文學界新人賞受賞作『アキちゃん』(三木三奈)読後感

新型コロナ以外の話題はないものかと探したのですが、どうしても旬のネタはコロナ絡みばかり。

こうなれば奥の手は、映画か小説の感想文、ということになります。

ちょうど「文學界新人賞」の受賞作掲載号が出たので、今夜あわてて読んでみました。

三木三奈(みきみな)氏の『アキちゃん』。

「選考会を議論の渦に巻き込んだ “寄り添わない” 小説」だと評されています。(以下、ネタバレあり)

「寄り添わない」と聞くと、お笑いコンビ「ぺこぱ」の右側の人の「ノリツッコまない」を連想しますね。

それはともかく、『アキちゃん』が面白かったかと問われるなら、私の答は「どうなんかなぁ微妙」です。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2843.html" target="_blank" title="今村夏子氏">今村夏子氏</a>の小説にも似てスラスラ読める平易な文章の中に、「刺さる」文が配置されているのはさすが。

「作品には鮮烈な一言半句を求めるだけだ」という、芥川賞の選考委員だった故開高健氏の言葉の通りです。

一貫した「不機嫌」が本作品の重要な通奏低音ですが、主旋律(テーマ)が私には難しく感じました。

重要な事柄が途中まで故意に隠されている点も、効果的というよりは、私には注意力を失わせる展開でした。

でも高評価している選考委員もいて、となると読み手としては、私もまだまだということなのでしょう。

まさか芥川賞とったりして。ていうか、コロナ騒ぎの中で予定通り7月に芥川賞選考会あるんでしょうかね。

防護具が不足しているので再利用するとなれば、またリスクがあります

不足している高規格のN95マスクは、「例外的に」再利用してよいと、厚労省からのお達しがありました。

再利用法のうち、5日間のサイクルで毎日取り替える方法は、滅菌器を必要とせず当院でも実施可能です。

5日のインタバールがあれば、マスク表面に付着したウイルスは不活性化するだろうという理屈です。

週休2日の場合、1週間でちょうど一巡する使い方ができます。手持ちのマスクが5枚あればなんとかなります。

たとえばマスクに曜日を書いておき、毎朝その曜日のマスクを装着するというやり方が、間違いがないですね。

残りの4枚は、どこか風通しの良い(でも人目につかない)ところで保管(陰干し?)しておきましょうか。

目に見えて汚れたり損傷した場合は廃棄するルールなので、汚れない限りずっと使い回せるわけです。

じゃあ、1日1個使うとして、朝から晩まで着けっぱなしかというと、そういうわけにはいきません。

少なくとも、休憩中とか水を飲むときには一時的に外します。その際に大事なのは、マスクの外し方です。

清潔側(内側)と不潔側(外側)を厳密に区別して、慎重に脱着しなければなりません。

マスクだけではなく、キャップやガウンも診療中に脱ぎ着するのであれば、やはり慎重な清潔操作が必要です。

もちろん理想を言えば、すべての防護具を患者毎に毎回取り替えるべきですが、そんなムダはできません。

明らかに多くの飛沫を浴びたり、目立って汚れたりでもしない限り、同じ防護具を1日中使うことになります。

となると、マスクやガウンの外側にウイルスが付着したまま、診療を続けることになる可能性があります。

残念ながらこの方法では、医療従事者が我が身を守ることはできても、患者間での感染リスクがあります。

言い出すとキリがありませんが、院内感染を完璧に防ぐためには、本当はもっと潤沢に防護具が必要なのです。

新型コロナのPCR陽性率が上がっているのが、とても気になります

「コロナが心配です」「コロナじゃないでしょうか」「コロナじゃないという診断書がほしい」

そのように訴える電話相談が、とても多くなりました。お気持ち、お察しします。

「んなこと証明できるわけないでしょ」などと、けんもほろろな対応をするはずがありません。

患者さんもご家族も、幼稚園も学校も、会社も、誰にも悪気は無く、ただただ心配なだけなのです。

残念ながら、他の感染症同様に、いやそれ以上に、感染していないことを立証することは困難です。

症状と状況からみて感染の可能性が低い場合は、どっちみち、PCR検査の対象にもなりません。

コロナでは無いと思いますが、絶対違うとも言えないので、少し経過をみましょうか、となります。

不気味なことに、PCR検査の「陽性率」が全国的に上昇していることが判明したようです。

