変異ウイルスのクラスターで先が読めない

埼玉県で4人が新型コロナの変異ウイルスに感染していることが確認され、県の担当者は次の様に述べました。

「いずれも英国滞在歴や英国滞在歴のある患者等との接触は確認されておりません」

このような話し方って、昔から私は気に入らない。(話がそれて申し訳ないです)

たとえば、台風等によって空の便の欠航が相次ぐようなとき、次の様なニュースをよく耳にします。

「欠航または欠航が決まっています」

パッと聞いて意味分からん(と、最初は思う)。「遅延または欠航が決まっています」なら分かるけど。

で、次の瞬間、そうか、すでに欠航したか今後の欠航が決まっている、という意味かと納得するのです。

でもそれなら、「すでに欠航したり、今後の欠航が決まっています」と言えば親切なのに。

冒頭の埼玉県の人も、次の様に言うべきでしょう。

「いずれも英国滞在歴はなく、また英国滞在歴のある患者等との接触も確認されておりません」

かように私は人の発言の枝葉がいちいち気になる性分なので、本来聞くべき内容が耳に入らなかったりします。

さいわい、最近のNHKプラスとか全録レコーダーで、聞き漏らしたニュースを聞き直せるのが救いです。

そうそう、話を元に戻しますが、変異ウイルスはクセモノ。要注意ですね。

せっかく感染者数が減る兆しが見え、ワクチンの接種計画も具体化してきたというのに、油断なりません。

はたして「ゲームチェンジャー」となるのは、ワクチンか(良い意味で)、変異ウイルスか(悪い意味で)。

小さな部分に費やす労力が、全体の大半を占めたりします

「自治体の4割 “感染者から協力得られず調査に支障” 厚労省調査」

というニュースの見出しの「4割」に驚いてはみたものの、その数値にどれほどの意味があるのかと考えた件。

新型コロナ感染者に対しては、感染経路や濃厚接触者を特定するため、いわゆる疫学調査を保健所が行います。

しかしさまざまな理由で、感染者が調査に協力しない場合があることは、以前から問題になっています。

自治体のうち4割が、保健所の調査について「協力が得られず支障が生じた経験がある」と回答したようです。

調査対象とした155の自治体のうちの、回答のあった112件のうち48の自治体が、そのような返答だったと。

しかし、それぞれの自治体で、「疫学調査拒否」事例が感染者のどのぐらいの割合だったのかは、不明です。

たとえば拒否率が1割だったとしても、その自治体の回答は「協力が得られず支障が生じた経験がある」です。

112のうちの48自治体で1割拒否ならば、全体の拒否率は約4%と、単純に言えばそういう計算になります。

なので大事なのは、各保健所が、どのぐらいの回答拒否に遭って困っているかという、その具体的な内容です。

「自治体の4割」という表現はウソではなくても、感染者の協力拒否率が4割かとの勘違いを誘う見出しです。

とは言え、たとえ疫学調査に協力しない人が1割程度だったとしても、感染拡大防止の観点からは問題です。

少し意味合いは異なりますが、同様の苦労は私も経験します。PCR検査の結果を電話連絡するときです。

10人のうち、たった1人でも電話がつながらないと、その方のためにずっと電話し続けなければなりません。

その日のうちにお伝えしたい大事な連絡ですが、何度かけても、夜遅くまでつながらないことがあります。

たった1割の相手であっても、そこに費やす労力や全体に及ぼす影響は、とても大きいということです。

発熱外来においても、備えあれば憂いなし

「今日はどうしましたか」と尋ねると、「おなかが痛いですね」と、外国の方がよく言います。

どうしてでしょう。日本人が「おなかが痛いです」と言うところを、外国人は「おなかが痛いですね」と言う。

ある程度日本語のできる外国人にとって、「おなかが痛いです」と言い切るのは抵抗があるのかもしれません。

自分の訴えをわかってほしいという気持ちを、文末の「ですね」に感じます。

終助詞の「ね」には、同意要求のほかに、依頼・勧誘、情報提供、感動など、さまざまな意味があるようです。

外国の方は、言葉が伝わりにくい可能性を考えて、一生懸命伝えようと「ね」を付けるのかもしれません。

発熱外来では、電話で問診したり、対面でもマスクにフェイスシールドなので、聞きづらいことでしょう。

