とりあえずワクチンを接種しておきたい気分

熊本の新型コロナ診療の最前線とも言える熊本市民病院で、クラスターが発生してしまいました。

感染者7人のうち5人は、感染症病棟勤務の看護師と看護助手でした。院内感染したと考えるべきでしょう。

臨床工学技士も1人、感染しています。呼吸器やECMOのメンテ等で、診療に関わっていたのかもしれません。

すべてのスタッフが、徹底的に感染防御に注意しているはずの部署だからこそ、この院内感染事案は重大です。

偶然か、不可抗力か、それともどこかに盲点があったのか。スタッフの勤務状況に無理はなかったのか。

病床のひっ迫を言うのなら、日本中の一線病院での、医療スタッフの過労や疲弊を心配しなければなりません。

一方で、外来レベルでの心配は、感染者かもしれない受診者から、どの様に医療者を守るかです。

熱・味覚障害・咳・下痢・倦怠感の、どれかひとつでも訴える方は、感染の疑いありと考えるべきでしょう。

それらの患者さんは、うかつに触診・聴診ができず、結果として診療水準の低下を招きかねません。

血液検査をするかどうかで迷うようなケースでは、とりあえず検査しない、という選択をとりがちです。

感染防御の観点から駐車場で採血をする場合もありますが、天候や時間帯によっては、それも難しいでしょう。

無症状の来院者の感染は、残念ながら察知できません。これが問題で、院内感染の発端になりかねません。

医療者が一刻も早くワクチンを接種して、少しでも安心して外来診療ができる日が待ち遠しいですね。

ワクチン接種の管理にマイナンバーを使うのは賛成

「今回使わなくて、いつ使うのか」

息巻くのは、平井デジタル改革担当相。新型コロナワクチンの接種対象者の管理に、マイナンバーを使おうと。

いいね平井ちゃん。でもこの人、見かけが堅そうなのが難。台湾のIT担当相みたいにロン毛にしてはどうなん?

個人番号って、かつて究極の個人情報のような扱いだったのに、いまじゃ公的書類には平気で記入しています。

悪用されて大変な目に遭った、みたいな事例を、私は寡聞にして知りませんが、調べてみたらあるにはある。

でもほとんどは、「個人番号の登録に訂正が必要」みたいな、役所をかたる偽電話事例が多いみたいですね。

つまり、入手した他人の個人番号を直接何かに使って儲けるという犯罪が、まだ開拓されていないようです。

いや、あるのかもしれません。たぶんある。報じられていないか、発覚すらしていないのかもしれません。

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3151.html" target="_blank" title="特別定額給付金">特別定額給付金</a>」のときには、マイナンバーカードがもっと普及しときゃなあ、って多くの方が思ったはず。

