「積ん読」は、本の熟成作業なり

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3258.html" target="_blank" title="積ん読">積ん読</a>」を、よくやります。本を買っても読まずに、そこら辺の本の上に積み重ねてそれっきり、ってやつ。

何冊も積み上げ続けていると、やがて崩れます。上層面だけが滑落したり、大元から倒壊したりもします。

そんな災害が起きたら起きたで、深い層に眠っていた本が発掘できたりして、それも積ん読の醍醐味です。

買った時とはまた異なる、新たな興味が湧いてきて、図らずもその場で読みふけることさえあります。

積ん読に批判的な人がいますが、私は反論したい。そもそも、読書の目的って何ですか、と。

ジャンルにもよりますが、純文学を除けば私の場合たいてい、「好奇心を満たす」ために本を読んでいます。

医学に限らず科学全般、芸術、歴史、生き物、乗り物、食べ物、そのほか森羅万象に、好奇心が入り込みます。

好奇心を満たすことが目的なのであって、「読書」はその手段に過ぎません。

さらに、その好奇心を満たす目的を突き詰めてみると、結局は自己満足なのかもしれません。

本が手元に届いた瞬間から、もう私はワクワクし始め、すでに一定の満足感が得られていることに気づきます。

家を出発するときから旅のワクワクが始まるように、広義の読書の楽しさは、本を手にした時から始まります。

読み進んだらどんな世界が広がり私は何を得られるだろうかと、読まないうちから気分が高揚してきます。

装丁を優しく愛でた後、ページを開き、目次などに目を通し、そして本を閉じます。よし、そのうち読もう。

こうしていよいよ、積ん読が始まるのです。

ワクチンの接種は、優先順位の規定に縛られない弾力的な運用を

緊急事態宣言が、ついに明日、全面的に解除されます。

「解除して大丈夫ですか」と蓮舫議員が問えば、「そこは大丈夫だと思っています」とうそぶく菅首相。

正解を出せるはずもない意地悪でどうでもいい質問に、根拠も無いのに自信たっぷりのいいかげんな回答。

漫才でなければ、こんな不毛な質疑応答などやめてもらいたい。

継続したってラチがあかないから解除するという苦境をわかっていながら、野党もくだらない質問しますね。

もしも政府が緊急事態宣言の継続を決定したものなら、今度は「継続して大丈夫ですか」と訊くのでしょう。

そんなことよりも、本気(マジ)で今後、政府はどのような戦略を繰り出すのか。

感染対策と経済政策の、両方とも満足できるバランス点などありません。我慢できる妥協点を探るのみです。

PCR検査や積極的疫学調査の拡充は、いまさらのようですが、はばかることなかれ。

ワクチンの接種は、各都道府県が供給の範囲内で「弾力的に対応できる仕組み」を構築するらしいですね。

思い出すのは、2009年の、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-19.html" target="_blank" title="新型インフルエンザワクチンの接種">新型インフルエンザワクチンの接種</a>です。

