市の予約システムから、いったん離脱

新型コロナの感染拡大とワクチン予約の混乱。連日同様の話題で恐縮ですが、毎日新ネタがあるものですから。

ローカルニュースでも報じられたように、熊本市が一人芝居のドタバタ劇を演じ中です。ただし笑えません。

第1幕:午前のFAX「好きに打ってね」

「かかりつけの患者さんから接種の希望があった場合、市の予約システムを介せず接種を行っていただけます」

第2幕;午後のFAX「さっきのはウソ」

「改めて、丁寧な説明をさせていただく機会を設けますので、一旦、撤回させていただきます」

「朝令暮改」という言葉が浮かびましたが、違います。「朝令昼改」です。

「公平」にこだわった予約方法が混乱を招いて反省する余り、反対方向に走りすぎて、慌ててまた引き返す。

ネットや電話予約ではラチがあかないので、もう自由に接種させよう、というのが最初のFAXの主旨でした。

私はすぐに保健所に電話して、予約システムからの離脱を申請。自由接種に専念する覚悟を決めました。

と思ったら第2のFAXが届いたわけですが、もう私の方針は変わりません。しばらくは、かかりつけ専用です。

とは言え、私のやり方の医療機関ばかりでは、持病やかかりつけ医を持たない方が不利です。

それを解決するのが集団接種だと思うし、そんな時にこそネットや電話予約システムが生きるというもの。

自院ではかかりつけ患者に特化し、一方で集団接種会場にも出動する。私はそのやり方で行こうと思います。

と書きましたが、私もけっこう朝令暮改派ですので、ご了承のほど。

「7月末に接種終了」の無理難題

「1日100万回の接種を目標とし、7月末を念頭に希望する全ての高齢者に2回接種を終える」

菅首相のこの発言を聞いて、んなことできるかいっ、と医療従事者なら誰でも思うところ。

ところが自治体は真逆の反応なんですね。無理を承知で従うしかない。で結局、医療機関に指示が出ます。

熊本市長から各医療機関に届いたFAXの主旨はこうです。

・現状の、医療機関の接種計画では、菅首相の言う「7月末終了」は困難である

・よって、平日・夜間・休日の接種を増やし、5/19〜7月末までの期間で120回分ほど接種を増やして欲しい

はてさて、発熱外来も忙しくなってきたいま、どこまで増枠できるのか。

もちろん、毎日1人でも2人でも多くの方に接種したい、と思う気持ちはあります。

ところが、このワクチン、毎日の接種人数が6の倍数でなければなりません。

増枠する場合でも6人単位というのが、ネックなのです。

一人の接種当たりどのぐらいの時間を要するのか、始めてみなければわかりません。

接種作業とその後の経過観察に余裕を見て、当院では15分に一人の接種ペースで考えています。

しかし熊本市の要請に従うなら、10分に一人以上のペースに上げないと、回数をこなせません。

菅首相はまた、インフルエンザワクチンの接種ペースを引き合いに出していますが、それも誤解です。

たしかに当院でも、インフルエンザワクチンは15分に5人のペースで接種してきました。

でも「3密」を防ぎながら接種しなければならないコロナワクチンでは、そんなペースはあり得ない。

どうしてそのようなナンセンスなことを、平気で提案できるのか。たぶん、分かってないからです。

菅首相に適切な助言をできる人が周辺にいないか、首相が聞く耳を持たないか。たぶんその両方でしょう。

「先着順」の予約受付を、やめたらどうですか

新型コロナワクチンの接種は、多くの自治体で、高齢者向けに予約受付が始まりつつあります。

NTTや携帯各社は、他の電話がつながりにくくなるのを避けるため、予約用番号への着信を制限するとのこと。

予約電話の集中と、それによる混乱なんて、容易に予測されたことです。

これだけ数が限られるワクチンの場合、そもそも先着順に受け付けることが間違いなんじゃないですか。

先着順は「公平」だと言いますが、ネットや電話はつながりにくく、予約できるかどうかは運・不運です。

苦労がなかなか報われず、混乱を招くばかりで、その結果には「不公平」感が漂います

それならば、最初っから抽選にした方が混乱を避けられるだけマシじゃないですか。

さらにその抽選の混乱をも防ぎたければ、各自治体がそれぞれの基準と責任で接種順を決めてしまえばいい。