私もその一人。でも結局、いまだにカードは作ってないんですね。多分コレ、平均的な日本人の姿でしょう。

カードはともかく、個人番号自体はどんどん活用していきましょうよ。

乳幼児の予防接種番号も全国統一して欲しいと思ってましたから、この際それも、巻き込んでしまいましょう。

運転免許証とマイナンバーカードは、あと3,4年で一体化することになっています。

いっそのことこの機会に、免許証保有者8千万人分のマイナンバーカードを国が作ってしまったらどうですか。

免許証の(不本意な)写真を流用してもいいですから、勝手に作って送りつけてくれたら意外と助かります。

マスク拒否おじさん、第2弾現る

大学入学共通テストで、試験中に鼻を覆わないマスク装着で指示に従わなかった受験生が、失格となりました。

試験中もその後も、周囲にかなり迷惑を掛けたお困り中年(49歳)だったようで、結局、逮捕されました。

「常にマスクを正しく着用してください」とセンターは指示していたそうですが、では正しい装着とはなにか。

サージカルマスクと比べたら、ウレタンマスクや薄い布マスクはそれ自体、「正しい装着」とは思えません。

その反対に、人の鼻からの呼気によるウイルス拡散が本当に問題になるのか、少々疑問ではあります。

しかしそうだとしても、いま、鼻出しマスクの正当性を主張するのは、協調性・公共性に欠ける考え方です。

李下に冠を正さずの気持ちで、疑われることはやらない、紛らわしい自己主張をしない、その態度が肝要です。

残念ながらこの「受験生」は、受験よりも自己主張の方が大事だったと見えます。

試験監督の指示を拒否した以上、途中で妥協したのでは自分の主張を否定することになると考えたのか。

振り上げた拳を降ろすタイミングを逸して、めんどうくせえオジサンになってしまいました。

この件に関して、次のような擁護的な発言(ツイート)をしている人物(34歳)がいます。

「40代の受験生を差別する必要もない(略)何歳になっても新しいことを学んでみたいと思うのは素晴らしい」

この人物こそ誰あろう、マスク装着を拒んで飛行機を着陸させた、いわゆる「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3263.html" target="_blank" title="マスク拒否おじさん">マスク拒否おじさん</a>」です。

残念ながら彼もその後の行動に問題があったようでで、今日このツイートの直後に逮捕されました。

2人とも、何を主張してもかまいませんが、実力行使は暴力です。言論を重んじる人間の行為ではありません。

変異種にも有効な、良いワクチンでありますように

新型コロナウイルスの英国型の変異種への感染が、英国滞在歴のない3人から確認されたとのニュース。

これが市中感染だとすれば、この変異種はもう、日本にかなり入り込んでいるのかもしれません。

国内の感染がさらに拡大する可能性まで出てきました。

変異種が国内に広がる前にワクチンの接種が始まり、しかも変異種にもワクチンが効いてほしいものです。

そのワクチン接種の体制強化のため、河野規制改革担当相が「調整役」に抜擢されました。

普通に考えたら田村厚労相の仕事ですが、菅首相が敢えて河野氏を選んだのには、理由があるのでしょう。

省益を考慮する田村氏に任せていたのでは、厚生官僚の反対を突破することができないからかもしれません。

新型コロナウイルスワクチンは、通常の治験・承認の過程を経ておらず、きわめて例外的な事案ですからね。

日本のワクチン行政の規制や旧習を突破する必要があり、「規制改革担当相」が担うことになったのでしょう。

その河野氏といえば最近、東京五輪について、「何があるか分からない」と率直に述べて議論を呼んでいます。

一方で加藤官房長官は、「関係者はいま、感染対策を含めて準備に取り組んでいる」との従来型の見解。

加藤氏のように、望むことだけを述べ、悪い予測は口にしないのが、日本人らしい物の言い方です。

その反対に河野氏は、客観的・合理的発想で、なんでも率直に口にする、日本人らしからぬ部分があります。

異例のワクチンの導入には、河野氏のような合理的発想が必要なのかもしれません。

『天国と地獄 〜サイコな2人〜』を、とりあえず観ました

日曜夜9時からのTBSの日曜劇場『天国と地獄 〜サイコな2人〜』が始まりました。(ネタバレあります)

