余ったワクチンは、ともかく誰かに打て

新型コロナワクチン。当院ではいまのところ、65歳以上の方に計画通り順調に接種できています。

熊本市内の医療機関で頻発している、「頼んだよりも余計にワクチンが届く」という異常事態もありません。

急なキャンセルが出たので、余ったワクチンを市長や社長に打った、という事実もありません。

しかし今後、キャンセルや接種見合わせによってワクチンが余る事態は、いつか起きると考えています。

熊本市では、ワクチンの予約がキャンセルになった場合、次の順で対応するようにと、指針が出されています。

(1)医療機関の従事者

(2)医療機関背のキャンセルリスト掲載者

(3)医療機関に定期通院をしている方で接種時期が到来している方

しかし接種マニュアルには「希望者が見つからない場合は、接種時期が来ていない方でも接種可能」ともある。

そのことを盾に取って、保健所に掛け合ったことがあります。

すると担当者は、しばらく上司と協議した後、しぶしぶ、「はい、誰に接種してもよいです」と応えました。

多くの自治体が、優先接種対象者でなければ接種できないという規定に縛られ、柔軟性を欠いています。

そもそも優先順位とは、限られたワクチンを混乱なく全国民に接種していくための工夫に過ぎません。

しかし残念ながら役人には規則しか見えてないのか、お宝のワクチンを廃棄してでも順番を守ろうとします。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3510.html" target="_blank" title="河野担当相">河野担当相</a>が今日久々に、「貴重なワクチンが廃棄されているというのは極めて許しがたい」と怒りました。

「接種券がない者には(余ったワクチンを)打てないという誤った指導を行っているところがございます」と。

お役所の方々も一生懸命に頑張っているのはわかりますが、物事の本質を見失わないようにお願いします。

新型コロナワクチンの接種だけでも大変だというのに

高齢者への接種だけでも各地でトラブルが相次いでいる新型コロナワクチンですが、まだまだ次があります。

こんな話を書くと鬼が笑うかもしれませんが、私が心配するのは、その次のまた次、一般向け接種のことです。

関係者の総力を結集すれば、おそらく8月前半には、日本中の高齢者への接種がほぼ完了できるでしょう。

すると次は、基礎疾患を有する方への接種ですが、もっとも順調にいって、1クール6週間で終わるとします。

となると、最終かつ最大のグループである一般の方への接種は、早ければ10月初旬から始まることになります。

と、そこまで思い至って気づいたのです。10月といえばインフルエンザワクチンの接種時期じゃないかと。

つまり10月からは、インフルエンザと新型コロナの両方のワクチンを、並行して接種することになるわけです。

予約から接種までの煩雑な作業を両者で同時進行させるのは、混乱を通り越して修羅場の予感さえします。

まず、予約の受付で混乱・混同しないような注意が必要です。ワクチンの発注方法もまるで違います。

新型コロナワクチン接種の前後2週間は、他のワクチンを接種出来ないというルールもネック。

先週どこそこでインフル打ちました、って人には、今日のコロナは打てません、と通告しなければなりません。

接種方法(筋注か皮下注か)も違いますから、同時間帯に両方のワクチンの接種作業をするのは避けたい。

新型コロナは、ワクチンの希釈調整にも手間がかかるし神経も使います。インフルとは別格の煩わしさがある。

両方のワクチン接種のピークが重なるなど、考えただけでもおぞましい。鬼だって泣くと思います。

あ、もしかして、インフルエンザなんてもう、過去の病気なのでワクチン接種は終了?