熊本市も、高齢者施設の入所者を優先したところまでは良かったのに、その後の戦略がダメダメですね。

毎週毎週すべての高齢者に「公平な機会」を与えようという現在の予約受付方式は、申し訳ないけど愚策です。

電話会社の通信制限によって、明日以降の予約電話はますますつながりにくくなることでしょう。

コールセンターにつながらなければ、当然、医療機関に直接電話をかける方も増えることになります。

ですがいくら電話されても、各医療機関の接種枠なんて、かかりつけの方の予約ですぐに埋まってしまいます。

「一見さんお断り」的な事は言いたくないですが、かかりつけの方ですら、大半はお断りしているのが現状。

一般診療や発熱外来も行っている医療機関で、コロナワクチンを接種できるキャパなんて限られているのです。

となると解決法は集団接種です。熊本市でも計画されているので、私も時々接種会場に出動するつもりです。

ただ、そのために自院を臨時休診しなければならず、その分、個別接種が減るというジレンマがあります。

1日100万人接種する、なんて菅首相がぶち上げたところで、現場でできることはすでにキャパ一杯です。

感染急拡大の中で、ワクチン問い合わせ多数

熊本県で111人なら、熊本市でも82人と、いずれも過去最多の新規感染者数が出てしまいました。

当院の発熱外来においても、これまで以上に慎重に診療しなければ、院内感染の危険がある雰囲気です。

そのため、申し訳ありませんが、風邪症状の方をコロナを見る目で診療することを、ご了承ください。

「マスクを着け、手はこまめに消毒して、十分注意してますからコロナじゃないです。風邪だと思います」

過去1年間に何十回も聞いてきたセリフですが、その認識は、改めてください。

コロナも風邪も、ウイルス感染です。コロナの予防が完璧であれば、風邪に罹るはずがありません。

風邪に罹った時点で、ウイルス感染を防ぎ切れていなかったことを自覚しなければなりません。

そしてまた、その「風邪症状」が、新型コロナの症状ではないという保証もありません。

だから当院では、風邪症状の方にはできるだけ、コロナの検査をオススメしているのです。

実際、半信半疑で検査を受けた軽症者の中から、抗原検査やPCR検査の陽性が出たりします。

なかには陽性であることに納得しかねて、保健所の疫学調査にあまり協力的ではない方もいると聞きます。

熊本で感染が急拡大しているいま、当院の明日の発熱外来は、大型連休中のそれを凌ぐものになるでしょう。

そんな中で今日も、多分明日も、ワクチンの接種を希望する多くの方から、問い合わせの電話が入るのです。

感染が拡大する中でのワクチン接種という、最悪の予想が的中しそうな雰囲気です。

こんな事にならないために、ワクチン接種の前までには、感染をしっかりと抑え込むはずだったんですけどね。

感染者激増、ワクチン急げ

4都府県の緊急事態宣言の延長が決定し、さらに愛知県と福岡県も対象地域に追加されることになりました。

隣県の福岡を見てヒヤヒヤしてきましたが、しかしもうそれどころじゃない。熊本の新規感染者が100人です。

ところが熊本では、高齢者へのワクチン接種の、予約受付が昨日始まったばかり。接種は5/19からです。

毎週2,3%の高齢者が接種できるようですが、3週間で10%、次の3週間は2回目の接種に充てられます。

いまのペースでは、6週間で10%の方にしか接種できず、全員の接種には60週間、1年以上かかる計算です。

もちろん、ワクチンの供給量が増えたら、接種ペースはドンドン上がっていくことでょう。

当院も今日、当初予定よりも少しだけ予約受入枠を増やすための手続をしましたが、これが面倒くさい。

保健所等関係各所への電話連絡を行った後に、報告資料(Excelファイル)の再提出が必要でした。

ワクチン1バイアルから6人に接種するため、医療機関の予約者数は毎日、6の倍数でなければなりません。

その条件がネックとなり、ちょっとだけ増枠・減枠することが、なかなか難しいのです。

さらに、実際に接種が始まると、体調不良等でキャンセルが出てくるのが恐怖です。

キャンセルが出たら、余ったワクチンを誰かに接種しなければなりません。その優先順位は、

(1)医療機関の職員で未接種の者や、かかりつけ患者の優先接種対象者から探す

