「発熱外来」稼働1カ月

「診療・検査医療機関」に指定されて当院が「発熱外来」を稼働して、気が付けば1カ月たちました。

他の患者さんとは「時間的空間的分離」を行って診療を行うために、それなりに苦労・工夫をしています。

日々の発熱外来診療の内容は、厚労省に報告をしなければなりません。そのためのシステムが「G-MIS」です。

G-MISとは、「新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム」の英語の頭文字です。

( Gathering Medical Information System on COVID-19 )

ただし「情報支援システム」よりは「情報回収システム」とした方が、実態にも即してますけどね。

実際の運用はWebフォームへの入力だけなので、その点は簡単です。しかもMacでも使えるのが良いですね。

そのフォームに、IDとパスワードを入力してログインし、二つの「シート」に入力することになります。

(1)日次調査シート:毎日の発熱外来開設時間、発熱患者人数や検査人数等を、毎日13時までに報告する

(2)週次調査シート:毎週の医療資材の在庫量・備蓄見通し、購入見込量などを、毎週水曜日までに報告する

などと書きましたが、実はまだ、このシートに入力したこともなければ、厚労省に報告したこともありません。

発熱外来を開設して以来、私はG-MISへの報告を怠ったまま、すでに丸1カ月を経過してしまっているのです。

なぜそんなことになったのかと言えば、当院のIDも初期パスワードも、いまだに発行されていないからです。

さすがにどうかと思い、本日、県の担当部署に尋ねてみたら、厚労省の作業が遅れているようです、との返答。

なので毎日のデータは、各自がエクセルか何かに記録しておくようにとのことでした。

厚労省も忙しいのです。全国の医療機関の発熱外来の診療詳細などに、今はかまっている暇はないのでしょう。

しかしこれが「発熱外来診療体制確保補助金」につながるわけですから、あとでチェックが行われるはずです。

とはいえ、毎日の診療データの検証はほとんど不可能に近く、実質的にはノーチェックになるかもしれません。

各医療機関が、真面目に診療して、正確に記録して、正直に報告する、という点につきるんでしょうね。

まっくらな駐車場でさむい

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3329.html" target="_blank" title="つい2週間ほど前">つい2週間ほど前</a>にも恐れていた通り、本格的に寒くなりました。今年は久々に、例年並みに寒いといいます。