新型コロナウイルス感染を疑う病状の方は、本当にコロナである確率が高まっているということですよね。

軽い病状でも油断ならないので、当院では現在ほぼ全ての「風邪」の方を、隔離室だけで診察しています。

ゴーグルやキャップやフェイスシールドの出番も増えました。一人診察が終わるたびに、部屋の換気清掃です。

相談センターに相談したら一般の医療機関を受診するように言われた、と来院する患者さんも多くなりました。

保健所も、また最終的に感染者を受け入れる病院も大変だと思います。

熊本地域医療センターの看護師の感染が判明しました。救急外来での患者対応で感染した可能性があります。

完璧な防護具を着けていたはずですが、どこかに感染につながる接点があったのかもしれません。

どれだけ注意して臨んでも、医療従事者の感染リスクは消えません。とくに救急外来はリスキーですね。

医療崩壊につながるのは、病床や医療機器や人員の不足よりも、院内感染の方が先かもしれません。

たとえ朝令暮改であっても、はばかることなかれ

東京都で新たに確認された新型コロナウイルス感染者の200人越えは、驚きはしませんが、ガッカリですね。

ですがもう少し待ちましょう。緊急事態宣言によって事態が好転したかどうか、もうじき判明しますから。

すったもんだの現金給付は、減収世帯への30万円ではなく、国民一人あたり一律10万円に決まりました。

これまで一律10万円を主張していた野党と、最終的には同じ案になったわけです。

「おやおや、われわれの主張と一致しましたか。それは結構。結果オーライです。では急いで進めましょう」

そんな大人な反応をすればいいものを、どういうわけか野党の方々はみな、激おこぷんぷん丸です。

「自分たちで作ったものを自分たちで壊して(略)そんなリーダーは世界どこにもいないですよ」

そう息巻く立憲民主党の安住氏。お気持ちはわかりますが、首相が過ちを改めたのがそれほど問題ですか。

考えの異なる政策は激しく批判するし、それを改めて自分たちと同じ政策になったら「迷走ぶり」を批判する。

国民の多くから不評だった30万円給付をやめたことが、よほど気に入らないのかもしれません。

緊急事態において言い争ってるヒマはありません。こういうときは、譲歩した方がカッコイイのです。

朝令暮改を非難する野党よりも、それをはばからなかった安倍首相の方が、今日は分が良く見えます。

現金給付法は、郵送やオンライン手続きを検討中とのこと。ようやく、マイナンバーの出番でしょうか?

マイナンバーにメインの銀行口座を1つ登録せよと言うのなら、明日にでもネット登録しますよ。

緊急事態宣言が日本全体に拡大され、いよいよ正念場です

新型コロナウイルス感染の拡大を受けて、緊急事態宣言の対象はついに、全国に広がることになりました。

7都府県の人たちが、連休中に全国各地へ移動してはかなわないので、このような措置になったのでしょうか。

安倍首相はときどき思い切ったことをやりますが、その唐突さに驚きはすれど、やり過ぎとは思いません。

またその勢いに乗じて、国民への現金給付は一律一人あたり10万円に変わりました。いいんじゃないの。

それにしても、大型連休中には帰省も旅行もするなという、あり得ないような事態になってしまいました。

絶好の行楽シーズンが、今年は完全に潰される形ですが、誰にも文句は言えません。

熊本県の蒲島知事は、緊急事態宣言の影響のプラス面( 医学的効果 )とマイナス面( 経済的効果 )を語りました。

7時のニュースの前半ではその発言が切り取られて、マイナス面への言及映像だけが報じられていました。

9時のニュースでも、同じ部分だけがとりあげられていました。NHKでもそういう切り取り方をするんですね。

市民生活だけでなく、多くの企業や店舗や労働者が、厳しい対応を迫られています。

しかし、事ここに至れば、感染拡大を抑えて命を守ることが何よりも大事でしょう。経済問題はその次です。

患者さんに今日、「ここは休診はされないのですか?」と尋ねられましたが、その発想はありませんでした。

多くの業種で休業を余儀なくされる中で、医療機関は仕事を続けることが使命であり、喜びでもあるのです。

厳戒態勢前夜、ブログはいちおう連続8年の投稿を達成です

当ブログは、今日で<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2750.html" target="_blank" title="連続更新">連続更新</a>(投稿)が8年に達しました。