互いになるべく真正面に相対しないよう、顔の向きをずらしてしゃべる上に、私の滑舌も悪いですからね。

そんなわけで患者さんとの会話では、しばしば声が大きくなりがちなのが気になります。

コロナの抗原検査において、患者自身による鼻腔ぬぐい液の採取は「エアロゾル発生手技」ではありません。

ところが、鼻をモゾモゾするとクシャミが出ることがあり、その場合はエアロゾルが発生してしまいます。

なので私は常に、マスク、フェイスシールド、ガウン、手袋を装備して、不意のクシャミに備えています。

外国人の方や、少し耳の遠い高齢者、声が嗄れている方などには、かなり接近して会話する必要があります。

油断してクシャミを浴びないよう、その前兆察知と俊敏な横飛びには、最近だいぶ慣れてきたところです。

新型コロナワクチンには、余裕のある接種計画を

「人流(じんりゅう)」って言葉を、小池都知事などが最近よく使いますが、聞いててなぜかムカつきます。

お役所が好きそうな「漢語」です。手持ちの辞書には出ていませんが、人の流れという意味だとはわかります。

日本国語大辞典で「流」が語末に付く言葉を調べると1080件ありましたが、「人流」はありませんでした。

かように一般人にはなじみが薄いので、俗語でなければ「業界用語」でしょうか。

しかし調べてみると何年も前から、「物流」に対する言葉として「人流」が提唱されているようです。

新型コロナワクチンの担当となった河野行政改革担当相は、「ワクチンのロジを担当します」と言いました。

この「ロジ」というのは、元々は軍隊用語の “Logistics” ですが、「調達」という意味でしょう。

転じてロジは、「物的流通」と「人的流通」の両方を指し、前者が「物流」で後者は「人流」というわけです。

河野氏はおそらく、ワクチンの物流だけでなく、接種に関わる人的調達も含めて「ロジ」と言ったのでしょう。

そうであるならば、彼はなかなか思慮深い、物事の本質を捉えた人物です。

当初問題視されたのは、ファイザーのワクチンの保管や流通ですが、いま問題なのは接種現場の人的配置です。

昨日川崎で行われた訓練では、「1人3分で接種」が絵に描いた餅であることが明らかになりました。

そんなに短時間で流れ作業のように接種ができるのは、季節性のインフルエンザワクチンぐらいでしょう。

希望者だけが任意接種を受けに来る、例年通りのワクチンだからこそ、接種作業はスムーズにいくのです。

新しいメカニズムで効くワクチンを恐る恐る接種しに来た人を相手にして、流れ作業は無理でしょう。

無理な接種計画が破綻して混乱するよりは、最初から十分な余裕を持って臨みたいものです。

緊急事態宣言下にクラブをハシゴせず

菅首相の疲弊ぶりが痛々しくて見てられませんが、そんな中、与党の評判をさらに落とす人もいます。

緊急事態宣言再発令中に、あろうことか銀座のクラブをハシゴしていた、自民党の松本国対委員長代理です。

有権者の陳情を聞くためで、飲酒は午後7時まで、1人だけで行ったから大丈夫。そんな言い訳をしています。

あのね、たとえ1人で行っても、飲酒・飲食しなくても、マスクして相手と2メートル離れていても、ダメ。

残念ながら、事実がどうだったかは、いま問題ではないのです。

わざわざ、この大事な時期に、夜、飲食店をハシゴした、あなたのその軽率な行為そのものが問題なのです。

人に疑われるようなことをやった後で、疑われるようなことはしておりません、と抗弁しても手遅れです。

「李下に冠を正さず」って言葉を知らないのですか。

いま批判されているのは、あなたの行動の中身ではなく、あなたのその思慮の無さなのですよ。

この故事成語を逆手に使って、疑われた悪事を誤解にしてしまおうという詭弁に用いる人もいます。

安倍前首相がモリカケ問題で批判を浴びた際、自分や妻の友人が関わっているので疑惑は当然だと述べました。

さらに「李下に冠を正さずとの言葉をしっかり胸に刻んで、慎重に政権運営に当たっていきたい」とも。

これは誤解を招いてしまった「不徳」を詫びることに終始するという、安倍氏得意の戦術なのでした。

大流行のままではワクチンの接種は難しい

新型コロナワクチンの接種準備として、先週3つの調査が行われ、回答しました。

(1)医療従事者等への優先接種対象者の調査(県・薬務衛生課)