優先接種順位が決められ、たとえその日のワクチンが余っても、優先対象外への接種は禁じられました。

「余ったワクチンは、捨ててください」という非情な言葉を、私は厚労省の担当者から直接聞きました。

まさか新型コロナでは、そんなアホなことはしないだろうと思っていたら、最近気になる文言を目にしました。

「使わなかったワクチンについては、ワクチン接種の優先度が同一順位の対象者ならば接種して良い」

裏を返せば、たとえワクチンが余っても、優先度の低い者に流用して接種してはならない、ということですか。

規則に縛られるお役人には難しい判断かもしれませんが、今回こそは、弾力的な運用を期待します。

LINEしたことないので、痛くも痒くもない

LINE利用者の個人情報や会話内容にまで、中国の会社がアクセスできる状態だった問題。

「看過できない」と与党議員らの怒りを買い、ついに行政サービスへの利用が停止されることになりそうです。

新型コロナウイルスの予約をLINEで行うつもりだった自治体は、予約方法を変えることになります。

問題が拡大して仮に、LINEのサービスが全面停止に追い込まれたとしても、実は私はいっこうに困りません。

この会社が、かつては外国企業の子会社だったことが気になって、私はまだLINEを使っていないからです。

どんだけ偏見を持ってるのかと思われるかもしれませんが、でも現に今回のようなことが起きてしまうでしょ。

とは言え、与党議員も野党議員も、みなさんLINEユーザーのためか、国会論戦にも歯切れが悪い。

なにしろ国内のアクティブユーザー数は8,600万人という、圧倒的なシェアですからね。

こうなると、「LINEしたことない」私などは、極めて希有な存在と言えるでしょう。

ちょうど、芸人「かまいたち」の左側が、「トトロ見たことない」ことを自慢するのと同じですけどね。

中国の企業は、中国政府からの要請があれば、情報を提供する義務があります。例の「国家情報法」です。

なのでLINEのデータにアクセスして中国企業が得た情報は、すでに中国政府に渡っている可能性があります。

日本人の恥ずかしい会話やくだらないダジャレが、中国共産党の担当者の失笑を買っているかもしれません。

SNSでもメールでも電話でも、誰かに盗み見聞きされている可能性は、つねに考えておくべきなのでしょう。

あるいは、誰に盗み見られても良いように、当ブログのような毒にも薬にもならない文章を書くことです。

火山国ですが、巨大噴火のことまでは想定しません

四国電力伊方原発3号機は、運転差し止めの<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3030.html" target="_blank" title="去年の仮処分決定">去年の仮処分決定</a>が本日取り消され、再稼働が認められました。

前回は、阿蘇山が過去最大規模の噴火をした場合、火砕流の影響を受けないとはいえない、との判断でした。

しかし今回は、伊方原発にまで影響を及ぼすような阿蘇の巨大噴火の可能性は高くない、というのが決定理由。

阿蘇山噴火の科学的評価が変わったわけではなく、その影響に対する判断が変わったわけです。

つまり、たとえ噴火被害が甚大でも、その確率がきわめて小さければ考慮しなくても良い、ということです。

あるいは、被害が極端に大きな破局的天変地異は、もはや想定しても意味がないというニュアンスも感じます。

伊方原発を巻き込むような巨大噴火が起きたら、それこそ原発どころの騒ぎじゃないでしょ、というわけです。

いやしかし、単なる噴火だけなら、たとえ西日本が火砕流で焼き尽くされても、日本はきっと再起できるはず。

生き残った東日本の人たちが徐々に西日本に移り住んで、きっとまた西日本を再建してくれることでしょう。

その証拠に、9万年前の阿蘇の巨大噴火でほとんどの生物が死滅した九州は、現在すっかり繁栄しています。

それにしても、原発が火砕流に飲み込まれて完全にメルトダウンしたら、いったい日本はどうなることか。

その意味で、過去最大規模の噴火すら想定した昨年の仮処分決定は、じつに誠実な判断だったと思います。

ですが日本人は、最悪の事態を想定することを忌み嫌う国民性ですから、今回の決定の方がなじむのでしょう。

地震や津波はともかく、噴火のことはもう、考えないことにしたわけです。

それに、原発が破局噴火の火砕流に巻き込まれたとき、それが稼働中かどうかはもはや関係ないですからね。

アクションドラマに邦画的な「間」は不要

テレビ朝日のドラマ『<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3353.html" target="_blank" title="24 JAPAN">24 JAPAN</a>』。まだやってますよ。

何が何でも24話を完結させるしかない、製作スタッフにとっては苦行のような企画になってませんかね。

これまで第1話と第9話を観ただけでしたが、けなげに放送が続いていたので、先日の第22話を観てみました。

しかも続けて、オリジナルの『24-TWENTY FOUR』シーズン1エピソード22も観ました。私も好きですね。

でもおかげで、日米の作品の決定的な違いが、このたびハッキリしました。

日本版には「間」が多い。それはたいてい、心理描写のためにゆったり流れる、ちょっとした安らぎの時間。

しかし敢えて言わせてもらいますが、この手のアクションドラマに、そんな時間は不要。むしろムダです。

オリジナルではその時間の分、テロリストらの犯行のディテールの描写が多いことに気付きます。

主人公の娘が縛られたシーンをオリジナルでは細かく描いているのに、日本版では完全に省いていました。

物語の進行とドラマの進行が完全に一致していることに、このドラマの特徴と面白さがあります。

犯罪が行われれば、それを細かく描けば描くほど、リアリティが出てくるというもの。

それを日本版では省き、登場人物が見つめ合うシーン等に時間を割き、実に邦画的な雰囲気に仕上げています。

なのでオリジナルを観るときは一瞬たりとも目が離せませんが、日本版ではコーヒーを飲んだりできます。

ほとんど同じストーリーなのに、映像の密度が違うんですよね。これでは日本版が失敗するはずです。

延長するにしてもしないにしても、これまでと違うコト、始めましょう

東京の感染者が減らず、変異ウイルスが増えています。緊急事態宣言はどうなるのか。もしや再々(々)延長?