一般高齢者向けのワクチン接種が始まりましたが、問題山積

熊本市でも今日から、一般高齢者向けの新型コロナワクチンの接種が始まりました。

5月6日の争奪戦を乗り越えて電話やネットで予約を勝ち取った4,200人の方々が、まずは最初の接種対象です。

また、当院のように医療機関で独自に予約を受け付けた方への接種も、今日から開始です。

そんな大事なときに、熊本市では2日前から、ワクチンの予約と配送において重大なトラブルが続いています。

(1)医療機関が設定していた予約受入枠を超えて、コールセンターが過剰な予約を受け付けてしまった

(2)医療機関に配送されたワクチンの本数が、必要数に足りないか逆に多すぎるというミスが多発した

いずれも大問題ですが、まず(1)は、コールセンターにおける運用に問題があったようです。

スタッフの管理者権限によって、アラートを無視した操作が行われたと考えられています。

どういうつもりで、医療機関に確かめもせず勝手に予約を上乗せしたのでしょうね。その発想がわかりません。

昨日もチラッと書いた通り、医療機関へのワクチン配送のトラブル(2)は、かなり大規模かつ重大でした。

頼んでもいない本数のワクチンが届いても、医療機関はなんとか工夫して、全部接種しようと頑張ります。

これはもしや、ガースーの差し金か。ワクチンを余計に送り付けて、7月末までに接種を終わらせようという。

この問題を受けて熊本市は、高齢者のワクチン接種予約を、電話・ネットともにいったん終了しました。

熊本市がこれまでやってきたこと、ワクチン関連システムの構築・運営すべてが、稚拙というほかありません。

二重予約した人に罪はなく、二重予約できるシステムが問題なのです

「二重予約」という問題が出てきました。「NiziU 予約」じゃないですからね。慌てないでください。

新型コロナワクチンの予約が、自治体と国の大規模接種センターの両方で、二重に予約できてしまう問題です。

個人の予約データを国と自治体が共有していないからそうなるわけで、つまり制度設計が間違っているのです。

せっかく予約できても、二重予約では一方をキャンセルしなければ、何かと問題の元です。

普通に考えたら、接種券番号を省庁や自治体間で共有できる仕組みを作っとけばいいじゃん、て話ですよね。

でも、その単純なことさえ実現できてない。どんだけITレベルが低い国なんだろうと思います。

昨年の「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3159.html" target="_blank" title="特別定額給付金">特別定額給付金</a>」の時にもそう思ったのに、日本のお役所は学習しないようです。

当院の接種予約枠は、一時期公開していましたが、いまは全面的に非公開です。

かかりつけの方を優先するためですが、一方でかかりつけの方は、コールセンターでも予約が可能です。

そんな人はいないだろうと思いながらも、やろうと思えばできる制度設計には、やはり問題があります。

それに加えていま熊本市内で、新型コロナワクチンの医療機関への配送トラブルが起きています。

申請していた本数よりも多く届く事例があり、追加の接種希望者を、あわてて探す羽目になっているようです。

市の予約システムの不具合か、人為的ミスかもしれませんが、ワクチン廃棄につながりかねない重大問題です。

ワクチンをめぐるこのような問題は、全国各地で起きています。

1年前から分かっていた最重要政策だというのに、被接種者の情報管理法すら、仕上がっていませんでした。

「コミナティ」が当院に到着

新型コロナワクチンの集団接種で、同じ人に2回接種するミスがあちこちで起きています。

一度接種を済ませた方が、なぜか2回目の注射を受け入れたことにも驚きますが、その方に責任はありません。

想像するにおそらく、不慣れな会場で接種後にウロウロしてたら、流れに乗ってまた注射されたのでしょう。

会場の係員が、接種券や予診票などの確認過程で、その方が接種済だと見抜けなかったことが大問題です。

個別接種とは異なり、集団接種ではどうしても流れ作業で接種が行われてしまうのが、その要因でしょう。

流れ作業というのは効率は良いですが、前後の部署間での連携や作業の一貫性を保ちにくいのが難点です。

誤って生理食塩水を注射するような過誤事案も、あいかわらず起きていますね。

使用済みのバイアルを、誰が、どんな目印を付けて、どこに置くか、そのルールができていたのかどうか。

本日当院にもついに、ファイザーのワクチン「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3422.html" target="_blank" title="コミナティ">コミナティ</a>」が届きました。明後日からの接種分です。

