映画『感染列島』の大げさな描写にも、あまり驚けないという現実

「都内の新型コロナウイルス感染者が100人に近づくならば、緊急事態宣言を出して対処すべき」

日本医師会は昨日、このような見解を発表していました。で、蓋を開けてみたら今日は78人。微妙。

昨日発表されたのは13人だけ。前日が日曜だったため、検査・集計が不完全だったことが指摘されていました。

なので今日は、実質2日分の集計となって100人を楽々越えるだろうと思っていたので、少々意外でした。

しかしたとえ100人を超えても、「だって2日分だからね」という具合に過小評価される可能性がありました。

いずれにせよ、政府はまだ動かないようです。でも、「だいじょうぶだぁ」と言って良い状況なのでしょうか。

いやそれよりも、日曜日には集計が滞るということに驚きます。こんな大事な時期に、土日もないでしょうに。

今日は映画『感染列島』(2009年)を観ました。「新型ウイルス感染症」で日本中がパニックになる話です。

2009年1月公開という、新型インフルエンザのパンデミックの前に製作されたところは、なかなかの先見の明。

(以下、ネタバレあります)

『アウトブレイク』や『<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3041.html" target="_blank" title="コンテイジョン">コンテイジョン</a>』とは異なり、舞台はほとんど日本。

映画ですから、描写が激しく誇張気味です。病魔による惨状は、まるで『シンゴジラ』や『日本沈没』のノリ。

ところが、オーバーに描かれているはずの内容に、あまり驚かなかったどころか、身につまされました。

人工呼吸器が足りず患者が助けられないシーンは、いまニューヨークなどで起きている現実そのものです。

多くの遺体がずらっと並べられている様子は、スペインのニュース映像で見たばかり。

最終的な感染者数は数千万人でしたが、ちっとも驚きません。新型コロナで予測されている数と同じですから。

緊急事態宣言を出すなら、いまがラストチャンスかもしれません

志村けんさんが、新型コロナウイルス感染に倒れました。懸命の治療もむなしく、亡くなられました。

年齢や元々の肺機能や肝機能等を考慮すると、ECMOによる救命治療はかなり厳しい状況だったと想像します。

TVへの露出が多い気さくな雰囲気の方なので、その死は国民にはとても身近に感じるものでした。

新型コロナウイルス感染症が、身近な人に悲劇を生む可能性があることを、国民は思い知らされました。

自分は大丈夫だろうとタカをくくることの誤りに、多くの若者が気づかされたかもしれません。

「これから1,2週間が瀬戸際だ」と言って、安倍首相が全国一斉休校を決断したのは1カ月前のこと。

その2週間はとっくに過ぎ、東京では感染がどんどん拡大しています。もう瀬戸際は過ぎてませんか。

それでも官房長官は今日も「ぎりぎり持ちこたえている」と言うばかり。ギリギリが長すぎませんか。

「今の東京は、2週間前のニューヨークと同じ」だと、最近よく言われます。

3/11のニューヨークの感染者数が216人に対して、その2週間後の3/25の東京が212人。

ニューヨークはその後、1週間ごとに10倍以上ずつ増え、いまや6万人に達する惨状です。

一方で東京は4日で2倍程度と、増加の勢いはまだ弱いですが、いずれ指数関数的に推移すると思われます。

つまり、いったん増加し始めたら爆発的に増えていきます。そうなってからでは、もう打つ手がありません。

パンデミック対策の目的を突き詰めるなら、できるだけ人を死なせないことです。

そのために、首都圏のロックダウンは奥の手ですが、社会的・経済的には重大な副作用をもたらす劇薬です。

しかしもう躊躇している場合ではないかもしれません。病が進行してしまってからでは、劇薬も無意味です。

羽田空港第2ターミナルに国際線が就航しましたが、寂しい状況です

羽田空港は今日から、国際線の発着枠が50便ほど増えました。東京五輪をにらんで計画されてきたものです。

増枠の半分の25便が国内航空会社の配分となり、ANAが13.5便、JALが11.5便の発着枠を獲得しました。

これに伴って、東京都心を低空で飛行する<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3048.html" target="_blank" title="新しいルート">新しいルート</a>の運用が始まった事は、前にも書きました。

