新型コロナワクチンの接種では、誤って生理食塩水を注射した事例が、たびたび報じられています。
使用済のバイアル(薬瓶)を、誤って未使用だと思い込み、そこへ生理食塩水を注入して使用したようです。
これを、不注意だ確認ミスだと責め、もっと慎重に作業せよ、という精神論で片付けてはなりません。
使用済のバイアルが、なぜかまた利用できる状態でそこに置かれていた、そのことが問題なのです。
ワクチン液をシリンジに吸引して準備するための、たとえば当院の手順はこうです。
1.ワクチンのバイアルを保冷庫から出して室温に戻した後、生理食塩水1.8mlを加えて希釈する(薄める)
2.6本の専用シリンジに0.3mlずつワクチン液を吸引し、6人分(計1.8ml)のワクチンを準備する
さて問題。6本目のシリンジにワクチンを吸い取った後、その使用済バイアルは、どこに置けばよいでしょう。
これを、うかつにテーブルに置いたりするから、未使用のバイアルと間違えるのです。
使い終わったらすぐ捨てるか、「使用済バイアル入れ」などと明記された缶にでも入れなければなりません。
このワクチンの注意点は、1.8mlの生理食塩水を加えて希釈した後、1.8mlほど使用するということです。
未使用バイアル内のワクチン原液の量と、使用済バイアルに残っている残液の量が、計算上は同量なのです。
よく注意すれば、両者では透明度が違うので区別は付くのですが、そんな注意が必要な状況自体が問題です。
未使用か使用済かを気にする必要すらないように、使用済バイアルは即座に捨てる。コレが鉄則。