発熱患者の問診や検査等のために駐車場に行き来するのが寒いし、しかも夕方になると真っ暗ですね。

そうは言っても、発熱した患者本人の方がよっぽど辛いわけですから、私などは我慢するのみです。

半袖の白衣の上に長袖ガウンを羽織ってはいますが、それはあくまで防護具であって防寒具としては非力です。

フェイスシールドにしても、飛沫は防げますが、冷気が顔を刺します。手袋もしかり。防寒にはなりません。

「発熱者専用ダイヤル」から教えられて当院に電話してくる方が、だいぶ増えてきました。

「新型コロナ相談センター」に相談した方もいますが、いまは「専用ダイヤル」が主な窓口になっています。

発熱外来では、毎日いろんな問題に直面します。たとえば今日は、大半の方が一人で来院されました。

一人だと、会計だとか薬局でも本人と対応せねばならず、感染防御を考慮するととても手間がかかります。

徒歩や自転車で来院する方もいて、待機場所の確保で苦労しますが、なんとか工夫するしかありません。

発熱外来に来たけども、やっぱりコロナの検査は受けたくないと躊躇する方も、時々いらっしゃいます。

多くの方が、陰性なら知りたいけど陽性なら知りたくないという、矛盾に満ちた心境で来院されています。

単に体調が悪いだけでなく、とにかく不安なのだろうと思います。

診療所の発熱外来で「陰性証明」は出せませんが、患者さんの支えになるべく、日々の診療を行っています。

もしも今後、感染大爆発の時が来たら、自分や職員が果たしてどこまで頑張れるのか、予測がつきません。

いわゆるアクセルとブレーキは、そろそろ急ブレーキを踏む時期じゃなかろうかと思えてなりません。

医療ひっ迫で問題となるのは、むしろコロナ以外の患者です

本日発表された全国の新型コロナ感染者数は、過去最多となりました。重症者数も過去最多です。

病床使用率も増加し、50%を超える府県も増えています。各地の医療はかなりひっ迫した状況です。

新型コロナに対応するベッド数を増やせば、その分、他の疾患用のベッド数が減ることになります。

世の中の目は、コロナ治療体制の確保に向いていますが、実はコロナ以外の医療もひっ迫しているのです。

新型コロナウイルス感染による医療ひっ迫というのはつまり、医療全体にかかわる問題です。

検診が差し控えられて癌などの早期発見が遅れたり、癌が見つかっても手術時期が遅れる可能性もあります。

当院のような診療所レベルでも、発熱外来を設定することで、一般の診療にしわ寄せが起きています。

非発熱者を限られた時間帯に診療する必要が生じるため、その時間帯は詰め込み診療になりがちです。

急がない検査を延期することもしばしばあります。乳幼児の予防接種枠も、かなり制限せざるを得ません。

昨日保健所から、「COVID-19に係る検査の徹底について」と題して、次のようなFAXが届きました。

「発熱患者等が医療機関を受診した際に(略)積極的にCOVID-19の検査を実施していただくよう」

発熱者は原則として全員、コロナの検査をせよ、というのが国からの要請だそうです。

そう言われなくても、当院の発熱外来においては、必要があればコロナ検査(抗原検査)を行う体制です。

しかし、時間的空間的分離を徹底しようとすると、一人当たりの診療にかなり時間がかかります。

発熱外来に十分な時間を割いて準備することで、一般患者への医療サービス提供量が確実に減っています。

ネット利用専用のクレジットカードがあってもいい

ネット利用専用のクレジットカードを作ろうと思い、久しぶりに1枚、新しいカードを作りました。

店舗や企業などの提携カードではなく、カード会社本体が発行する、いわゆる「プロパーカード」です。

発行手続きはネットから。本人確認のための免許証画像等の添付は不要。2,3分で審査が通りました。

数日後、カードが郵便局に届いたことを知らせる「本人限定受取郵便到着のお知らせ(特伝)」が届きました。

このお知らせを持って北郵便局に行き、免許証を提示すると、カード会社の封筒を受け取ることができました。

カード会社が行うべき「本人確認」作業は、郵便局員に委託した(丸投げした)形です。うまい仕組みですね。

さすがに郵便配達員には任せず、局内で職員が行うところで、安全性を高めているのでしょう。

届いたカードは、ネット上の取引にのみ使うつもりなので、財布等に入れて持ち歩くことはありません。

パソコンに登録して、カード番号等が自動的に出てくる様に設定したら、もうカード本体に用事はありません。

本来は必要なカード裏への記名などしません。暗証番号の初期登録も不要。カードは自宅に保管しておきます。

このように、カード本体を一切使わないつもりなら、最初っから実カードの発行自体が不必要で無駄ですね。

カード番号・有効期限・名義とセキュリティーコードという、たかだか数十文字の情報だけあれば十分です。

なのでカード会社は、カード申し込みの際には、実カードが必要かどうかを選択させてもいいと思います。

Apple Cardもそのカードレスの発想なので、未来的だと思います。実店舗で使うならApple Payで使える。

ただ、Apple Cardの場合、実カードも発行できてしかもそれがカッコイイので、ついつい作りたくなりそう。

