この程度の措置で、人と人の接触が8割減るとは思えないのですが

東京都の小池知事は、都が休業を要請する業態や施設を公表しました。

経済的影響等を考慮した国との調整の結果、都が休業を要請する業種は、一部妥協し一部押し切った形でした。

・都が押し切って休業要請:パチンコ店、ネットカフェ、ゲームセンターなど

・都が妥協して要請対象外:理髪店、美容室、百貨店、ホームセンターなど

政権寄りの意見を言うT氏がTVで、東京都がパチンコ店を休業させるのは問題だと言ってました。

東京都だけが厳しくしたら、パチンコをやりたい客は他県に移動し、むしろ感染を都外に広げてしまうのだと。

この詭弁に対して、他の出演者がうまく反論できていなかったのが悔しかったので、ここで書いておきます。

(1)都外に出るパチンコ客に感染者がいるという前提なら、都内に留めてパチンコさせるのはもっと危険

(2)東京都のオーバーシュートを防ぐのが何よりも重要であり、周辺県に感染が広がるとしてもそれは別問題

(3)そもそもこの一大事というのに、パチンコ店の営業をどうしても維持したがる発想に違和感あり

理髪店は、換気を良くして会話を減らせば問題無いかもしれません。ホームセンターと百貨店も同様。

でも、本気で感染を減らすためなら、オーバーシュートして困っている欧米並に厳しくすべきです。

居酒屋を含む飲食店は、営業時間に制限を求めたものの営業を認めました。まだまだ甘いですね。

こんなことで、人と人の接触を何割減らせるのか。7〜8割減らすことなんて、まず不可能でしょう。

携帯電話の位置情報を使って、人の移動データが得られるようになっています。

明日以降、人の移動がどのぐらい減るのか。できるだけ早く、その実態を発表してもらいたいものです。

その結果によっては、休業要請範囲を格段に強めなくてはなりません。でなきゃもうホント、間に合いません。

緊急事態宣言は出たけども、実効性のある要請が出せるのか

「感染者全体に占める男性の割合はおよそ6割だが、亡くなった人に占める男性の割合は7割強と承知している」

WHOが欧州の感染者に関する発表をしたこと受けて、菅官房長官が日本での統計値を説明しました。

そんな情報をいま聞かされても、なんにも役に立ちませんけどね。男は身構え、女は安心せよとでも?