少々の事があっても、地震のまっただ中でも書いて来ましたが、いま少々へこたれ気味です。が、書きます。

万一、私が新型コロナウイルスに感染しても、なんとかMacを病室等に持ち込んで、更新を続けるつもりです。

人工呼吸器が装着される病状となっても、できれば鎮静を控えて、執筆ができるよう配慮していただきたい。

ECMOまで導入されたとしても、せめてスマホを握らせてくれますか。なんとか頑張って投稿しますので。

木口小平のごとく、最期の瞬間までiPhoneを離しませんよ。いや、冗談です。遅めのエイプリルフールです。

日本でも最悪の場合42万人が死ぬとか、外出制限はあと2年必要だとか、そんな話ばかりが出て来ています。

明るい話が無いですね。患者さんとの挨拶はまずコロナの話題。診察中ずっとコロナの話。次の患者さんも。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、「電話や情報通信 機器を用いた診療」が認められています。

さらに4月10日からは、初診においても、電話等を用いた診療が可能となりました。これはなかなか画期的。

高血圧などの慢性疾患の再診では、電話等を用いた診療の報酬がアップしました。これもありがたい。

今日も発熱者が何人か来院され、マスクとゴーグルのほかにキャップとフェイスシールドの出番もありました。

さいわい、新型コロナを強く疑う病状の方はおらず、通常の風邪薬の処方を行いました。

いまはまだそんな感じですが、そのうち、本物の新型コロナウイルス感染者が入り込んでくることでしょう。

そのためにも日頃から、私や職員や院内の他の患者さんが「院内感染」しないような対策が必要なのです。

熊本地震の時よりも、さらに困難な目に遭うことになるとは

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1654.html" target="_blank" title="熊本地震">熊本地震</a>から4年。

一生に一度、遭遇するかどうかの、未曾有の天変地異でした。被害は甚大で、多くの犠牲者が出ました。

私や家族の生活や、職場や職員や仕事への影響も大きく、ホントに価値観が変わるほどの出来事でした。

大変だったのは地震直後の1カ月間。断水が続き、余震に怯えつつ、復旧に追われる中での苦しい診療でした。

でもその後は、自宅も職場も熊本も、時間とともに徐々に復興への希望が持てるようになりました。

ひるがえって、新型コロナ禍はどうでしょう。

いちばん大変なのが今じゃないことだけは確かです。本番はこれからなんでしょうけど、先が見えません。

どん底に向かって転落中なのかもしれません。その底がどのぐらい深いのかも、わかりません。

医療従事者が感染するリスクは大きく、またその医療機関がクラスター化する恐れもあります。

果敢に診療を行うためには防護具が不足しており、また救急病院などの医療従事者は疲弊しています。

受け入れ態勢を整えきれない病院では、新型コロナウイルス感染の疑いがある患者の診察は困難です。

そのような複数の医療機関に診療を断られたケースが、「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-518.html" target="_blank" title="たらい回し">たらい回し</a>」だとして批判的に報じられています。