ていうか、Apple Cardは、日本にはいつ上陸するんでしょうね。

目的地NGで、出発地OKには、深い理由があるのかも

札幌市と大阪市を「目的地」とする旅行が、Go Toトラベルの対象から外されました。

一方で、その地を「出発地」とする旅行は、Go Toトラベルの対象からは除外されていません。

感染拡大地域が「目的地」なら問題で、「出発地」ならOK、というのは、少々理解に苦しむ理屈です。

西村大臣はその理由を、「医療ひっ迫地域に多くの人が訪れたら、病床に大きな影響が生じる」と言います。

感染地を「目的地」とする旅行の問題点は、旅先で感染して、地元にコロナを持ち帰ってしまうことです。

一方で、感染地を「出発地」とする旅行の問題点は、感染者が他の地域に感染を広げてしまうことでしょう。

そのいずれの場合も、感染拡大地域での医療ひっ迫には、直接的にはあまり関係がないように思えます。

しかしたしかに、旅行者が多数押し寄せれば、観光スポットや飲食店で「3密」が起きやすくなります。

そのことが原因で、感染地の住民にも感染がさらに広がり、結果的に、医療ひっ迫につながる懸念はあります。

「目的地」NGは、よく考えてみると意外に有効な方策なのかもしれません。

一方で、「出発地」OKを極論すれば、感染地の住民が旅先で医療を受けるのはかまわない、ということです。

その意味まで含んだ、感染拡大地域での医療ひっ迫軽減策とするなら、これはずいぶん考え抜かれたものです。

にしても、全国レベルでの感染拡大を食い止めるためには、「出発地」からも除外すべきことは明白です。

3週間程度の「短期集中策」だというのは、つまり、クリスマス前には制限を緩和したいということでしょう。

であるならば、中途半端なことはやらず、もっと思い切った感染拡大防御策を発動すべきじゃないですかね。

このままでは、史上最悪の年末年始になりゃしないかと、私は本気で心配しています。

スプーンって、消耗品なんでしょうね

毎朝ヨーグルトを食べています。おかげで快便です。

もともと一日一食(夕食のみ)だったのですが、最近、朝はヨーグルトだけは食べるようになりました。

なので朝のメニューは、ヨーグルト、野菜ジュース(一日分の野菜)、コーヒーの3品を、その順に摂ります。

少し正確に記述しますと、こうです。

まずカトラリー用の引き出しからスプーン(大)、次に食器棚から小鉢とコップを取り、キッチンに並べます。

冷蔵庫からヨーグルト(複数あればいちばん軽いパック)を取り出し、大さじ3杯分すくって小鉢に入れます。

次いで野菜ジュースをコップに多めに注ぎ入れ、小鉢とコップをダイニングテーブルまで運びます。

それらを食している間に、家人がコーヒーをいれてくれるというのが、ほぼ例外の無い、毎朝の流れです。

最も重要なのは段取りです。キッチンとダイニングを、いつも決まった順路で無駄なく歩くことが肝要です。

その一連の流れにおいて私がいちばん初めにする事は、引き出しから「スプーンを取り出す」という行為です。

ところが、です。毎朝引き出しを開けた時の印象ですが、最近どうもスプーンの数が減っているようなのです。

スプーンなんて、なくなる訳ないのに、現に、なくなってます。日に日に数が減って、今は1,2本という有様。

あまりに不思議なので、試しに「スプーン なくなる」でググったら、同じ現象を報告するブログ多数あり。

ただ、それらの多くは小さなティースプーンが無くなってる話ですが、私の場合は「大さじ」ですからね。

まったく原因不明の、一種のオカルト現象ですね。大さじ消失のメカニズムをご存じのかたは、ぜひご一報を。

「どうせ、お前が投げ(捨て)たんだろ、医者だけに!」っていうブラックジョークはナシでお願いします。

「ドッグラン」に出かけて散歩して帰って来たの巻

愛犬「花ちゃん」の、今日は5歳の誕生日でした。中型犬で5歳と言えば、人間では38歳に相当するとか。

幼いときにペットショップのケージの中で熊本地震を経験した後、2016年の5月にわが家にやって来ました。

花ちゃんは忠実な番犬です。庭や近隣を常に監視しており、宅配便の車などが来ると猛然と吠え始めます。

庭に出ている時に外来者が来たら、芝生の上を走り回りながら吠え続けて威嚇します。優秀かつ勇猛です。

誕生祝いに今日は、郊外の「ドッグラン」に連れて行きました。

穏やかな日差しの下で芝生を疾走したり、別の犬とじゃれ合ったり、そんな姿を想像して出かけたのでした。

ところが現地には、他の犬が誰も来てませんでした。広く寒々しい空き地を、ただ1人で散歩しただけでした。

それ以前に、出かけるときから車の中で、花ちゃんはずっとブルブル震え、ハアハア息をしていました。

多分これから、動物病院に連れて行かれると思ったのでしょう。ビビり上がって、おびえていました。

自宅に居るときは勇猛果敢な番犬ですが、ひとたび野外に出ると、実は温厚で優しくてビビりなのです。

現地に到着してリードを外しても、走り出すわけでもなく、まるでリードが着いている時と同じ歩き方です。

日頃の散歩の時のようにクンクン匂いを嗅ぐ仕草もなく、ただ、ブラブラと行ったり来たりの小一時間。

