五輪延期は必至の雰囲気なのに、聖火リレーを始めても大丈夫か

世界中に新型コロナウイルス感染がものすごい勢いで広まり、とくに欧米諸国が大変なことになっています。

各国の五輪委員会や競技団体やメディアは、東京五輪の延期(または中止)を求める声をあげています。

日本国民やメディアもすでに、延期は当然として、1年延期がいいのか2年延期かで議論している段階です。

ところが組織委員会や政府は、予定通りに開催する建前で準備を進めており、なかなか延期を口にしません。

正式に延期が決定しない限り延期しない前提を固持するものだから、すべてを粛々と進めるしかないのです。

アテネから聖火が到着しました。強風の中で行われた昨日の到着式は、見てる方が寒々しくなりました。

聖火リレーはもう来週から始まります。ひとたび始まったら、リレーはそのまま最後まで続くのでしょうか。

3月26日に福島県を出発し、各道府県を2,3日ずつ走り、7月10日からは都内を走って聖火台に向かいます。

熊本県は、5月5日と6日の祝日・振替休日に走るという、絶好のスケジュールです。

しかしさすがに5月には、すでに延期が決定していることでしょう。走る方も応援する方もドッチラケですね。

リレーは全区間を全うし、聖火は競技場近辺の施設で、1年でも2年でも、燃やし続けておくのかもしれません。

ただ、最終ランナーが聖火台に点火しても開会式は始まらず、ちっとも晴れがましい気持ちにはなれません。

こんなことなら、先週のアテネの採火式よりも前に、五輪延期を決めておくべきでした。

新型コロナとの戦いは長期戦。気を抜くとオーバーシュートが起きます

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が昨夜、状況分析と提言を行いました。

それによれば、日本はいま「持ちこたえているが、一部で感染が拡大している」とのこと。

言い換えれば、「なんとか持ちこたえてきたけど、もう限界かも」というギリギリの状況かもしれません。

「オーバーシュート」という恐ろしい言葉も登場しました。患者が爆発的に増えた流行状態を意味します。

患者が多すぎると医療がパンクして、コロナだけでなく他の病気も含めて、十分な対応ができなくなるのです。

たとえばイタリアなどでこの状況が起きています。ヨーロッパの広い範囲が、該当するかもしれません。

医療従事者として、いちばん危惧するのは医療崩壊であり、その原因たるオーバーシュートを恐れます。

日本で医療崩壊が起きていないのは、検査数が少なくて、感染者が病床を埋めていないからだとも言われます。

その面は否定しませんが、日本の感染防御対策が奏功して感染者数が抑えられていることも大きいでしょう。

今後、気を緩めたらいつでもオーバーシュートがおきる可能性があり、その可能性はずっと続きます。

オーバーシュートが起きないように工夫すればするほど、流行は長期化するかもしれません。

提言でも、長期戦を覚悟する必要があると言っており、いったん収束してもぶり返す可能性に言及しています。

さらに提言では、「最終的に人口の79.9%が感染する」という可能性も、あらためて強調しています。

1億2600万人の79.9%は約1億人。私が予測したよりもずいぶん多いですが、十分考えられる数値です。

提言に従い、「密閉+密集+会話」をできるだけ避け、ともかくオーバーシュートを防がねばなりません。

その態勢をいつまで続ければ良いのか、まだわかりません。ともかく、長期戦であることは間違いないですね。

不本意ながら、経過観察しかできないこともあるのです

ANAが、およそ8千人いる客室乗務員のうち約5千人を、一時的に休業させる方針を固めたと報じられました。

国際線の約60%、国内線の約10%で運休や減便を決めたので、労働者に対する措置も必要になったわけです。

風邪等での受診者が激減している現在、医療機関においても、雇用を守るための工夫が必要になっています。

学校の休校にともなって欠勤した従業員への賃金を補償する助成金制度は、当院でも利用する予定です。

ただ医療機関は、感染拡大防止のためにただ休んでおけば良い業種ではありません。

むしろ、感染症拡大を防ぐ役割を担うべく、ある意味では決死隊のような覚悟で仕事に臨む必要があります。

さいわい今のところ、新型コロナを強く疑う来院者はまだいませんが、嵐の前の静けさなのかもしれません。

実際に今日も、帰国者・接触者相談センターからの指示に従って、当院を受診した方がいました。

長く続く風邪症状で某病院を受診したら、診療を拒まれ、相談センターに連絡するように言われたとのこと。

そのセンターからの指示で当院を受診した方なので、まさかまたセンターに相談するわけにもいきません。

普通の風邪っぽかったので一般的な処方を行い、今後病状が悪化するなら明日他院へ行くよう指示しました。

患者さんには、医療機関A→相談センター→医療機関B(当院)→医療機関C?という、たらい回しになるのか?