接種のどれぐらい前に室温に戻し、どのような手順で希釈してシリンジに吸引するか、予行演習をしました。

被接種者の動線、吸引後のシリンジや空のバイアルはどうするか、接種作業の流れを確認しました。

作業には厳格なルールを作り、みんなで理解して共有し、絶対に例外を作らないことが重要です。

とは言え、ドタキャンが出たり、シリンジを床に落とすなどの事態も、考えておかなければなりません。

ワクチンはギリギリで準備されているので、それが余っても足りなくなっても、たぶん一大事になります。

けっして慌てる事のないように、万全の準備と落ち着いた気持ちで、接種開始に臨みたいと思います。

まずは、かかりつけの方への接種を優先します

全国の自治体が苦心惨憺して、新型コロナワクチン接種の予約受付方法を試行錯誤しています。

熊本市の予約方法も二転三転し、それに伴って各医療機関も自院の予約方法で悩んでいるのが実情です。

当院の予約枠は、公開と非公開の併用から一転して完全非公開とし、実質的にかかりつけ優先にしています。

さらに、ワクチン接種医療機関かどうかも非公表にしたので、今朝の熊日にも掲載されていません。

当院での接種を予約済の方が不安に駆られて電話して来たりもしましたが、大丈夫です。安心してください。

当院がかかりつけ優先、ていうか実質的にかかりつけ専用にしている理由は、以下の通りです。

(1)かかりつけの方だけで、接種枠が8月上旬まで埋まってしまうので、それ以上受け付ける余地が無い

はい。コレがほぼほぼすべてです。たぶん当院が予定している接種枠が少ないので、そうなるのです。

なぜそのように接種枠が少ないのかというと、発熱外来にも時間をさかなければならないからです。

今現在の私の優先順位は、コロナ診断>コロナ予防、なのです。ご存じのように、まだ感染者は多いのです。

(2)かかりつけの方なら、現病歴・既往歴・生活歴・アレルギー歴・内服薬を、すべて把握できている

これも重要なことです。抗凝固治療とかβブロッカーの内服など、接種前に知っておきたい薬があります。

現に当院かかりつけの方には、βブロッカーを接種前に休薬するなどの指示を行っています。

もしも病歴も何も知らない見ず知らずの人が接種に来たら、どれだけ問診に時間がかかるんだろうと思います。

(3)予約受付に際しての本人確認や、接種券番号や住所・電話番号等の確認などの事務手続も容易

初診じゃないので電子カルテへの入力も簡単。なじみの方だと、こういうところが有利ですね。

もちろん、かかりつけの方の接種にめどが付いたら、できるだけ多くの希望者に接種を行うつもりです。

しかしまずは、毎月定期的に当院を受診されている方へのワクチン接種に励みますので、ご了承ください。

高齢者の次の、基礎疾患を有する人への接種の方が混乱するかも

「私の接種は、どうやって予約することになるんですかね」

当院通院中の65歳未満の方(基礎疾患を有する方)から、今日このような質問を受けて、愕然としました。

皆さまご存じのように、新型コロナワクチンの接種には優先順位が設けられています。

1.医療従事者、2.65歳以上の高齢者、3.基礎疾患等のある方、4.その他の方、という順番です。

かつては、「基礎疾患の有無を判定して接種するのって、めんどくさそう」といったことを危惧したものです。

ところが蓋を開けてみると、現実には高齢者の予約のところでつまずいています。日本中が混乱しています。

ですが、もっと混乱するのは、おそらくこの次の段階、基礎疾患を有する方の接種かもしれません。

熊本市ではどのような予約方法を準備しているのか、今日、コールセンターに尋ねてみました。すると、

(1)時期が来たら、16歳〜64歳の市民全員に、接種券と予診票を発送する

(2)専用サイトやコールセンター等で、基礎疾患のある方等(自己申告)からの予約を受け付ける

(3)対象者かどうかは最終的に、接種前の問診で医師が確認する

高齢者よりもずっと多くの希望者が、ネットや電話に殺到する光景が目に浮かびます。

基礎疾患の有無は自己申告なので、予約段階ではねられることはありません。希望者は全員予約が可能です。

その方々が本当に有資格者かどうか、医師による判定を受けるのは接種当日の問診です。つまり接種直前です。

まさかその時点で、あなたは基礎疾患を有するとは言えないので、接種できませんね、とは言えないでしょう。

このように、接種現場の混乱は必至です。予約受付開始までに、何か別の工夫を考えた方がいいと思います。

接種券と予診票を、16歳〜64歳の市民全員に一斉に送付するのだけは、絶対にやめてほしい。

ドタキャンで余ったワクチンは、誰に打ってもいい

どこやらの町長やら教育長が、本来の優先接種対象ではないのに新型コロナワクチンの接種を受けた問題。

キャンセル分を接種したり、医療従事者であるとの拡大解釈で恣意的に接種したケースもあるようです。

このようなセコい抜け駆け接種に対して、国民世論はおおむね批判的です。ま、その気持ちはわかります。

しかし、優先順位第1位の医療従事者だって、接種対象選定は「自己申告」で、その実態は少々グレーです。

私の1回目の接種よりもずっと早く接種を済ませた、大病院の出入り業者の方々なんて、何人も知ってます。

実際にコロナ診療を行っている人は当然ですが、単に病院勤務というだけで優先対象にしてきたのが現実です。

急なキャンセルが出た時にその余ったワクチンを誰に打つかも、接種現場の判断に任せれば良いのです。

もちろん、キャンセル待ちの接種対象には、あらかじめ一定のルールを作っておくことがが必要です。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3503.html" target="_blank" title="熊本市では">熊本市では</a>、(1)医療従事者→(2)かかりつけの高齢者→3)コールセンター→(4)周辺の誰か、の順です。