緊急事態宣言が出されてもなお、感染者数はますます増えていますが、それは当然のことです。

今後「新たな感染」が減ったとしても、「新たな感染者数」が減るまでは2週間程度のタイムラグがあります。

もしも2週間後にまだ感染者数が増えてるようだと、それはつまり、「対策」が不十分だったということです。

それから慌てて自粛を強めても、オーバーシュートはもう避けられないかもしれません。

感染拡大への対応は、最初からガツンと厳しくすればするほど、効力を発揮するはずです。

その意味で、国が自粛対象業種をゆるめに設定しようとしているのは、まったく中途半端で甘い考えです。

様子を見ながら、効果が足りなければ必要に応じて規制を強めていこうか、なんて発想では間に合いません。

何を気にしているのか知りませんが、事ここに及んでなお、政府がやることには躊躇が見られます。

対して小池知事は比較的厳しい態度ですが、国との調整の結果、果たして明日どのような方策を打ち出すのか。

言っときますけど、国に合わせて生ぬるいことをやって、結局オーバーシュートに至るのが最悪ですからね。

高齢運転者による交通事故の現場を目撃して、思ったこと

高齢者が運転する車の事故が、実際に増えているのか世間が注目しているからなのか、近年よく報じられます。

判断能力や運動能力が低下した高齢者には、運転中に求められる迅速な判断と俊敏な動作が難しくなります。

今朝、当院隣のサンピアン駐車場付近で車がフェンスに激突する事故があり、偶然私が目撃者となりました。

衝突してもなお車は前進を続け、フェンスを5メートル近く押しつぶしてようやく止まりました。

しかし、アクセルがしばらく踏まれ続けたため、激しく回転するタイヤと地面の摩擦で白煙が立ち上りました。

フェンスが激しく押しつぶされて衝撃を吸収する形になったためか、高齢の運転手にケガはありませんでした。

コロナのおかげで付近の人通りはいつも以上に少なく、巻き添えになった通行人はいませんでした。

実は昨日、当院の敷地入口の進入防止用チェーンを張るポールにトラックがぶつかるという事故がありました。

加害者側と私が今朝「現場検証」をしていた時、すぐ横の駐車場で、冒頭に書いた事故が起きたのでした。

事故にはたいてい教訓がありますが、今回の事例で考えるなら、道路とフェンスの設計が問題でしょう。

右カーブした道路の左側のフェンスが、弧を描かずに直線的に設置されており、カーブに沿っていません。

注意力が散漫な状態で運転していると、まっすぐなフェンスにだまされて直進してしまう可能性があります。

高齢者の交通事故を防ぐために、自動ブレーキ装置や急加速を防ぐシステムが導入されつつあります。

しかし車だけでなく、道路の側にも、運転ミスや錯覚を誘発しないような工夫が必要です。

緊急事態宣言を発令。とにかく人と人の接触をさけるために

「まず冒頭、全国各地の医師、看護師、看護助手、病院スタッフの皆さん、そして感染対策に携わる保健所や専門家、臨床検査技師の皆さんに日本国民を代表して、心より感謝申し上げます。新型コロナウイルスとの戦いのまさに最前線で強い責任感を持って、今この瞬間も1人でも多くの命を救うため、献身的な努力をしてくださっていることに、心からの敬意を表したいと思います」