しかし、受け入れを拒否したのではありません。受け入れようにも困難な状況だったのです。

この重大な局面において「受け入れ拒否」だと非難するのは、医療者をガッカリさせる効果しかありませんよ。

手指消毒用アルコールの代用として、ウォッカにお墨付き

新型コロナ対策のために、特例措置が行われたりしますが、酒を消毒液代わりに使えようになるとは驚きます。

マスク不足と同様に、手指消毒やその他の消毒用のアルコールが足りません。医療現場では深刻な問題です。

そこで酒を消毒薬代わりに使うヤカラが出てきて、問題になっていました。本来、酒では代用できないのです。

たとえ消毒に適したアルコール濃度(80%前後)であっても、糖などの不純物の存在が問題になるといいます。

ところがここに来て、酒を消毒液として用いることを特例として認めると、厚労省が言い出しました。

もちろん時代劇みたいに、口に含んだ焼酎をプハ〜ッと吹きかける消毒法はダメでしょうけど。

使えるのはアルコール濃度が70%から83%のウォッカなどで、酒造メーカーの増産も始まっているとのこと。

酒で消毒するのは、「主に医療機関での消毒液の不足を解消するための特例措置」だと厚労省はいいます。

でも酒なんて誰でも手に入れられるわけですから、むしろ一般市民に使っていただくのがよくないですか。

少し前から厚労省は、高濃度エタノールを手指消毒用に応用することを、臨時的・特例的に認めていました。

そしてこのたび厚労省が、医療機関に高濃度の「特定アルコール」を無償配布することになりました。

アルコール濃度は95%で「一斗缶」単位の配布とか。なかなか豪気です。これを薄めて手指の消毒に使えと。

手引きによれば、「特定アルコール830ml+精製水適量=全量1000ml」となるように希釈せよとのこと。

精製水の量が「適量」となっているのは、水とアルコールを混和すると体積が減るから。なんか懐かしい。

一斗缶がもらえるなら、当院では今後2カ月程度は、手指消毒液の心配がなくなります。これは助かる。

ただ、市販の手指消毒薬のような添加剤が入りません。手がひどく荒れたりしないだろうかと、少し心配です。

新型コロナに効くかどうかはともかく、BCGの接種には要注意です

「BCGが新型コロナに効く」という情報がありますが、いま成人が接種して有効かどうかはわかりません。

日本では、BCGは0歳児の定期接種ワクチンです。当院でも毎月7〜10人の乳児に接種を行っています。

その接種方法は独特で、「管針法(かんしんほう)」という、いわゆる「ハンコ注射」をします。

管針というのは、9本の針が円筒形のプラスチック容器に植え込まれた、小さな「剣山」みたいな器具です。

ワクチン液を皮膚に塗布しておき、そこへ管針を押し当てると、刺さった針先でワクチンが微量接種されます。

上腕中央部に2カ所並べて接種するので計18個の針痕が並び、接種の1カ月後頃にもっとも赤く腫れます。

その後は徐々に白っぽく目立たなくなりますが、それでも一生残る瘢痕なので、接種時には気を遣います。

絶対にしてはならないのは、ワクチン液を普通の注射器で普通のワクチンのように皮下注射することです。

大量のワクチン液が体内に入るので、その反応はすさまじく、皮膚がひどくただれて悲惨なことになります。

最近、成人へ皮下接種した事例が報じられました。新型コロナ対策の目的で行ったと思われる、過誤接種です。

きっと醜い瘢痕が残ることでしょう。一生消えません。被接種者にも接種医にも、痛いことになりましたね。

日本でBCGを製造してるのは、「日本ビーシージー製造」1社だけです。

接種するのはおおむね、その年に生まれた赤ちゃんだけなので、製造数もその程度で計画されているはず。

ところが先月末の出荷数は通常の3倍に急増したそうで、怪しげな発注が多数含まれている可能性があります。

すでに東京や大阪では、欠品になっているという噂も聞きます。

当院の在庫定数は5本。約半月分の使用数です。熊本ではまだ発注できるようですが、今後どうなることやら。

基本的に乳児用のワクチンです。おかしな使い方をする医者が増えないよう、祈るばかりです。

コロナ禍が切羽詰まってるのに、政府のやることがまだ生ぬるい

東京都の感染者数、今日は197人ですか。昨日が189人で一昨日が178人。

ズドンと一気には増えず、ジリジリといたぶりながら攻めてくるところが、なんともイヤらしい。

緊急事態宣言後の人出は、地域差はあるものの、2〜4割程度の減少が見られたようですが、まだ足りません。

安倍首相は今日になって、事業者は出勤者を最低7割減らすように要請すると述べましたが、これも生ぬるい。

東京が最悪の状態に陥る前に、いますぐ欧米みたいな外出制限を進めるべきじゃないのですか。

外出制限は法律的には難しい、なんて言いっこなし。法解釈なんてどうにでもなるでしょう、安倍政権なら。

うかうかしてたら、もっと厳しくしとけばオーバーシュートしなかったのに、と後悔することになりますよ。

緊急事態宣言は、北大の西浦教授が提唱した「人と人との接触を8割減らせ」という理論に基づいています。

しかしここにきて、8割削減が必要なのか、7割なのか、6割でもよいのか、「揺れ」が目立ちます。

そもそも安倍首相自身が、「最低7割、極力8割」などと、最初から弱気な態度を示しているのが良くない。

さらに、基本再生産数からの単純計算なら6割削減でよい、という数字が一人歩きしている面もあるようです。

最初は厳しい規制を作ろうとぶち上げても、途中で横やりが入って結局ザルになる、というのはよくある話。

しかしこのコロナ禍だけは、もはや業界や圧力団体への配慮をしている場合じゃないですよ。