希釈して常温にしたワクチンは長持ちしないので、時間的制約から、(4)になる可能性もあるでしょう。

キャンセル待ちの接種対象者を探す時間的余裕が無ければ、もう誰に打ったっていいでしょう。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3479.html" target="_blank" title="かつて河野担当相">かつて河野担当相</a>は、「余ったワクチンは高齢者でなくても、他県の方に打っても構わない」と述べました。

ところが今日の河野氏は「(首長らには)説明責任を果たしていただきたい」とトーンダウン。

世論とメディアに流されて、私から見れば正論(拍手喝采モノ)だった持論を封印してしまったわけです。

この人(河野氏)は、閣外にいた頃は威勢が良かったんですが、入閣してから大人しくなっちゃいましたね。

熊本市の「高齢者の接種は7月末完了見込み」だそうです

神戸市で、新型コロナワクチン960回分を誤って最長3時間ほど常温に置き、使用できなくなった件。

3時間は論外としても、5分や10分ほど放置した後に冷蔵するようなケースは、今後もあるかもしれません。

ワクチンの効果が減弱または消失しかねないようなルーズな管理に、現場の誰かが気づくかどうかです。

960回分がムダになったことよりも、温度管理の重要性と現場の認識の甘さが露呈した一件だと思います。

誰も気づかなければ、問題のワクチンはそのまま接種に使われます。見た目には何の異変もありませんから。

やっと接種出来た希望のワクチンが、じつは手違いで効果の無いものだったとなれば、なんと罪深いことか。

その意味では、ワクチンの希釈を間違えて、うっかり生理食塩水を注射してしまった奈良の事案も同じ事です。

使用後のバイアルに生食を注入した時点で、もはやこの液体がワクチンかどうかは見た目ではわかりません。

誰にも気付かれないまま、効果の無い液体が注射されたケースが他にないかどうか、確かめようもありません。

通常の予防接種でミスが起きにくいのは、準備から接種までの手順が確立し、作業が安定しているからです。

一方で新型コロナワクチンは、管理が難しく接種方法も新しいという、強い緊張を強いられる接種作業です。

それなのに、7月末までに接種を終えよ、などと無理筋な指示を受け、安全な接種が脅かされているのです。

昨日、各医療機関の9月初めまでの毎週の接種計画数を尋ねるFAXが、熊本市から届きました。

7月末までの接種数の総計で、熊本市の高齢者全員が2回接種できるか、調査したいのでしょう。

ただしその回答期限を待たず、熊本市は「高齢者の接種は7月末完了見込み」と発表してますけどね。

【朗報】熊本市の新型コロナワクチン予約方法が変わりました

熊本市の新型コロナワクチンの予約方法が、抜本的に変わりました。

毎週必ず大混乱を招く仕様の「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3497.html" target="_blank" title="毎週予約締切方式">毎週予約締切方式</a>」は、ついに取りやめです。賢明な決断といえるでしょう。

新たな予約方式の要点は、

(1)1週間ずつ締め切るという「愚策」を中止し、5/24〜7/4の6週間を予約期間とした

(2)その前半3週間と後半3週間を、それぞれ1回目と2回目の予約専用とし、2回分の予約を取りやすくした

(3)次の予約受付日(5/17)を85歳以上の方専用、翌5/18は80歳以上の方専用とする、分散予約を採用した

(4)コールセンターがフリーダイヤルになり、受付時間も長くなった

遅きに失したと非難を浴びたとしても、過ちては改むるに憚ること勿れです。きっと良い方向に進むでしょう。

にしても、私の心配は、次回予約受付開始日5/17に予想される混乱です。すなわち、

・分散予約が「お願い」ベースなら、ごり押しする市民も現れる

・予約方法の変更など知らん、いつ変えた、オレは聞いとらん

・医療機関への電話殺到

多くの自治体が、80歳以上の方の予約から開始するという、年齢制限による予約分散策を採っています。

特定の年齢層(超高齢層)にだけ「接種券」を送付する方式であれば、無用の混乱も防げます。

ただし横浜市のような大都市は、それでもアクセスが集中して予約受付を中止する騒ぎになりました。

人口規模はだいぶ異なりますが、横浜市の混乱を見たので、熊本市は85歳以上からにしたのかもしれません。

とは言え、すでに接種券を全ての高齢者に送付してしまった熊本市の混乱は、今後も避けられないでしょう。

先見の明が無かったというほかありません。

こういったことは本来、自治体任せにせず、優秀な厚労省の官僚が考えておくべきことなんですけどね。