学校検診をしていると、しばしば心雑音が聞こえる子に遭遇します。
小学校の高学年で初めて指摘された心雑音では、心臓病は希で、たいていは貧血による「機能性心雑音」です。
よく尋ねてみると、立ちくらみがするとか、体力が落ちたとか、朝起きるのが辛くなった等の訴えがあります。
あるいはまた、微熱や舌の荒れなどの、明らかな貧血兆候が出ているお子さんもいます。
眼瞼結膜がまっ白な貧血例は多くなく、血液検査でわかる程度の軽い貧血と鉄欠乏を認めます。
あるいは、ヘモグロビンは正常だけど貯蔵鉄量を示す「フェリチン」が低値のケースにもよく遭遇します。
体内の鉄分が少ないと、すでに貧血の症状が出てきます。これが「潜在性鉄欠乏」です。
一般的な血液検査では貧血とは診断されないので、見逃されることも多いようです。
小学高学年から中学生は、からだの発育や運動量の増加によって、鉄やその他の栄養素が欠乏しがちです。
急に身長が伸びつつある時期や、部活で激しく運動しているお子さんは、しばしば鉄欠乏になっています。
それに加えて思春期は、月経が始まったりメンタル不安定だったりダイエットしたりと、鉄欠乏の要因だらけ。
鉄欠乏症状のお子さんの体調は、造血剤によって目に見えて改善し、たとえば部活の成績が向上したりします。
ただし薬の副作用で、下痢や便秘、食欲不振や吐き気を起こし、薬の中断を余儀なくされることもあります。
日頃から、鉄分を多く含む食品(たとえば赤みの肉や魚)を多く摂るような食生活を心がけるのが肝要です。
ちなみに私が中学生の頃、今風に言うと「鉄分が濃い」時期がありました。鉄道ファンだったということです。
そんな私も市民病院時代には、軽い貧血になったことがありました。4カ月で16キロ減量したときです。
いまでは「鉄分」(=鉄道への興味の度合い)はすっかり薄れていますが、体重は維持し貧血はありません。