事態は改善してないどころか、むしろ悪化してます。しかし、延長して意味があるのかもわからない。

前回延長を決めたとき、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3440.html" target="_blank" title="ただ延長するだけじゃダメ">ただ延長するだけじゃダメ</a>だと書きましたが、結局、ただ延長しただけでした。

飲食等関連業界の疲弊と病院病床のひっ迫はひとつも改善してないのに、首都圏の人出だけは改善しています。

漫然と宣言を続ければ、だれだって緊急事態慣れするんです。「コロナが出たぞ〜」になっちゃうんです。

何かガツンと手を打って、これまでと違うコトしなきゃ。じゃあ何すれば良い?、と訊かれても困りますが。

一方で地方都市では、感染者が激減してもなお、市民が慎重に行動し続けているところもあります。

熊本は時々クラスターが出ていますが、それでも全体的には市中感染がずいぶん減っている印象です。

年度末から連休にかけて都会と地方で多くの人が行き来して、熊本の感染者数も増加に転じるんでしょうかね。

私はPCR検査至上主義者ではありませんが、次の波が来る前の今、検査態勢の拡充こそ必要だと思います。

その一環か、熊本市が医療従事者等の一斉PCR検査を打ち出し、当院職員も今週検査を受けたところです。

こういったスクリーニング検査は、批判もあるでしょうが、今後の再流行の芽を摘む意味で重要だと思います。

待ちに待った新型コロナワクチンの接種が、医療従事者から始まっています。

誰がいつ接種したかを、自治体や国がきちんと把握するシステムが、構築されています(されつつあります)。

この機会を利用して、接種しに来た全員に、ワクチン接種と同時にPCR検査をするなんて、どうでしょうかね。

唐突にパスワードのリセットを促すメールは、信用できるか

「ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)」という、新型コロナワクチン接種のためのシステムがあります。

その「V−SYS」のID・パスワードがしかし、申請して1カ月近く経つのに、待てど暮らせど送られてきません。

と思っていたら本日昼ごろに突然、次のような件名のメールが届きました。

「パスワードのリセットを完了してください」

私の何かのパスワードを管理者がリセットしたので、24時間以内に完了シナケレバナラナイと、せかします。

でも日本語がおかしいし、「あなたのアカウントは一時的にロックされています」メールと同じ臭いがする。

送信元アドレスに心当たりなし。記されたリンクの長く複雑なURLは、明らかに危険なオーラを放っています。

URLをクリックしたとたん、私のMac内の個人情報がすべて盗まれ、わずかな資産をも失うかもしれません。

フォルダ最深部に隠匿している私の恥ずかしい写真が、全世界に拡散する可能性も覚悟しなければなりません。

と、最大限の警戒をしていたところ、その約30分後に、次のような件名のメールが来ました。

「パスワード設定メールについて」

今度は、見かけ上は厚労省からの、「パスワード設定メール」を送りますので、という予告メールでした。

そこには、「件名が分かりにくいため、不審メールと認識し削除されませんようご注意ください」とある。

どうやら先ほどの怪しいメールは、ID・パスワード設定のための、極めて重要なリンク情報だったようです。

あのね、そういう周知情報って、不審メールに先だって送ってくれなきゃダメでしょ。

厚労省の担当者がメールを出す前に、委託業者からメールが送信されてしまったのかもしれません。

「パスワードをリセットせよ」なんていう危険メールは、いまどき読まずに真っ先に削除する対象ですからね。

コロナ禍で多忙を極めていることでしょうけど、かなり危ういことしてますよ、厚労省の方。ご注意を。

筋肉注射は深さが大事

医療従事者への新型コロナワクチンの接種が進められています(私にはまだ何の音沙汰もありませんが)。

慣れない「筋注(筋肉注射)」なので、その実際の注射方法においては、少々議論が巻き起こっています。

医師会が推奨する、「日本プライマリケア連合学会」による筋注法のポイントをかみ砕けば、次の通りです。

(1)注射する部位(三角筋)をつままないこと。(つまむと、針が筋肉に届かなくなるため)