(2)医療従事者等への接種施設申出調査(県・同)

(3)一般向けのワクチン接種に関する調査(市・感染症対策課)

医療従事者向けの接種は、誰が誰にどのように接種するのか、県が取り仕切っています。

このうち(2)は、「あなたは接種を実施してくれますか、接種を受けるだけですか」みたいな調査です。

おそらく4月以降になりそうな、高齢者やその他の一般の方への接種は、市町村が体制整備を行っています。

ファイザー製ワクチンの接種を多数行う施設(「基本型接種施設」)には、超低温冷凍庫の設置が必要です。

一方で当院は、解凍後のワクチンを分担して接種する「サテライト型接種施設」として申請をしました。

副反応対策と同時に3密対策も必要で、問診・接種・観察のために広いスペースを確保しなければなりません。

一般診療と並行して行うわけにはいかず、まして、発熱外来の時間帯とは十分な分離が必要です。

もしも高齢者や一般向けの接種を行う時期に、発熱外来も大忙しという状況だと、接種の進捗も危ぶまれます。

たとえ一時的にでも、流行が収束して発熱外来が不要になったところで、接種に集中したいものです。

もちろん、流行が続いていても、なんとか工夫して接種は進めていくしかありませんけどね。

ワクチンへの「過度な期待」に対する警鐘

ひとつのワクチンについて、国論を二分するような関心事になるとは、医者になって初めての経験です。

いつから、どこで、誰が、誰に、どのように接種するのか、実施計画はまだ、あらゆる段階で模索中です。

なかでもワクチンの効果や安全性については、日本ワクチン学会・岡田理事長の発言が波紋を広げています。

メディアはこぞって「過度な期待に対する警鐘」だと報じていますが、その報じ方自体が過度な印象です。

万一、日本での接種でアナフィラキシー等が起きたとき、メディアが張るキャンペーンがもう想像できます。

あの、HPVワクチンを巡る混乱と同じものが、また繰り返されるような気がしてなりません。

では、岡田先生の発言が問題なのかというと、私はそうだとは思いません。ここは謙虚に受け止めたい。

「(効果の持続性については)全くわからない」(全く新しい作用機序のワクチンですから)

「(各メーカーごとに)効き方も違うかもしれない」(まったく、その通りでしょう)

「100%有効で安全なワクチンはどこにもない」(ワクチンに限らず、すべての医薬品に言えることです)