(2)コールセンターに連絡して、キャンセル待ちリストから見つけてもらう

(3)その日の受診者の中から対象者を探す

(4)優先接種対象者でなくてもいいから、なんとか接種する

ひとたびキャンセルした人が、次にいつ接種できるのか。1,2カ月待ちは必至でしょう。

コロナ感染者が増えている現状で、頼みのワクチンが接種できないのは、あまりにも残念なことです。

それは困るので、体調不良を隠して接種する方が出てくるかもしれません。

発熱外来とワクチン接種の両方を最大スピードでこなさなければならない時期が、もうすぐ来ます。

熊本市でもワクチン接種の予約受付開始

熊本市のコロナワクチン。本日正午から始まった予約受付は、1時間半で終了してしまいました。

今日予約が出来たのは、「第1期(5/19-23)」の5日間の接種分だけです。そりゃ、すぐ埋まるでしょう。

人数にして4,200人分。熊本市の65歳以上の対象者20万3千人の2.1%だけだそうです。

「第2期(5/24-30)」の予約受付は5/17の朝8時半から。それまでの約11日間は、予約受付停止期間です。

なんてムダな時間なんでしょうね。そして5/17にはたぶん、予約枠はまた1,2時間で埋まるのでしょう。

以後、毎週月曜日の朝に予約合戦が繰り広げられ、その後7日間は予約のできない日々が続くことを繰り返す。

予約受付をあえて毎週1回の短時間に集中させようという戦略の、どこにメリットがあるのでしょう。

熊本市の「新型コロナワクチン 接種予約サイト」がまた、使いにくいですね。

ずら〜っと200以上の医療機関が、いったい何順で並んでるのか知らんけど、接種会場が見つけにくい。

検索機能もショボい。空き枠がある会場を見つけることができません。

今回1回目が予約できた人が、その3週間後の2回目の接種枠を確保できないのも、致命的な設計ミスですね。

2回目の接種のために、3週間後にまた予約を取る必要があるとしたら、この仕組みは早急に改善すべきです。

「医療機関でのみ予約を受け付けます。かかりつけ患者様は医療機関に直接ご連絡いただきますようお願いいたします」

当院のように、公開枠を作ってない医療機関の場合、予約サイトにはこのように表示されています。

この文言のおかげで、ネットや電話予約ができなかった、少々イラだった方々からの電話が絶えませんでした。

本来、「医療機関のみで受付」というのは、かかりつけ患者用の非公開枠しか準備していないという意味です。

予約サイトに「医療機関に直接ご連絡を」なんて書かれたんじゃあ、非公開にしている意味が無いのです。

連休中でも、保健所は大忙し

大型連休最終日の今日、当院の発熱外来の受診者は3月以来最多でした。

抗原陽性者は1月をしのぐ数であり、明日判明するPCR検査の陽性者数がどうなることやら心配です。

ところで、SARS-CoV-2抗原陽性者が出た場合に、当院がやっていることは、

(1)保健所に一報(電話)

(2)発生届(HER-SYS)入力(ネット)

(3)入院チェックリストを送信(FAX)

今日はとても忙しかったので、(1)の電話の際に保健所の方に、(2)(3)は少し遅れますと伝えました。

しかし保健所としては(2)が出ないとは動けません。できるだけ早く入力をお願いしますとのことでした。

そこで診察の合間に、まず(3)のFAXを送信し、次の合間に(2)をネット入力・送信しました。

ところがしばらくして保健所から電話。(3)は受け取ったが(2)はまだか、と。

早く出してもらわないと保健所としては動けませんよ、とせかします。でも、とっくに送信したはずなのに。

結局その1,2時間後になって保健所から、(2)は受け取っていました、とのお詫びの電話がありました。

おそらく今日は、(2)の入力数が多く(=感染者数が多く)、保健所もバタバタしていたのでしょう。

こんな中で明日から、いよいよ高齢者へのワクチン接種の予約受付が始まります。さて、どうなることやら。

早く接種したいのはやまやまです

北村先生が髪型を変えたので、私も今日、美容室に行きました。(<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1247.html" target="_blank" title="非合法">非合法</a>なので、ここだけの話です)

