

つまり、診療報酬の設定が高すぎるから自費検査価格も高いのだと、そういう理屈です。

たしかに、PCR検査は本来はもっと安価な検査法なのだという意見には、一理あります。

しかしそれにしても、この大幅な改定を大晦日から施行するなんて、性急すぎませんか。

当院でも、定価6,000円の抗原検査キットを値切って購入して大量に在庫してますが、300点では大損害です。

検査すればするほど赤字になるなんて、まるで「なるべく検査するな」と言ってるようなものでしょう。

無症状や軽症の感染者が多い「オミクロン株」は、念のための検査こそが早期発見のカギじゃないですか。

いやそれとも来年からはもう、コロナはいちいち見つけなくてもいいよ、ていう世界になるんですかね。

将来はともかく、いまはまだ違うんじゃないの?

一定の条件下で、現場裁量での前倒し接種を認めてほしい

県内のある医療従事者が、新型コロナワクチンを故意に4回接種した件が問題になっています。

医療従事者として優先接種をしたのに、その後届いた「一般用」の接種券を使ってまた接種を受けたようです。

そういえば私も、優先接種を受けてしばらく経った頃に、自治体からの接種券を受け取りました。

優先接種は県が管理し、一般向けは市町村が管理したことから、情報の連携にタイムラグがあったわけです。

見かけ上は「正式な」接種券が届くので、容易に不正な接種できてしまうのは、制度設計上の問題です。

それにしても、インチキなことをしても、あとで必ずバレるってことを考えてなかったんですかね。

バレたら全国ニュースになって職場にも居づらくなる可能性にまでは、考えが及んでなかったんでしょうね。

ところで、新型コロナワクチンは、その日の接種人数が6の倍数にならなければ、余ってしまいます。

その余剰ワクチンを、もしも「こっそりと」自分や誰かに接種しても、なんの証拠も痕跡も残りません。

このような、表に出ていないインチキ接種が、いったいどのぐらいあるのか私には想像もできません。

いっそのこと、どうしても廃棄するしかないワクチンをどのように利用するかは、現場の裁量としてほしい。

それとも、余ったワクチンは規定外接種に使うわず廃棄せよという<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-19.html" target="_blank" title="お役所の石頭">お役所の石頭</a>は、変わりませんかね。

いま追加接種の前倒しが議論されています。ワクチンさえ十分あれば、6カ月間隔での接種を始めるはずです。

ならば余剰ワクチンを、2回目の接種から6カ月を経過した者に接種することに、何か問題がありますか?

5〜11歳のお子さんへの新型コロナワクチン接種へ向けて、準備開始

小児(5〜11歳)への新型コロナワクチンの、接種可能回数の調査が、保健所から来ました。回答締切は来週。

2月1日から4月3日まで、どの日に何人接種できるか全て書け。ただし、1日あたり10の倍数にしろ、と。

つい先日は、12歳以上の方への<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3711.html" target="_blank" title="追加接種(3回目の接種)についての調査">追加接種(3回目の接種)についての調査</a>に回答したばかり。