医師が念のためと思っても、相談センターはそう簡単にはPCR検査のできる病院への紹介はしてくれません。

杓子定規に規定を遵守しているだけなのか、それとも検査のキャパがよほど少なく、温存しているのかも。

一般の医療機関の医師の判断だけでは、現時点ではPCR検査には回していただけないのが実情です。

やがて本格的な流行が始まったとき、一般の医師の裁量でPCR検査ができるようになるのか、ならないのか。

重症者と濃厚接触者に的を絞って検査と治療を行う日本のスタイルが、今後も続くのかもしれません。

発熱者は、いちどに一人ずつしか院内に入れない方式で診療中

新型コロナウイルスに限らず、感染症の診療においては、院内感染を防ぐことが重要です。

診察室の消毒・換気・清掃や診察時の防護・手指消毒に加え、患者の隔離やその動線にはとても気を遣います。

待合室は使わず、駐車場の自家用車の中で待っていただき、時間が来たら裏口から入ってもらいます。

その際、廊下等で他の患者とすれ違わないように十分気をつけて、隔離室等へご案内します。

例年、インフルエンザの季節だと患者数が多いため、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2966.html" target="_blank" title="動線の確保">動線の確保</a>にはアクロバティックな工夫を要します。

インフル疑い患者とインフル確定患者を、ニアミスさせるわけにはいきません。それは水痘などでも同じ。

新型コロナ診療では一段と厳しい隔離を行う必要があると考え、いまも患者動線にはとくに配慮しています。

発熱者等は、一度に1家族だけ院内に入れて診察し、終わったら駐車場の自家用車に戻っていただきます。

それから隔離室の窓を開けて換気、各部の消毒等を行い、一定時間経過後に、次の患者の院内誘導を行います。

診察室や廊下はおろか、トイレでも絶対にニアミスさせないようにするための、当院の最大限の工夫です。

幸か不幸か今は風邪や発熱の来院者が激減しているので、このように一人ずつゆっくり診療できています。

しかし今後、新型コロナ疑い患者が増えて来たら、こんなに時間のかかる診療は難しくなるかもしれません。

流行蔓延期の診療スタイルがどうなるのか想像もできませんが、その都度知恵を絞るしかないのでしょうね。

朝晩の体温を測ることが、新型コロナ早期発見の第一歩です

朝晩の検温は、いまや全国民が行っていると思いますが、当院職員も例外ではありません。

私の場合、起床時、出勤直後、午後、寝る前、の4回測っています。

では37.5度以上あったらどうするか。無症状で倦怠感もない場合は、とりあえず再検ですね。

でも何度測っても高ければ、これはちょっと大変です。

微熱があるのに診療したら、万一あとで新型コロナだと判明した場合、大問題になります。

群馬の70代の医師は、体調不良を押して診療を続けたものの、悔しいかな、コロナに倒れいまや重症。

ところが知事は、「体調不良と分かっていながら診療を続けるとは遺憾」だと、厳しく批判しています。

一方で、医師を擁護する意見も出ています。もう少し早く休診できなかったのか、事情を知りたいところです。

感染拡大を防ぐという意味では、医療機関に限らず、他人と対面で仕事する業種はすべて同じことです。

その中でも医師は、きわめて感染しやすい環境で必死に身を守りながら働く、難しい仕事をしています。

朝の検温で微熱があれば、念のためその日は臨時休診すべきかもしれません。

苦肉の策として、院長室にこもり、電話問診と処方や紹介状発行を行う診療でしのぐのも、アリでしょうか。

対面での診察や検査はできませんので、その際には、ご了承ください。

新型コロナウイルスには、1,2年のうちに国民の大半が1度は感染すると思います。そんな感染症です。

私もおそらく感染します。そのとき大事なのは、感染の早期察知と、その後の対応なのでしょう。

ただ、医者が体調が悪いぐらいですぐ休診できるのか、新型コロナ蔓延期には、考え方も変わるんでしょうね。

早く特効薬を開発して、御しやすい感染症にしてもらいたい

わが家の愛犬「花」ちゃんは、眠くなってくると両手(前脚)でソファーをバリバリ「堀り」始めます。

まるで寝床を作るかのような可愛い仕草ですが、ソファーが傷むので、ずっと見ているわけにはいきません。

