HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)はようやく、接種の積極的勧奨再開が見え始めてきました。
「接種はお勧めしません」から「お勧めします」への手のひら返しですから、相応の理由が必要です。
厚労省が審議会で示した理由は、
(1)HPVワクチン接種後に生じた症状とワクチン接種との関連性は明らかになっていない
(2)HPVワクチン接種による、子宮頸部異形成や子宮頸がんの予防効果も示されてきている
(3)HPVワクチン未接種の女性や男性においても、HPV感染に対する集団免疫効果が報告されている
以上はすべて周知の事実であって、厚労省の方針を覆す新たな知見が得られたワケでも何でもありません。
そろそろやらねばと感じてきた厚労省の科学的良心が、勇気をもって立ち上がったというところでしょう。
厚労省は、これまでに接種を逃して対象年齢を過ぎた人たちへの救済接種を検討中だとも報じられました。
当然のことでしょう。かつて勧奨接種を見合わせたことのある日本脳炎ワクチンの「特例接種」と同じです。
日本脳炎は、年間の国内感染者が数名程度なのに、特例接種は広い年齢層を対象に今も行われています。
子宮頸がんの発症者は毎年約1万人ですから、重大性は桁違い。特例接種は一刻も早く開始すべきでしょう。
英国の研究グループが最近発表したように、HPVワクチンの接種年齢が若いほど、がんのリスクは減らせます。
特例接種も大事ですが、それと同時に本来の定期接種を、できるだけ早く元の形で推進してほしいものです。