ワクチン研究の第一人者が、この大事な時だからこそ、敢えて標準的な見解を念押ししているに過ぎません。

評論家やコメンテーターのようなヤカラが、聞きかじったことで論評するのとは、次元も重みも違います。

岡田先生の発言は、聞きようによっては「反ワクチン」的に受け取れ、それがメディアにはウケるのでしょう。

しかし彼は、反ワクチン発言をしているのではありません。強いて言うなら、反「過度な期待」発言か。

実績の無いワクチンなので、慎重の上にも慎重を期す必要があることは、言うまでもありません。

しかしメディアは、全体を見てバランス良く報じたりせず、面白そうな枝葉をつまみ食いするタチなのです。

コロナ禍の収束が何よりも優先するこの時期に、人々が浮かれないように、岡田先生は釘を刺しました。

ワクチンの導入が異例の早さなので、慎重に進めていきましょうという、至極まっとうなご意見なのです。

着信用iPhone活躍中

日曜日に発熱外来をしてると、とにかく、電話回線がパンクします。

・「発熱患者相談センターで聞いたのですが」という問い合わせや受診予約電話が多数

・「では少し病状をお聞きします」と、ついでに電話問診も進めておきたい

・「あらかじめ保険証の番号をお尋ねしておきます」等の確認も、診療時間短縮のためには必須

・「いま駐車場に着いたのですが」という受診者からの連絡が断続的に入ってきます

・「それでは裏口から入って来てください」と呼び込み、あるいは「車でお待ちください」と指示を出す

・「唾液が取れました」という連絡が入り、あるいは「唾液は取れましたか」と問い合わせてみる

・「会計に向かいます」と金額を伝えておつりの打合せをする

2回線しかない固定電話は、時間帯によってはほとんど塞がっています。

そこで今回、ついに連絡(おもに着信)専用iPhoneの購入と相成りました。赤いiPhone SEです。

Apple StoreでSIMフリー版を買って、キャリアはY!mobileにしました。今後ますます活躍しそうです。

話変わって、夜になって保健所に電話したような場合、しばしば折り返しが携帯電話の番号から入って来ます。

保健所所有の携帯なのか、もしや職員の私物を使ってるんじゃなかろうかと、少し心配になります。

最近になってようやく、保健所からPCR陽性者への連絡は、夜9時過ぎたら翌日に回すことにしたようですね。

たしかに、夜中に疫学調査を行うのも、どうかと思ってましたからね。する側もされる側も。

そのかわり、PCR陽性と診断されても約半日は、保健所から何の連絡もない宙ぶらりんの状態になります。

入院調整中の感染者の容体急変が問題になっていますが、入院調整にたどり着いてない感染者もいるのです。

「PPAP」全面廃止へ

周回遅れのネタですが、何周回っても話題になってるようなので、今日は「PPAP」の話。

あっちのPPAPじゃなくて、「ファイル共有のための誤ったメールの送り方」の方です。すなわち、

Passwordつきzip暗号化ファイルを送ります

Passwordを送ります

Aん号化(暗号化)

Protocol

これをPPAPと命名した人(大泰司章氏)サイコー。とくに好きなのが「Aん号化」のとこね。

暗号化されたzipファイルにマルウェアが仕込まれていてもわからない、という問題もあるといいます。

また、zipとパスワードを別々に送ったって、両方のメールを盗み見されたらダメじゃん、て話にもなります。

最近は、別便で送るべきパスワードを初回のメールに「混載」するという、手抜き事例にもよく遭遇します。

オンラインストレージを使ったファイル共有は、PPAPよりはセキュリティに優れた方法のように見えます。

私が所属する大学医局からも時々、部外秘の連絡ファイル共有を知らせるメールが送られて来ます。

最初のメールでURLへのリンク情報が届き、次に閲覧用パスワードが送られて来るという、安心の二段構え。

その両方が揃わないと共有ファイルが見られないので、一方のメールだけ盗み見られても大丈夫、って理屈。

結局これも、PPAPと同じ構造ですよね。パスワードを一斉送信するってとこが、絶対オカシイと思います。

問題点には薄々気付きながらも、こんな幼稚な手法をやめられないのは、日本人だけだとも言われます。

「風邪を引きました」と来院された方へ

風邪かどうかはワシが決めるっ!、なんてことは言いません。そうですか、風邪を引かれたんですね。

今朝から熱が出て、咳も出始めたと。ええ、昨日は寒かったですからね。そりゃ風邪も引くでしょう。

なるほど、コロナ対策は万全なんですね。それは大事です。私もたぶん、その症状なら風邪だと思いますよ。

ただ、老婆心ながら申し上げますが、風邪もウイルス感染症だということを、思い出してください。

風邪のウイルスは、家の中で湧いてきたわけじゃありません。あなたが外出した時にどこかで感染したのです。

誰かが出した飛沫をあなたが吸い込んで、その飛沫の中のウイルスに感染してしまったのです。

それがたまたま新型コロナではなく風邪のウイルスだったと、そういうことですよね。

でもそのマスク、新型コロナウイルスの侵入は防ぐけど風邪のウイルスは通す、ってわけじゃないですからね。

あなたの風邪症状の原因が、新型コロナウイルス感染ではないのだとしたら、それはラッキーだっただけです。

コロナ対策が万全で完璧なら、あなたは風邪を引くはずがありません。

それなのに風邪を引いたのは、感染対策が十分ではなかったことの証です。どこかに問題があったのでしょう。

そんなわけですから、風邪の方はコロナの可能性もあると考えて診療しておりますので、ご了承ください。