このような犬の行動は、オオカミが寝床にする場所の土を掘る習性を受け継いだものだと言われています。

オオカミが土を掘って草を散らかすことから「狼藉」という言葉が生まれたと、辞書にありました。

「藉(せき)」というのは、乱れるという意味のようです。

万一、ソファーを掘って大穴を開けたりした場合には、花ちゃんは「狼藉者」ということになります。

こちらがチョッカイを出すと、花ちゃんはサッと「伏せ」の体位で身構え、臨戦態勢の形相になります。

ただし、上半身は伏せているのですが、下半身は逆に挙上して尻を突き上げ、尻尾をクネクネ動かします。

フレンチブルドッグの尻尾はとても短くお尻に引っ付いているので、思いっきり振ることができないのです。

先日花ちゃんは角膜を傷つけ、さらに角膜炎と結膜炎を併発し、2,3週間ほとんど右目が開かない状態でした。

しかしついに、獣医さんが小さな小さな逆まつげを発見。それを抜いたらたちどころに治ったのでした。

ちょっとした発見なのに、それが見つかる前と後では大違い。

新型コロナウイルス感染症も、良く効く抗ウイルス薬ができさえすれば、もはや治療しやすい疾病になるはず。

そのコペルニクス的転回を迎える日が、待ち遠しいものです。世界の英知を注ぎ込んで開発してもらいたい。

感染防御のためには、使い回さなくても良いぐらいに防護具が欲しい

防護具の不備な状態で新型コロナウイルス感染者の飛沫を浴びた場合、その診察医は濃厚接触者となります。

一定期間の自宅待機等の対象になり、診療所もしばらく休診しなければなりません。そうなると一大事です。

風邪だと思って診察した患者さんが、あとで新型コロナだとわかるケースが今後出てくることでしょう。

誰がコロナか非コロナかわからない以上、本来危機管理上は、全患者がコロナの可能性ありと考えるべきです。

インフルエンザなどの検査を行う際にはエアロゾルが発生しやすく、とくに強力な防護具が必要です。

さらに言うなら、1人の診察が終わるたびに防護具を取り替える必要があるのか、という疑問も生じます。

厳密に言えば、取り替えるべきでしょう。ただしそんなことをしていたら、すぐに防護具が足りなくなります。

厚労省はどこまでの厳密さを医師に求めているのか。やぶ蛇を承知で、厚労省に電話してみたら、その回答は、

「新型コロナ疑い患者の診察時に飛沫が防護具に付着したら、それを着たまま次の患者の診療はできません」

「防護具を消毒後に再利用する場合も、診察後はいったん脱いで、取り替えまたは消毒をしてください」

その規定はどこに書いてあるかと尋ねたら、厚労省の「新型コロナウイルスに関するQ&A」にあるとのこと。

ただし「医療機関・検査機関の方向け」の部分ではなく、「遺体等を取り扱う方へ」のところにありました。

もしかすると厚労省は、医療者のガウン取り替えの必要性を、厳密には規定したくないのかもしれません。

厳しく規定して防護具が足りなくなると診療が止まるので、そこはウヤムヤにしておきたいのです、きっと。

私が電話した時も、回答が得られるまでだいぶ待たされました。本当は答えたくなかったのでしょう。

ちなみに保留音は、アルトサックスがノリノリのジャズだったので、待たされても苦になりませんでした。

さて、これからです。ガウンが不足していることを理由にして、その慎重な使い回しは許容されるのか否か。

ガウン使い回し診察後の患者から新型コロナ感染者が出たら、メディアは使い回しを叩くかもしれません。

今後流行のピークが来たとき、感染防御においてどこまでの厳密さまでが求められるのか、心配は尽きません。

五輪はともかく、流行のピークはできるだけ遅く、それが大事です

「目に見えない敵」だと形容され、世界中を恐怖に陥れている新型コロナウイルス。

まあ、たいがいのウイルスは目に見えませんけどね。

感染力はあるのに無症状だったり軽い症状の感染者が多いという点が、この病気の目に見えない怖さです。

感染者との接触が軽ければうつらず、濃厚接触を提供する特定の場所がクラスター化している傾向があります。

しかし、某バプの事案でも疑われているように、わずかな接触でも運が悪ければ感染する危険はあるようです。

ウイルスが目に見えない以上、何かに触れた後には手洗いをすることを徹底するしかありません。

安倍首相は今日の会見で、検査・診療態勢を拡充し、感染のピークを遅くして、医療崩壊を防ぐと述べました。