安倍首相が本日、緊急事態宣言を発令しました。その記者会見の冒頭に、前述した言葉がありました。

医療従事者に対して、最初にまずここまで言いますか。なかなか心にしみますね。

ただし私は、これまでに新型コロナの診療を行ってきたわけではなく、敬意を表される立場にはありません。

しかし今後、熊本でも多数の感染者が出る時期がもし来れば、やるだけやろうという気持ちにはなります。

たとえオーバーシュートになっても、逃げ出すわけにはいかない、重要な使命を帯びているのだと思います。

緊急事態宣言の直接的な目的は、人と人との接触機会を減らすことです。7,8割減らせれば成功だといいます。

一般市民には「3密」を避ける方法がありますが、医療従事者が感染者から逃げ回ることはできません。

なので、自分や職員やその家族等への影響を考えると、医療従事者には大きな肉体的・精神的負担があります。

身を守りつつも使命を果たす、そのバランスをどのように保つか、いまも今後もずっと課題です。

高齢者のいるご家庭には、異例の、感染におびえなければならない年になってしまいました。

お子さんのいる家では、とくに働くママさんのやりくりが大変です。国の施策に期待するしかありません。

私事ですが、今日、3人目の孫が生まれました。このたいへんな時期ですが、元気に育って欲しいと思います。

コロナの野郎には、早々に退散していただきたいものです。

いよいよ明日には緊急事態宣言へ。でも果たして間に合うのか

安倍首相はようやく、「緊急事態宣言」に踏み切ることを決断しました。だいぶ待たされました。

もちろんその目的は、「医療現場が機能不全に陥るのを防ぐため」「医療提供体制を整えていくため」です。

ただし、「経済社会活動を可能な限り維持しながら感染拡大を防止する」という日本流でいくようです。

外出は自粛であって禁止ではなく、都市封鎖はせず、多くの人が集まる施設の使用制限に強制力はありません。

欧米のコロナ先進国では、各地でロックダウンが敢行され、それでもなお感染制御に悪戦苦闘しています。

ところが、その欧米の惨状を目にしているのに、日本のやり方はずいぶん控え目で、手ぬるいように思えます。

油断があるのか。それとも、従順な国民性だから強制しなくても外出は自粛すると思っているのでしょうか。

強制的に外出を制限されている欧米並みに、東京都民らがピタッと外出をやめるというのでしょうか。

事ここに及んでは、国民の自主性に頼らず、やるからには強制力のある措置を発動すべきだと思うのですが。

そもそも、「緊急事態宣言は、ロックダウンとは違う」などと、なぜか「緊急事態」が矮小化されがちです。

たしかに同義ではないにしても、緊急事態宣言はロックダウンへの第一歩であることは間違いありません。

今後どこかでオーバーシュートが起きれば、ロックダウンをせざるを得ない局面が出てくる可能性があります。

緊急事態宣言を出すからには、絶対にオーバーシュートを起こさないぐらいガッチリやらなければなりません。

まあともかく、日本の新型コロナ感染症が収束するかどうか、今月中にはその方向性が見えてきそうです。

緊急事態宣言が出なくても、最悪の事態を想定して準備あるのみ

今日は143人も増えました。でもまだ飛躍的な増加とは思わないのか、安倍首相の躊躇は続いているようです。

東京の感染者の増え方が、もう、爆発寸前のような気がします。ニューヨークの状況が他人事に思えません。

3週間前の米国が、ちょうど今の日本と同じ3千人台の感染者数でしたが、いまや30万人を超えています。

ある程度増えてしまうと、いきなり爆発的に増えてしまうのが、指数関数的な増加の恐ろしさです。

感染者数の推移のグラフでは、急峻な立ち上がりの欧米各国とは異なり、日本は比較的なだらかに見えます。

しかし、日本のカーブの立ち上がりは、単に後ろにずれただけであることを、よく考えておかねばなりません。

日本における感染症対策がそれなりに奏功して、当初の目論見通り、流行のピークが遅れているのです。

感染のピークを遅らせることはできましたが、結局ピークは来ます。そしてそのピークはこれからです。

ニューヨークの混乱を教訓にさせていただき、同じ轍を踏まぬよう、準備を進めなければなりません。

まだ少し猶予があるとするなら、この時期を最大限に生かさなければ、日本も大惨事を迎えるということです。

軽症者の隔離場所や重症者用の集中治療病床のほかに、人工呼吸器と<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3097.html" target="_blank" title="ECMO装置">ECMO装置</a>とその要員の確保も重要です。