韓国映画『パラサイト』を観たときに黒澤明監督の『天国と地獄』を思い出したことを、いま思い出しました。

それはともかく、日曜劇場はハズレがないので初回ぐらい見とこうか、的なノリだったのですが、う〜ん。

主人公2人が入れ替わるという設定が私には、細かい矛盾が気になって、見てて苦しくてしょうがないですね。

たぶん第2話以降も、その矛盾に苦しみながら観ることになるのでしょう。自分の性分を呪います。

階段転落での「入れ替わり」は、これが『転校生』のパクリはなく、オマージュだと言いたいのでしょうか。

ならば最終回で何が起きるかも、だいたい見当が付きます。

冒頭近くのシーンで、地下鉄の乗客がみなマスクを着けている場面には、新鮮な驚きを感じました。

他の多くのドラマが、コロナが存在しない世界を描いているのに、このドラマはその点では正直です。

と高評価したものの、捜査会議のシーンとか、他の3密な場面でマスクが無いのは画竜点睛を欠きましたね。

結局、マスクなどは取って付けただけで、今風感を出すための小道具でしかかなったのでしょう。

入れ替わりとか、タイムスリップは、私のような理屈っぽい人間には我慢ならない矛盾に満ちた設定です。

むしろ超能力とか、神とか、魔界みたいな、理屈が通らない題材の方が、よっぽど私はのめり込めますけどね。

新型コロナワクチンの接種計画が、いよいよ具体化してきました

新型コロナウイルスのワクチンの日本国内での接種について、この数日でにわかに動きが起きています。

ワクチンは、国が指示して、都道府県がとりまとめ、医師会が協力して、市町村が実施することになります。

早ければ2月下旬から約3カ月間かけて、まず「優先接種」が行われる計画です。

その対象者は、2〜3月は医療従事者、4月に高齢者、5月は基礎疾患保有者、という順序が設定されています。

次いで、一般市民への接種が、6〜8月に行われることになりそうです。

ファイザーのワクチンは、–75℃で保管し、保冷Box+ドライアイスの保冷では10日間が限度とのこと。

最小流通単位が195バイアル(975接種分)なので、10日で一気に975回の接種をしなければなりません。

これを単独の医療機関でこなすのが難しければ、複数の医療機関でチームを組んで接種を行う作戦になります。

接種後にアレルギー反応が起きないかなど厳密な観察を行う必要もあり、接種にはかなり手間がかかります。

日本人にはなじみの薄い「筋肉注射」が、接種者にも被接種者にも、余計なストレスになるかもしれません。

折しもこの2日ぐらいの間に、ワクチンの「接種」と「被接種」を問う、2つの調査FAXが届きました。

(1)あなたの医療機関でワクチンを接種してもらえますか

(2)あなたの医療機関でワクチンの接種を希望するのは何人ですか

接種されたけりゃ接種しろというわけです。ええ、もちろん協力はしたいですが、よく吟味しなければね。

新興感染症の流行中に新ワクチンを接種するって、ちょうど<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-46.html" target="_blank" title="新型インフルエンザの時">新型インフルエンザの時</a>を思い出します。

あの時は、優先接種の運用で失敗しましたよね。さてこんどは、どうなりますやら。

コロナ患者を受け入れない病院名の公表は、やるべきじゃない

東京や大阪だけでなく、熊本での新型コロナ用病床のひっ迫も緊急事態です。

大都市に比べて元々の病床のキャパが小さい分、病床ひっ迫の動きも急激です。ホント、やばいです。

欧米よりも感染者が少ないのに、世界一の数を誇る日本の病床が、なぜひっ迫するのかとよく言われます。

理由のひとつは、その世界一多い病床が、すでにしっかりとコロナ以外の患者で埋まっているからでしょう。

一般の病院では、患者の入院日数が長くなればなるほど儲からなくなるように、診療報酬が決めてあります。

ムダに長期入院をさせて医療費が膨らむことを防ぐための方策です。

また、常に満床に近いぐらいに病床が埋まっていないと儲からないほどに、診療報酬が切り詰められています。

診療報酬というものは、医療機関がギリギリ生きていけるように、じつに巧妙に設定されているのです。

病院は、入院日数は短くしながら病床はできるだけ埋めるという、アクロバティックなことをしています。

長年の政策によって、そのような病床運営をしなければ経営が成り立たないような制度になっているのです。

そこへコロナです。対応病床を増やすには、一般入院患者を削らなければなりません。

新規入院を断り、コロナ用の病床と、それに必要な医療スタッフを確保しなければなりません。

脳卒中や心筋梗塞や癌の患者の診療態勢を、コロナ如きのために削るべきなのか、正解はまだ、出ていません。

新型コロナ感染者の受入勧告に従わない病院名は公表する、なんて北風は、病院をかたくなにするだけでは。

質問には、まず真っすぐ簡潔に答えましょう

緊急事態宣言下の東京都の小池知事は昨日、次の様に語りました。

「コロナはカレンダーを持っていない。もう一つ持っていないものが時計でして、ですから、午後8時であろうが、お昼間であろうが、不要不急の外出はお控えくださいと、ずーっと前から、言ってます」