髪がさっぱりして何がいいかって、マスクやフェイスシールドを装着するのが楽ですね。

その点で言うなら、ツーブロックとか、究極的にはスキンヘッドがいちばん楽チンでしょう。

昨夜8時ごろ熊本赤十字病院の救外を覗いたら、待合室のソファー1つに1家族、という程度の混み具合でした。

救外の内部も、それほどバタバタしていませんでしたが、それでも3月に見た頃よりは忙しそうな印象でした。

新型コロナ感染者は増えていますが、普通の風邪などで当院を受診する方が昨年よりは増えつつあります。

「喉もと過ぎれば」なのか、警戒心が緩んで受診抑制がなくなってきたのかもしれません。

それが一種の「慣れ」からくる「油断」だとすれば、この緊急事態宣言中の都会の人出はまさにそうです。

メディアがこれだけ取り上げているのに街は賑わい、政治家は国民に「自制」を要求するのみです。

高齢者への新型コロナワクチンの接種については、当院でも明後日から正式に予約の受付を始める予定です。

しかし、ワクチン接種に使える時間は限られており、かかりつけの方への接種だけでも夏までかかりそうです。

一般外来や発熱外来や子どものワクチン接種にも、一定の診療時間を確保しておく必要があるからです。

ワクチンの打ち手が足りないのは、開業医がノンビリしているからだ、そんなひどい話が飛び交っています。

なに言ってんの。一刻も早く打ちたいですよ。でも私はまだ1本のバイアルにも、触れたことがありません。

当院に、待ちに待った最初のワクチンが届くのは、一般向け接種が始まる5月19日の2日前(の予定)です。

そんな具合なので、「打ち手が足りない」「開業医はノンビリ」などと言われるのは、まことに心外です。

集団接種から予約受付を始めたら、混乱して当たり前です

横浜市で本日開始した高齢者の新型コロナワクチンの予約受付は、アクセスが集中して45分で中止です。

想定のおよそ2倍のアクセスがあり、処理しきれなかったとのこと。

さすがに横浜市も、すべての高齢者に対して一斉に予約受付を始めたわけではありません。

接種券の通知は、まずは75歳以上の53万人にだけ、発送していました。

しかも今日の予約は、80歳以上の34万人だけが対象でした。

ところがそこへ、200万以上のアクセスが集中したため、パンクしてしまったわけです。

対象は34万人でも、家族らが協力して一斉に予約を取ろうとしたためか、アクセスは200万。

そこまで膨らむとは、横浜市は想定していなかったのでしょう。市民を見くびっていたわけです。

では、どの様にすれば、予約サイトのパンクを防げるのでしょう。

対象をもっと絞り込んで、最初は90歳以上から始めるぐらいの、慎重さが必要なのでしょうか。

いやおそらく、横浜市が個別接種の予約をまだ始めていなかったことが原因だと私は思います。

熊本市のような、個別接種を集団接種よりも先行させる方式が、正解かもしれません。

さらに、かかりつけの方を対象にするような予約を併用すれば、ネット予約の混雑はかなり軽減できるはず。

その点で、熊本市のやり方は優秀だと言えますが、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3497.html" target="_blank" title="毎週締切方式">毎週締切方式</a>を打ち出してきたので、もう台無しです。

持病がある方こそ、ワクチンの接種をオススメします

新型コロナワクチンの接種について、ご高齢の方からの問い合わせが増えてきました。

(1)ここで接種できますか/いつから予約できますか/今日予約できますか

(2)持病があるのですが接種できますか

前者は一刻も早く接種したい方ですが、問題は後者のように微妙な誤解をして躊躇している方です。

持病がある方にこそ、接種をオススメします。新型コロナに罹ると、重症化しやすいとされているからです。

重症化を防ぐことが、ワクチン接種の目的です。「高齢+持病」のダブルのリスクがあれば、なおさらです。

生活習慣病などの基礎疾患のある方はワクチン接種の何が心配なのか、何人かに尋ねてみました。

するとどうやら、持病があるとワクチンによる副反応が強く出のではないかと、心配しているのです。

つまり、新型コロナに罹ることよりも、ワクチンの副反応の方を恐れているのです。

たしかに日本人には、感染症よりもワクチンの副反応に敏感に反応する体質があります。

さらに厚労省にも、副反応を減らすためなら感染症の予防は二の次、と考えているフシがあります。

現にインフルエンザワクチンは、副反応を減らすために、欧米よりもだいぶ弱められたものを使っています。

副反応騒ぎを回避するために、毎年3千人が亡くなっている感染症を予防するHPVワクチンを、止めています。

感染症予防よりも副反応回避を優先するとは、まるで王よりも飛車をかわいがるような、へぼ行政です。

そんなことを続けて来たものだから、国民はますます副反応にばかり敏感になってしまったのです。