飛行の安全や騒音問題等で賛否の分かれるルートですが、大幅に増便するためには必須だったといいます。

また、国内線専用ターミナルだった「第2ターミナル」で、国際線施設の供用が今日から始まりました。

旧国際線ターミナルは「第3ターミナル」と改名されました。ANAの国際線は2タミと3タミを使い分けます。

出発便は路線別にターミナルが固定され、到着便は便ごとにターミナルが決まるそうです。

ANAの35路線のうち21路線が2タミに移り、それらでは国内線から国際線への乗り継ぎ時間が短縮できます。

などと、空の旅を妄想しながら書いて来ましたが、新型コロナのおかげで、もう、全部台無しです。

大勢の人で賑わうはずの新ターミナルが、ひどく閑散とした寂しい門出だったようです。

新しい2タミから飛ぶはずの国際線21路線では、13便が運休し、初日の今日飛ぶ(飛んだ)のは8便のみ。

そのうち5便が今日の日中に出発しましたが、すべての便で乗客は50人以下だったようです。寂しいですね。

初便のヒューストン行き(212席)は乗客32名、次のジャカルタ行きは36人だったとか。泣けてきます。

昼に出発したシンガポール行き(246席)の乗客はなんと、たったの4人。乗員よりも少ないんじゃないの。

熊本の人間としては、乗り継ぎが楽な羽田発着の国際線の増枠にはずっと期待していました。

成田空港には「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2897.html" target="_blank" title="陸の孤島リスク">陸の孤島リスク</a>」という爆弾もありますからね。あれにはもう、懲りました。

とは言え、いまは海外旅行どころじゃないですね。ヘタをしたら海外や帰国後に2週間軟禁されてしまいます。

東京も熊本も、結局はオーバーシュートに向かっているのか

東京のみならず熊本でも、この週末の外出自粛要請が出される事態となってしまいました。

「人混みを避け、不要不急の外出を避けるように」ということなので、私も自宅と職場を往復したのみです。

「密閉」「密集」「密接」が、イベントや集会で注意すべき「3つの『密』」ということになっています。

でも少し前までは表現が異なり、集団感染が確認された場に共通するのは、次の3つの条件とされていました。

(1)換気の悪い密閉空間

(2)多くの人が密集

(3)近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声

このうち(1)は「密閉」(2)は「密集」と短縮できても、(3)は短縮できずに中途半端でした。

ところが、誰が思いついたのか最近になって、(3)が「密接」で置き換えられました。これはナイス!