(2)針は必ず、皮膚に対して直角に刺すこと。(斜めに刺すと、針が筋肉に届かなくなる可能性があるため)

(3)血液逆流を確認する操作を行わないこと。(陰圧により筋肉組織が傷むとワクチンの効果を弱めるため)

しかし、新型コロナワクチン接種のニュース映像を見ると、現場での筋注の流儀はさまざまです。

皮膚を軽くつまんだり、針の角度が45度程度だったり、血液逆流を確認する様子をよく目にします。

まったく別の筋注法を推奨する先生や団体もあります。つまり、絶対的な正解はないということでしょう。

いま年度末なので、HPVワクチンの定期接種期限が切れる高1女子たちが、毎日のように接種に来ます。

このワクチンも筋注です。私はプライマリケア連合学会の方法に準じています。使う針の長さは16ミリです。

筋肉の深さ(皮下脂肪の厚さ)は様々なので、針を刺入する深さの加減(調節)はとても大事です。

針を根元までは刺さない場合もあれば、全部刺し込んでさらに少々皮膚が凹むほど押し込む場合もあります。

いちいち超音波検査などしていません。私の手触りと目測で決めていることを、お断りしておきます。

「国民の疑念は招いていない」と、アンタが言うな

歴代の総務大臣らがNTT幹部と会食したようですが、皆さんおおむね、似たような釈明をしています。

高市早苗氏は、「割り勘にするか全額を自身が負担する対応を徹底していた」ので接待は受けてないと言い訳。

野田聖子氏は、「プライベートの会合という認識だったので、接待という認識はなかった」と述べました。

武田良太・現総務相は、「国民の疑念を招くような会食や会合に応じたことはない」の一点張り。

すみませんが、疑念を招いたかどうかは、国民が決めることです。そして現に、国民は疑念を抱いています。

高市氏も野田氏も、あわてて「差額」を返金したようですが、それこそ、墓穴を掘ったようなもの。

割り勘というのは形だけで、実質的には接待だったことを認識していたことの表れです。

数百万円とか数千万円とかの金額ならともかく、どうして数万円得する程度のケチな過ちを犯すのでしょう。

仮に政治家はノラリクラリで逃げ切ることができても、官僚はそれで将来を棒に振ってしまいます。

「国民の疑念を招かない」=「李下に冠を正さず」ですよ。どうしてみなさん、それができないのか。

でも、「国民の疑念を招くようなことはしていない」と釈明する方はまだ、比較的善良な人かもしれません。

本当に悪質な方ならたぶん、「国民の疑念を招いてしまいました」という言い訳をするでしょうから。

日本はアナフィラキシーが多すぎか?

新型コロナワクチンの接種後に起きたアナフィラキシーが、日本では約18万回接種中に36例起きています。

欧米に比べると一桁多い、異常に高い発生率です。

「アナフィラキシーの診断基準が違うんじゃないの」と私はすぐに思いましたが、もちろん憶測にすぎません。

でもたしかに国際的な基準に照らすと、本来のアラフィラキシーは実際はもっと少ないという報告があります。

医療従事者への接種では、欧米でもアナフィラキシーの発生率は高かった、という情報も出ています。

では日本で医療従事者以外への接種ではどうなのか、その答えが出るまでにはまだ何か月もかかりそうです。

日本も欧米も共通して、アナフィラキシーのほとんどが女性に起きている事実は、とても重要なポイントです。

性差があるなら、人種差があっても不思議じゃないし、それこそ例の「ファクターX」があるかもしれません。

欧米よりもなぜか感染者が少ない日本人の持つ「免疫体質」が、過剰な反応を来した可能性は、あり得ます。

たとえ日本人にアナフィラキシーが起きやすいとしても、ただちに接種を中断すべき理由にはなりません。

日本人にとってはそのようなワクチンなのだと、十分に理解して万全の準備で臨めばよいのです。

実際に、すべてのアナフィラキシー例がきちんと対処され、事なきを得ています。

欧米各国は、アナフィラキシーが起きてもそれはそれとして、粛々とワクチンの接種を遂行しています。

日本ではとくに慎重に接種する必要はありそうですが、副反応の議論ばかりが過熱しないことを祈ります。

HPVワクチンのように接種を中断して感染予防をストップさせる愚だけは、避けたいものです。