「基礎疾患を有する方」カテゴリーに無理がある

65歳以上の方への新型コロナワクチンの接種が進む中、最近は64歳以下の方からの質問が増えてきました。

次の優先接種順位である「基礎疾患を有する方」に、自分は該当するのか、そうならいつ接種できるのか、と。

当院かかりつけの、高血圧や糖尿病の方は皆さん、その「基礎疾患を有する方」カテゴリーに該当します。

しかし、単に脂質異常症や高尿酸血症、脂肪肝や軽度の肥満等だと、厳密には優先接種対象ではありません。

とは言え、それらの生活習慣病の方にはしばしば心肺機能や肝腎機能に異常があり、その意味では対象です。

「肥満」の定義である「BMI30以上」だって、接種前に身長・体重をチェックするわけじゃありません。

それにBMIは28程度でも脂肪肝や耐糖能異常があるとか、そんな合わせ技だってあるじゃないですか。

その人の基礎疾患の重症度は、特定の臓器異常単独で決めるべきではありません。総合点が大事です。

新型コロナに感染した場合に重症化しやすい人たちの接種を優先するという趣旨を、忘れてはなりません。

さいわい、接種会場での基礎疾患等の証明書の提示は不要です。予診票の記載内容がすべてです。

そしてその予診票の記載内容が真実かどうかを、問診医が判断するのは困難です。信じるしかありません。

かかりつけ医なら正しい判断ができるわけですが、あなたは対象外だから接種できないとも言いにくい。

そもそも「基礎疾患を有する人」というカテゴリー設定に、無理があるのです。現場の混乱が目に見えてます。

優先接種対象の人数がわからないので、接種計画も立てにくい。どうせ予診票は全員に送るしかないのだし。

そんななか、田村厚労相は今日、基礎疾患がある人と並行して一般の人への接種も始められると述べました。

ワクチン接種を加速させたいという大義名分を掲げる裏で、優先順位設定の問題点をこっそり改める形です。

おそらく今後、基礎疾患云々という条件が、事実上撤廃されるんじゃないかと、私は期待しています。