日本発の薬が世界の新型コロナ治療に使える! と一瞬胸を張ったアビガンですが、なかなか承認されません。
「アビガン飲んだら熱が下がり始めた!」「飲んだ翌日から味覚が戻った!」
効果を実感した有名人がSNS等でアビガンを褒め称えるので、みんなの期待感が高まるのは当然です。
しかし、彼らの症状が改善したとしても、それはアビガンが効いた証拠にはなりません。
「アビガンを飲んだ」→「味覚が戻った」という、前後関係を述べているに過ぎないからです。
ちょうど病状が軽快し始める時期に、たまたまアビガンを飲んだだけなのかもしれません。
<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1964.html" target="_blank" title="前後関係を因果関係と混同">前後関係を因果関係と混同</a>するのは、とくに日本人にはよくある考え方ですが、科学的ではありません。
偽の薬(プラセボ)であっても、特効薬だと思って飲んだら「効いた」と感じるのが「プラセボ効果」です。
アビガンを飲んだ有名人の場合も、プラセボ効果ではなかったという保証はありません。
元々の、新型インフルエンザ用の薬だけどコロナにも良く効くらしい、という前評判が高すぎたのです。
日本で開発された薬だから応援したいという気持ちが、余計に期待感を増幅した可能性もあるかもしれません。
アビガンを医薬品として使うためには、プラセボ効果を除外できるようなルールに則った証拠固めが必須です。
本来であれば、患者も医者もプラセボかどうか区別できない「二重盲検法」による治験を行う必要があります。
しかし現在行われている第3相臨床試験は、やや厳密さに欠ける「単盲検ランダム化比較試験」とのこと。
まあそれでもいいですけど、幸か不幸かコロナの患者数が減っていて、治験に時間がかかっているようです。
当初もくろんだ5月中の薬剤承認は無理でした。それどころか、今月中の目標症例数到達も難しそうだとか。
やがて治験が終了し、しかしアビガンは効かないということが判明しても、私は驚きません(落胆はします)。