たとえばECMOは国内に約1400台あるのに、要員不足のために300程度しか使えないといわれています。

ECMOは心臓外科手術に用いる人工心肺装置の簡略版です。心臓手術ができる病院ならその運用人材もいます。

その導入時には、医師や臨床工学技士や看護師など、心臓手術を行う時ぐらいの10人程度のチームが必要です。

しかし、ひとたび稼働すれば、1台管理するのも3台並べて管理するのも、必要な要員はそれほど変わりません。

なので、同じ施設にECMOを集約して集中管理するのであれば効率よく運用できるはず、と思うんですけどね。

人工呼吸器さえあれば、ECMOさえ導入できれば、と悔やむことのないように、とにかく準備しましょう。

東京がニューヨークになるまで、まだ2,3週間はあると思うので。

自院をクラスターにせず、自分は濃厚接触者にならないこと

東京都で新たに確認された新型コロナウイルス感染者は118人。今日はついに大台に乗ってしまいました。

でも安倍首相はまだ「緊急事態宣言」を出しません。

これでもまだ「ギリギリ持ちこたえている」範囲なのでしょうか。なんとか「瀬戸際」だというのでしょうか。

「必要なら躊躇なく決断する」なんて言葉は何度も聞きましたが、躊躇しまくってるようにしか見えません。

もちろん、諸事情を考慮すれば重い決断でしょうけど、でもコレって、遅れて出したんじゃダメなんです。

とくに今日の118人で問題なのは、感染経路不明の方が81人もいるということです。

既知のクラスター等の中で感染者が増えたのではなく、未知の感染源があちこちにあることが大問題です。

そういえば、「3密」のかわりに「集近閉(シューキンペイ)」などという言葉がネットに登場してますね。

不謹慎と言うことなかれ。こんな暗い時期だからこそ、みんな面白いことを考えたいのです。

微熱や咳が長引く人が、今日も何人か来院されましたが、新型コロナを疑うケースではありませんでした。

しかし今後は、疑わしい症状の方がやって来はじめることでしょう。そのための、当院の準備として、

(1)生活習慣病などの方以外は、駐車場の自家用車内で、診察の直前まで待っていただく

(2)問診は、なるべく携帯電話で行う

(3)患者は常に院内には1人だけ入れ、その動線を限定し、診察室は1カ所に固定する

(4)診察時の防護具は、最低でもマスクとゴーグル、場合によりさらに強化する

(5)1人診察が終わるたびに、診察室の換気・洗浄を一定時間行う

ガウンやフェイスシールドのほかに、N95マスクをやっと入手できたので、一通りの防護具は揃いました。

仰々しいフル装備ですが、これも当院が感染を広げないことと、自分が濃厚接触者にならないためなのです。

一般の開業医としても、やれるだけのことはやるしかありません。

すでに感染して、治って、十分な免疫を持っている体になりたい

新型コロナウイルスは「瀬戸際が継続している状況」だそうです。まだ感染者数が足りないのか。

いま院内感染が大問題です。病院が大規模なクラスターになるケースが相次いでいます。

しかし北九州市の病院のように、外傷で救急搬送された平熱の人が入院後に発症することなど、想定困難です。

すべての来院者が感染している可能性があると疑って用心して診療するにしても、限度があります。

生活習慣病の方にも全員マスク着用をお願いしたいところですが、マスク不足を考慮すると無理は言えません。

自分も感染している可能性があるという前提なら、他人と接する時は誰でも必ずマスクを装着すべきです。

熱や倦怠感や風邪症状があるなら、仕事は休むべきでしょう。これは医療従事者であろうとなかろうと同じ。

重症者を優先的に治療するため、軽症・無症状感染者は自宅や宿泊施設で療養を行うことになりました。

日本の新型コロナ医療も一歩前進です。ひとまず良かった。これで医療崩壊が先延ばしできそうです。

こうなれば、ウイルス検査数をもっと増やして、感染者かどうかをどんどん調べていく方向に転ずるべきです。

できれば、面倒なPCR検査ではなく、インフルエンザのような迅速検査ができるようにもしてもらいたい。

例えば中国製のキットが研究用として輸入されているようです。少量の血液で、わずか15分で結果が出ます。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の免疫抗体「IgM」と「IgG」の両方を調べることができます。

「IgM陽性」であれば、いま新型コロナに罹ってるということです。これが15分でわかるのは助かります。

「IgG陽性」なら、過去に感染してすでに免疫を持っており、もう感染しないということを意味します。

医療従事者としては、この両者をすぐ調べたいものです。「IgM陽性」の無症状感染者だったら困りますから。

逆に自分が「IgG陽性」だとわかれば、もう何も恐れず心置きなく新型コロナ診療ができるんですけどね。

こう言っちゃナンですが、いちばん守るべきは子どもでしょう

東京だけでなく熊本でも、大型連休明けまでの休校延長が決まりました。子どもも家庭も大変だと思います。

そんな中、当院近隣の楠小学校のiPadを使ったネット授業が、今日の全国ニュースで取り上げられていました。

じつは熊本市の全公立小中学校へのiPad導入プロジェクトは、2年前から始まっているようです。

生徒の自宅のネット環境に依存せず使える様に、LTE版(セルラーモデル)のiPadを選んであります。

休校措置が5月で終了するとは限りません。フランスみたいに9月まで休校になる可能性だってあります。

そのような長期戦の場合、iPad授業ができるというのは、とても大きな武器になるでしょう。

ところで悲しいニュースと言えば、福岡や山梨で0歳児の新型コロナウイルス感染者が出たことです。

そのうち山梨の女児は重篤な状況のようです。米国では、生後6週間の女児が死亡しました。

「低年齢の小児に重症の割合が多い」とする中国のレポートも、今頃になって報じられています。

子どもは新型コロナに感染しにくいと、ひと頃まで言われていた都市伝説は、崩れました。

となると、こう言っちゃナンですが、高齢者よりもむしろ幼小児の感染の方が、とても心配になります。

マスクはしないし、何でも口に入れるし、乳幼児をウイルスから守ることって、とても大事で難しい。

保護者の責任が重大ですが、医療機関でも、院内感染予防には最大限の配慮をしなければなりません。

オーバーシュートより前に医療現場が機能不全に陥る、という予測

「全世帯に2枚ずつ、布マスクを配布する」

安倍首相が今日、このように表明しました。マスクを1億枚確保して、5千万世帯に2枚ずつ送付するとのこと。

「一家に2枚」っていうのが、喜ばれるのか批判されるのか微妙な枚数ですが、まあゼロよりはいい。

そういえば今日は、他の閣僚らがサージカルマスクを着けている中で、安倍さんだけが布マスクでした。

それが配布予定の現物のようです。安倍さんにはサイズが小さくて、顎丸出しのちんちくりんでしたけどね。

まあ配らないよりはいいですが、それよりもまず、医療機関に配って欲しいですね。できればサージカルを。

医師会がときどき、医療機関にマスクを配布しますが、慌てて取りに行っても品切れだったりします。

市の中心部から離れている当院は、先着順システムには不利なのです。

明日は貴重な「N95マスク」が配られるようなので、当院職員が朝5時から並ぶ予定です(うそ)。

専門家会議は今日、「オーバーシュートの前に医療現場が機能不全に陥る」という厳しい見通しを示しました。

それでも安倍首相は今日も、「緊急事態宣言を出す状況ではない」と明言しました。

まさか、オーバーシュートが現実のものとなってから、おもむろに判断しようとしているのでしょうか。

拙速な決断によって、あとで批判を浴びることを恐れているのかもしれません。

いつも厳しい発言をする北海道大の西浦教授は、日本は欧州と同等の被害規模(死亡者数)になると言います。

それを少しでも食い止めるためには、早すぎるぐらいの先手を打つことが必要だと思うのですが。