これはおもに当院かかりつけの方への接種を念頭において、平日も土日も毎日接種をすることにしました。

追加接種とは別に、しかしまったく同じ時期に小児用の接種もすることなど、もちろん想定内のことです。

「追加接種の接種日と小児向けの接種日を分けていただく等、間違い接種の防止を考慮」するようにとのこと。

ですよね。となると、毎日追加接種をしてたんじゃあ、小児向けに接種できる日が無くなっちゃいます。

なので戦略を練り直して、追加接種用の接種日を減らし、その日を小児専用日とすることにしました。

問題は、何人ぐらいの接種枠を確保すべきか、ということ。

当院で1,2回目の接種をした12歳以上の方は約600人。そのうち500人ぐらいが追加接種を希望すると推測。

それから5〜11歳の小児では、当院での定期接種やインフルワクチンの接種歴のあるお子さんは1,775人。

そのうち、過去1年以内に当院受診歴があるのは414人。そのうち半数が接種を希望するとして約200人。

そのような机上計算はしてみたものの、実際にどうなるかは皆目見当もつきません。

何よりも、12歳未満のお子さんのワクチン接種を希望する親御さんがどれぐらいいるのか、いないのか。

とりあえず、なるべく多くの接種枠を確保して、ワクチンも確保して、何人来ても良いようにすることですか。

いつも言ってますが、来年2月に、新型コロナの第6波やインフル流行がぶつからなきゃいいですけどね。

福岡国際マラソンにまつわる思い出

福岡国際マラソンは、今日の大会をもって、75年の歴史に幕を閉じました。

そうなってしまった理由等については、新聞やTVで解説しているでしょうから、ここでは触れません。

学生時代から大学病院勤務時代には福岡市内に住んでいましたが、実際に沿道で応援したのは1回か2回です。

護国神社の向かい辺りにあった自宅マンションの、すぐ前の道がちょうどマラソンコースでした。

たしか1990年、全国放送されるTV中継に映り込もうと、よちよち歩きの長女を連れて家族で沿道に出ました。

すぐ目の前を、先導する白バイや、選手たちや、TV中継車や、関係者の車がどんどん通過していきます。

スタート地点からそう遠くない場所だったので、その集団はあっという間に全員が通り過ぎて行きました。

選手らを撮すTVカメラが私たち家族をも捉え、その姿を全国に放送していたのは確実と思われました。

ところが、自宅に戻って録画していた放送を見て驚きました。

あろうことか、私たちが映るはずのタイミングで生中継が中断され、コース紹介をしてるじゃないですか。

このマラソン大会にまつわる思い出と言えば、だいたいそんなところです。

その頃の福岡国際マラソンのTV中継は、NHK福岡放送局が行っていました。

当時福岡放送局にいた友人の中江君は、中継電波を途切れさせないための技術的課題に取り組んでいました。

常に中継車を直視できる位置に受信基地局を確保するために、市内のビルの立体地図を作っていたようです。

たしかそんな話でした。違うかもしれません。もう30年前のことですから。

医師会PCRセンターでインフル検査してどうなるの

「熊本市医師会PCRセンター」は、来週水曜から、インフルエンザの抗原検査も行うことになるようです。

インフルエンザ単独では検査せず、あくまで、PCR検査に付随するオプション検査のような位置づけです。

ただし、これまでと同様に、医療機関からの紹介状が必要です。

また、インフルエンザが陽性と判明しても、PCRセンターではタミフル等の処方はできません。

つまり、こういうことです。

(1)患者はまず、一般の医療機関を受診して診察を受け、PCRセンターへの紹介を依頼する

(2)医療機関がPCRセンターに電話で予約し、診療情報提供書等の書類をFAXで送付する

(3)患者は、指定通りPCRセンターに赴き、自家用車内でコロナのPCR検査とインフルの抗原検査を受ける

(4)もしもインフルが陽性であれば、患者はまた医療機関を受診し、タミフル等の処方を受ける

面倒臭くないですか。

それに、インフルの検査をしておきながら、その場では治療薬が処方できないなんてのは、ダメでしょう。

おまけに、インフルが陽性の場合に、PCR検査が希望により中止できないのもオカシイ。

なのでPCR検査はともかくインフルの抗原検査だけは、(1)の時点で医療機関でしておくべきだと思います。

その場で陽性ならすぐタミフル出せるし、じゃあコロナじゃなさそうだからPCRやめとこう、って言えるし。

私なら(1)の時点でインフルとコロナの抗原検査をして、両方とも陰性のときPCR検査を考慮しますけど。

そんなことより、PCRセンターでのPCR検査には、医療機関からの紹介を不要にしてほしいですね。

紹介状のためだけに患者が医療機関を受診するのは、時間と労力とお金のムダだし、感染のリスクさえある。

むしろ医者が当番制でPCRセンターの方に詰めて、そこで問診等を担当すればいいじゃないですか。

患者は車で直接PCRセンターに行き、受付前を通り、問診医の前を通り、検査場で検体採取を受け、帰宅する。

自己完結型の、完全ドライブスルーPCRセンターです。解熱剤ぐらいなら処方も行います。

インフルの抗原検査を追加してもいいですよ。陽性ならタミフルを処方できる。これ、いいんじゃないの。

ワクチンがあるなら前倒し接種OKじゃないの?

「1月分追加接種 (3回目接種) における新型コロナワクチン接種可能上限量について」

この件名のFAXが、熊本市感染症対策課から届きました。当院の「上限量」は、2バイアルとなっています。

つまり、当院で医療従事者への追加接種用として請求できるワクチンは、1月は2バイアル (12人分) までです。

当院のスタッフで、2回目の接種から1月中に8カ月を迎える追加接種の対象者が7人います。

その全員が追加接種でき、さらに5人分ほどワクチンが余ります。

余ったワクチンは、初回(1,2回目)接種者に使用しても構わないということになっています。

ところで、1月にワクチンが配給された時点で、まだ8カ月の間隔があいてなくても接種して良いのでしょうか。

念のため熊本市に問い合わせたら、8カ月ジャストを経過するまでは接種できません、だと。やっぱりね。

目の前にワクチンが届いても、規定の日付に達するまでは保冷庫で冷やしとけと、そういうことですか。

しかしいま、追加接種を早めようという議論があり、岸田首相も「できるだけ前倒しする」と表明しています。

接種間隔を6カ月にまで縮めることの問題は、ワクチンの供給が間に合わないということですよね。

であるなら、すでにワクチンが届いた医療機関において、前倒し接種が禁じられる理由はないはず。

医療機関における個別の前倒し接種は誰の不利益にもならないので、臨機応変にやらせてもらえませんかね。

いくら水際対策を強化しても、日本人の帰国を阻んじゃダメでしょ

オミクロン株に対する「水際対策」として国交省は昨日、日本到着便の新規予約の停止を要請しました。

日本人が帰国できなくなってしまいますが、「緊急避難的な予防措置だ」と国交省は説明をしていました。

しかし邦人保護の観点から「厳しすぎる」との批判があり、今日になってこの要請は取り下げられました。

これだけなら、朝令暮改というよりは私は、過ちては改むるに憚ること勿れだと、評価するところでした。

ところが松野官房長官は、自分も岸田首相も、予約停止の要請は事後に報告を受けたと「釈明」しました。

これはつまり、国交省の勝手な判断に官邸は関知していなかったという、責任逃れの発言です。

しかも、「責任うんぬんよりは迅速な対応が重要だ」と、いかにも国交省をかばう体で責任論から逃げます。

何言ってんの。事後報告であろうとなかろうと、行政の最高責任者はつねに総理大臣じゃないですか。

「判断の誤りに気付き、撤回を致しました。混乱を招いたことをお詫びします」とだけ言っときゃいいのに。

悪いのは、過ちを意地で押し通すこと。方針なんてコロコロ変えてもいいんですよ、最後が良けりゃ。

前政権や前々政権との違いを、岸田首相は見せつけてほしいものです。