「新型コロナのワクチン ブラジルで臨床試験の参加者が死亡」
ミスリードを誘う「つかみ」はメディアの常套手段だとしても、人の命がかかった話にこの見出しはどうなの。
報じられているように、亡くなった方(28歳の男性医師)は、ワクチンの投与は受けてなかったようです。
医薬品の治験では、薬の有効性と安全性を調べるために、患者や健常人に薬を投与してデータを取ります。
検証に客観性を持たせるために、本来の薬(実薬)とニセの薬(偽薬:プラセボ)を、無作為に使い分けます。
件の医師は被検者として治験に参加し、偽薬のワクチンの投与を受け、コロナに感染して死亡したようです。
この死亡にワクチンが関与していた可能性は、科学的にゼロです。彼が投与を受けたのは偽薬ですから。
もしも実薬の投与を受けていたら、コロナに感染しなかったか、感染しても軽症だったか、それは不明です。
コロナ感染者や死亡者が、実薬よりも偽薬グループに多いという統計学的な有意差が出れば、彼も報われます。
とは言え、今のブラジルで偽薬を割り振られる被検者は、やはり不運ですね。治験の宿命なのでしょうけど。
英国では、ワクチン投与後の被検者を人為的にコロナに感染させるような治験を、政府が支援するとのこと。
またその前段として、ワクチン未投与の健康人をコロナに感染させる予備実験を行うといいます。
倫理的にどうなのかと思える手法ですが、当局の承認を得て来年も開始する見通しとのこと。
ジェンナーが開発した「種痘法」を、最初は難癖つけながらも最終的に支援したのは英国政府でした。
正しい目的のために科学的かつ大胆に行動できるのは、英国の気質なのかもしれません。日本じゃとても無理。