ええ、ぜひそうしていただきたい。たとえそのせいで、ピークが7月や8月にずれることになっても、です。

将来的には「タチの悪い風邪」になるのかもしれませんが、にしても、一部の国では多くの死者が出ています。

病気そのものよりも、大勢が一斉に感染・発症し、医療が混乱(崩壊)したのが原因なのかもしれません。

それらの国々に比べると日本は、感染者数については疑問の余地がありますが、死亡者数は少なく感じます。

感染の急拡大が抑え込めているからこそ、医療が追いついて良い結果が出ている、と解釈することもできます。

なんにしても、世界の英知を結集して、できるだけ早くワクチンと治療薬を完成させてほしいものです。

医学的な問題どころか経済上も大問題になってきた「コロナショック」

新型コロナウイルス感染は今後ピークに向かうと想定されていますが、この数日、地震が多くていやですね。

ちょうどコロナのピーク時に首都直下地震が起きるという可能性は、はたして想定されているのでしょうか。

五輪の開催が危ぶまれる中、ギリシャでは採火式が行われ、昨夜はTVの中継で見ました。

夜7時のNHKニュースは、コロナ報道の合間に採火式の生中継が入るという、なんとも微妙な構成でした。

いずれにせよ五輪は、中止なり延期なりが決定するまでは、粛々と準備を進めていくしかありません。

トランプ米大統領は東京五輪に関して「彼らは1年延期するかもしれない」と述べました。余計なお世話です。

「彼らは賢いから自分たちで決めるだろう」と、上からな発言。まことにムカつきます。

とは言え、五輪の延期か中止が現実的になってきてくると、その経済的影響がとても心配になります。

そうでなくてもすでに、世界中で株価が暴落しています。もう誰も、楽観的なことを言えない状況です。

「より一層緊張感を持って市場の動向を注視し、必要な場合には適切に対応していく」

財務相の財務官がそう言ったところで、抽象名詞ばかりで何の具体的戦略もなく、まったく先が見えません。

こと五輪に関して、ノリノリで準備して来た日本人(安倍首相を含む)には、あまりにも大きな試練です。

安倍首相の任期を考えると、五輪を2年延期して次の首相に任せるという選択肢はありません。1年延期が限度。

延期にしろ中止にしろ、すでに日本経済はガタガタ。それなのに、流行のピークはまだこれから。

医療機関としては、できることを最大限にやるしかありませんけどね、自分たちの身を守りつつ…

新型コロナ迅速検査キットは、やはり早く実用化してもらいたい

風邪と新型コロナウイルス感染症の初期症状は、ほとんど区別がつきません。

いま、軽い風邪では安易に医療機関を受診しないようにと言われていますが、そう単純にはいかないものです。

たとえば、高熱が出たり咳がひどい方は、発症の1日目か2日目には来院されます。

とくに周囲にインフルエンザや溶連菌感染などが出ている場合、早期診断早期治療を求めるのは当然です。

鼻咽腔から検体を採取するインフルエンザの検査では常に、医師がインフルに感染するリスクがあります。

日頃私は、マスクだけの防御で検査を行いますが、それはインフルエンザには罹らない自信があるからです。

ところが患者が新型コロナウイルス感染者だったら、そうはいきません。私は濃厚接触者となってしまいます。

北海道の医師も、インフルエンザの検査を行った際に、新型コロナに感染したことがわかっています。

いま私は、マスクのほかにゴーグルも付けて診察を行っていますが、検査の際の防御策としてはまだ不十分。

手袋やヘアキャップに加えて長袖のガウンも必要なのですが、これがなかなか手に入らず、院内在庫はわずか。

そのような完全防御ができない医療機関では、今後はインフルエンザの検査自体も控えなければなりません。

なのでインフルエンザは病状と状況証拠で診断して、検査はしないままで治療薬を処方することになります。

それが本当にインフルなら良いのですが、抗インフルエンザ薬が効かなければ別の疾患を疑うことになります。

来週、血液1滴で15分で判定できる新型コロナウイルスの簡易検査キットが、発売されることになりました。

今回はまだ研究用ですが、このような迅速診断キットが、早く臨床用に使えるようになってほしいものです。

もちろん、「新型コロナではない」ことを知って安心するために安易に検査を行うべきではありません。

しかし、適切な治療を早めに開始するためには、やはり診断は早いほうが良いですね。