これを聞いた人の反応はたぶん、「うまいこと言うねぇ」か、「うまいこと言ってんじゃねぇよ」でしょうね。

私は後者。ていうか、うまいとも思いませんが、小池氏はまた、こうも言いました。

「コロナは県境がどこなのかわからない、というのもポイント」

あなたこそポイントをはずしてませんか、小池さん。いま求められているのは、へたな例え話じゃないでしょ。

小池氏を「アピール上手」だと持ち上げる方もいますが、私はいいかげん辟易しております。

妙なキャッチフレーズや語呂合わせが、わかり易いというよりくどい、見苦しい。なんなら幼稚。

それに輪を掛けてひどいのが、菅首相です。昨日の記者会見の、グダグダな質疑応答にはガッカリしました。

記者からの質問に対して簡潔に即答することがなく、まずムダな前段の説明から入り、しかも的を外してる。

最初に真正面から簡潔に回答し、次いでムダなく捕捉説明をする尾身会長との、違いが際立った会見でした。

検査結果のデジタルデータを画像に変換して送ってくる不合理

身近な地域や自分の職場等で感染者が出始め、微熱や軽い風邪症状でもPCR検査を希望する方が増えています。

PCR検査をすると、その結果を待つ家族もしばしば検査を希望されます。

気持ちはわかりますが、まだ濃厚接触者と確定していない無症状の方の検査は、当院では行っていません。

熊本でも感染者が増えており、病床のひっ迫が問題化しています。病院には大きな負担がかかっています。

またその裏で、感染者への対応に追われる保健所等の職員の方にも、大きな負荷がかかっています。

PCR検査数が急激に増えており、検査態勢が限界に達しようとしています。

当院が検査を委託している医師会PCRセンターも、一部の検体を他の検査機関に外注している状況とのこと。

検査結果が出る時間も、どんどん遅くなっています。

午前中に検体を出したら夕方には結果が出ていたのが、19時、20時、と遅くなり、昨日は21時台でした。

昨夜は、FAXの1通目がやっと20時56分に届き始め、最後の41通目を受信したのは21時49分でした。

FAX受信前に、すでに電話で検査結果の報告を受けていたので、FAXはあくまで確認用ですけどね。

検査センターは、41人分のFAXを一斉送信したそうですが、当院での受信に53分もかかったのはなぜなのか。

送信側がペーパーレスFAXだとすれば、問題は当院のデジタルFAX複合機にあると思われます。

どうやら、受信時に画像をデータ化するために、余計に時間がかかるようですね。これは盲点かも。

聞けば検査センター側の元データは、エクセル形式のPCファイルだと。なにそれ。

それをわざわざFAX用に変換して、患者1人分ずつの画像データで送ってくるとは、なんというムダな作業。

だからもう、FAXはやめましょうよ。元データをシュッとメールで送って欲しい。秒単位で全部来ますよ。

緊急事態宣言の対象が、ジワジワ広がっています

大阪・兵庫・京都だけでなく、愛知・岐阜、さらに栃木・福岡にも、緊急事態宣言の発令が決まりました。

コレを「勝負の3週間」の時にやっときゃ良かったと、言ってもしょうがないことを言いたくもなります。

熊本だってどうなることやら。

第1波よりも厳しい状況なのに、政府の打ち出す対策は、良く言っても慎重に過ぎませんか(悪く言えば…)。

ガツンと抑え込んで、サクッと終わらせる、そんな政策はできないのですか。と言うのは簡単ですけどね。

時短営業の要請に応じた飲食店には、1店舗1日当たり6万円の協力金が支給されます。

時間が無くてそんな補償しかできないのでしょうけど、じゃあ補償について考え始めるのが遅すぎじゃない?

事業規模や売上実績等を考慮しない一律の給付額には、どうしたって対象者の間に不公平感は出ます。

しかし、助成金とか給付金なんてものは、誰もが納得できる対象や金額なんてものはないのでしょう。

だから、そんな金額じゃ全く足りないと不満をぶちまける人もいれば、これは助かると受け止める方もいる。

医療機関や医療従事者に対しても、慰労金だの支援金だの補助金だのと、色んな形のお金が支給されています。

飲食店の時短営業に対する協力金とは真逆で、危険で過酷な長時間労働に対する支給です。

それらの経済的恩恵も否定はしませんが、診療業務で感染した場合の休業補償がないのが、私には不満です。

たぶんそこには、規定通りの感染防御下では診療中には感染しないはずだ、という理屈があるのでしょうね。