犬も飼い主も飽きたので、帰宅と相成りました。結局今日は、「ドッグラン」ならぬ「ドッグ走ラン」でした。

診察中の世間話の中にも、いろいろヒントがあります

生活習慣病のご高齢の患者さんは、男性はしばしば寡黙ですが、女性はおおむねおしゃべり好きです。

いや、必ずしもそうではないのですが、そのような方が目立つので、記憶に残るのです。

診察室から出る間際の「ドアノブコメント」が、その前の診察時間よりも(多分)長い方もいらっしゃいます。

もう、ドアノブを取り外して自動ドアにしようかと思うぐらいです。ウソですよ。

処方内容については、ざっくりと把握している方もいれば、すごく厳密に管理している患者さんもいます。

どちらのタイプの方が治療しやすいかは、一概に言えません。

高血圧治療薬を、ブロプレス(8mg錠)からアジルバ(20mg錠)に切り替えた方のケース。

翌月聞いてみたら、20mgでは強すぎると思い、自己判断で半錠の10mg分だけ飲んでいたそうです。

成分が異なる薬物なのでミリ数自体は比較できませんよ、と説明したのですが、私自身にも疑問は残りました。

薬剤名にミリ数を明記することが、かえって誤解を招かないだろうかと。

でもそれでヒントを得て今では、薬を増強する際には、ミリ数の小さな薬に変更する小技を、時々利用します。

もちろん、きちんと説明した上での処方変更ですが、数値から来る威圧感を軽減する効果はあると思います。

配合錠に切り替えることで、薬を減らしたように見せることもありますが、もちろんダマシじゃないですよ。

飲みやすさと、ある種のストレス軽減を狙ったものです。

しかし、良い面ばかりでもありません。まず配合錠は原理上、用量が微調整しにくいのが難点。

覚える薬の名前が増えるのもイヤだし、ジェネリックが使いにくくなれば患者さんには不評です。

日常診療において処方薬は、気持ちよく(したがって確実に)飲んでもらえてなんぼ、ですから。

東京や大阪や札幌の発熱外来は、たぶん修羅場なんでしょうね

新型コロナよりもインフルエンザを心配して来院される方が、最近ときどきいらっしゃいます。

もしかすると、その高熱はコロナではなくインフルであってほしいという、願いがあるのかもしれません。

さいわい熊本ではまだ、インフルエンザはほとんど出ていないようです。私もまったく遭遇しません。

いま多いと感じるのは胃腸炎。手足口病もしつこく見かけます。アデノウイルスや溶連菌感染もボチボチ。

インフルの疑いが否定できない病状経過で、検査が適切と考えられる場合は、迅速検査をすることになります。

となるといまどき、コロナも同時検査することになりますね。自己採取鼻腔ぬぐい液による抗原検査です。

コロナの検査法は、その検出対象物、検体、採取法などが、とくにこの数か月でどんどん広がってきています。

それに伴って、検査機関や保険点数や窓口負担金も変わり、リアルタイムで追随するのもなかなか大変です。

いま国は、全国の医療機関に「発熱外来」を設置させるべく、その体制確保経費を補助しようとしています。

しかしこれは、発熱外来の設置を補助するものであり、発熱外来の稼働を支援する制度ではありません。

診療しなければフルに補助を受けられ、診療すればするほど減らされるという、一種の「休業補償」なのです。

ある程度予測はしていましたが、実際に自分が発熱外来を始めてみると、その制度の本質的矛盾に気付きます。

発熱者が来なければ良いのにと、つい願ってしまう気分にさせるようなこの仕組みは、やはりおかしいのです。

頑張れば報われ、危険な診療には手厚い保障がある、そんな医療機関支援策であってほしいものです。

「Go To トラブル」だと揶揄していた頃が懐かしい

「Go To トラベル」事業はついに見直され、一部制限されることに決まりました。でしょうね。

感染拡大地域に限定して、強い措置を講じるとのこと。菅首相の決断は手遅れではないと思いたい。

「Go To トラベルが感染拡大の主要な要因であるとのエビデンスは、現在のところ存在しない」

昨日まではこのように言ってたお歴々ですが、その裏で方針転換の時機をうかがっていたことは明白です。

物証(エビデンス)がなくても、状況証拠はあります。尾身会長も西村大臣も、本心ではわかっていたはず。

感染を早く沈静化した方が、結果的には経済的なダ メージも少なくなる、という考え方に舵を切ったわけです。

「エビデンス」は、学者や医者が以前から、「科学的根拠」という意味でよく使っている言葉です。

そしてたぶん官僚らも、こういうカタカナ言葉が好きです。

さらに専門家会議等でこの言葉が頻出するモノだから汎用語になり、政治家まで使うようになったのでしょう。

「証拠が無い」と言われると、その柔軟性の無い言葉にムカつく人もいるでしょう。角が立つ表現です。

ところが「エビデンスが無い」と言われたら、「あ、そうなの。じゃ、いいですぅ」となりますね。ならんか。

どの様に方針転換を図ろうとも多少の混乱は招くでしょうけど、それを恐れていては先に進めません。

菅首相には、良心と科学に従って、バランスの良い政策を迅速に打ち出していただきたい。