9月入学への制度改革は妙案ですが、やはり飛びつけない気がします

学校の休業が続き教育上の問題が叫ばれている中で、「9月入学・新学年開始」という話が急浮上しています。

日本も諸外国にならって秋入学にしてはどうかという話は、もう何年も前から、湧いては消えてきました。

ところがここに来て、新型コロナウイルス感染に伴う休校措置が続くせいで、その議論が再燃し始めました。

高校生たちの呼びかけがきっかけだといわれますが、たぶん多くの方が同様の思いを抱いていたことでしょう。

すでに全国で、5月末まで休校になりそうですが、このぶんだと6月も休校でしょう。7月だってわかりません。

ようやく8月か9月から学校が始まったとしても、失われた数カ間の学習時間をどう取り戻せるのか疑問です。

ならば5カ月間はなかったことにして、9月から新年度にしてしまえ、という発想はわからないでもない。

しかし本来であれば準備に何年もかけるべき制度改革を、急場しのぎで即断してよいものか、疑問は残ります。

安倍首相は、「大きな変化がある中においては、前広にさまざまな選択肢を検討していきたい」と述べました。

「前広に」なんて聞き慣れない言葉(ある種、業界用語)が、私はどうしても気になってしまいます。

「幅広く」とか「広い視野に立って」という意味ではなく、「あらかじめ」とか「前もって」ていう意味です。

どうしてこの言葉を使うのでしょう。事態が切羽詰まって時間的猶予がないだけに、余計にしっくりきません。

今年度からの9月入学が拙速だと慎重に考えているのなら、それを明言してほしい。宙ぶらりんはダメです。

残念ながら、私には9月にコロナが終息しているとは思えません。まだ行動自粛が必要な時期かもしれません。

華やかに新学年を迎えられる状況ではないでしょう。わざわざ9月入学にしたことを、結局後悔しそうです。

先がまったく読めないのに、科学的根拠のないまま重大な制度改革をするのは、あまりにも無謀に思えます。

今年度は1年間、腰を据えて病魔と闘うのみでしょう。苦しい年度にはなりますが、まず、落ち着きましょう。