「7月末に接種終了」の無理難題

「1日100万回の接種を目標とし、7月末を念頭に希望する全ての高齢者に2回接種を終える」

菅首相のこの発言を聞いて、んなことできるかいっ、と医療従事者なら誰でも思うところ。

ところが自治体は真逆の反応なんですね。無理を承知で従うしかない。で結局、医療機関に指示が出ます。

熊本市長から各医療機関に届いたFAXの主旨はこうです。

・現状の、医療機関の接種計画では、菅首相の言う「7月末終了」は困難である

・よって、平日・夜間・休日の接種を増やし、5/19〜7月末までの期間で120回分ほど接種を増やして欲しい

はてさて、発熱外来も忙しくなってきたいま、どこまで増枠できるのか。

もちろん、毎日1人でも2人でも多くの方に接種したい、と思う気持ちはあります。

ところが、このワクチン、毎日の接種人数が6の倍数でなければなりません。

増枠する場合でも6人単位というのが、ネックなのです。

一人の接種当たりどのぐらいの時間を要するのか、始めてみなければわかりません。

接種作業とその後の経過観察に余裕を見て、当院では15分に一人の接種ペースで考えています。

しかし熊本市の要請に従うなら、10分に一人以上のペースに上げないと、回数をこなせません。

菅首相はまた、インフルエンザワクチンの接種ペースを引き合いに出していますが、それも誤解です。

たしかに当院でも、インフルエンザワクチンは15分に5人のペースで接種してきました。

でも「3密」を防ぎながら接種しなければならないコロナワクチンでは、そんなペースはあり得ない。

どうしてそのようなナンセンスなことを、平気で提案できるのか。たぶん、分かってないからです。

菅首相に適切な助言をできる人が周辺にいないか、首相が聞く耳を持たないか。たぶんその両方でしょう。