当院近隣の温浴施設がクラスターになりかけているようで、とても心配です。

クリニックの入口や予約サイト等には、現在次のように掲示しています。院内感染を防ぐためです。

・当該温浴施設を最近利用した方は、濃厚接触者の可能性があるので、当院では診療できません。

・熱や咳のある方は、院内での接触を避けるために、自家用車内でお待ちいただきます。

・当院ではPCR検査はできません。感染が疑われる方は、当院へは来院されないようにお願いします。

もっと流行が進むと、厳密に院内感染を防ぎながらの診療は、なかなか難しくなるかもしれません。

さらにオーバーシュートともなると、医療崩壊が危惧されるバタバタになるでしょう。

ちょうどよいペースで、ジワジワ流行してくれると良いのですが、そううまくはいかんでしょうね。

普通の風邪で医療機関を受診するのは、「不要不急」な外出です。

ニューヨークはいま、新型コロナウイルス感染のオーバーシュートで医療崩壊が起きています。

1台の人工呼吸器を2人で使うという、想像を絶することを行っているようですね。どんな工夫か知りたい。

日本でも、油断したらたちまち感染者数は指数関数的に増えますから、まったく他人事ではありません。

熊本県内の人工呼吸器は660台とのこと。オーバーシュートが起きたら、初日から足りなくなりそうです。

当院の来院者数は、今月はおおむね3〜4割程度減っています。

軽い風邪症状で受診するという「不要不急な外出」が控えられているようです。至極まっとうな考え方です。

新型コロナ終息後にもこの傾向が続いたとしても、たぶん気にしません。もともとそうあるべきなのです。

志村けんが、新型コロナ感染による呼吸不全で「ECMO(エクモ)」という装置を使った治療を受けています。

これは、心臓外科手術に使う人工心肺装置を簡略化して、人工肺として患者の肺のかわりを務める装置です。

装置を使っている間は、脳や心臓など重要臓器の酸素濃度を保ち、なおかつ自己肺を休ませることができます。

新型コロナウイルス感染の最重篤例では、救命のための最終手段、切り札として使うことになります。

ただし、ECMOは人工的な体外循環回路を使う関係上、強力な抗凝固治療が必要で、感染のリスクもあります。

循環動態や回路の状態を厳しく監視する必要があり、医師や看護師や臨床工学技士が張り付いて管理します。

ECMOは熊本県に19台あるそうですが、つまり、同時にECMO治療ができるのはたった19人ということです。

装置が足りなくならないように、新型コロナはとにかく流行のピークを低くすることが、なによりも重要です。

まず首都から、大都市から順に、やられていくのでしょうか

熊本県で8例目の感染者の方。当院近隣の温泉施設に長期滞在していたとのこと。これは困った。

そんなところで暮らすたぁ何事か。なんて冗談言ってる場合じゃありませんよ。クラスター化は必定かも。

世界中の大都市で、しかも先進諸国で、新型コロナウイルス感染のオーバーシュートが起きています。

大都市は、感染の要件のひとつである人の密集を満たしやすいのでしょう。

これまで踏みとどまってきた日本も、そのパンデミックからは逃れられない雲行きです。

日本の各地でクラスターが発生し、孤発例も目立ち始め、熊本でもジリジリと感染者が増えています。

今日もまた、東京都内の患者数が大幅に増えました。政府は「政府対策本部」を設置しました。

このような未曾有の災難がほかならぬ東京から始まることは、東京都のみならず日本にとって大打撃です。

しかしこれが地方都市ではなく、首都東京の一大事だからこそ国が動くという面があるかもしれません。

このことは熊本地震のときに思い知りました。

あのとき、日本中が熊本を支援してくれましたが、しかし所詮、遠く九州の地方都市の出来事でした。

熊本は過酷な惨状なのに、テレビでは普通に娯楽番組をやっていました。東日本大震災の時とは違うのです。

未明に本震が起きたあの日、出勤してみると電子カルテの端末のほとんどが床に転落して破損していました。

診療を行うためには、故障したサーバーからデータを取り出し、別のサーバーを構築しなければなりません。

藁にもすがる思いで電子カルテのサポート窓口に電話したら、なんのことはない、普通に業務をしていました。

本震後も繰り返す余震におびえていた時に、東京の担当者は平然としていました。東京は平時だったのです。

私はそのことに気づいて愕然としましたが、同時に、日本の中枢である東京が無事で良かったとも思いました。

東京がオーバーシュート一歩手前。果たしてロックダウンはあるのか。

東京都で41名の新たな感染者発生を受けて、小池都知事が緊急会見で「今週末の外出制限」を要請しました。

現状を「感染爆発(オーバーシュート)重大局面」だと表現しました。爆発一歩手前、という意味でしょうか。

新型コロナウイルスに関連しては、感染症の専門家らの口から、耳慣れないカタカナ言葉が登場しています。

これに河野太郎防衛相が「なんでカタカナ?」と、下記のごとく苦言を呈したといいます。どうでもいいけど。

「クラスターは集団感染、オーバーシュートは感染爆発、ロックダウンは都市封鎖ではダメなのか」

まず、英語の堪能な河野氏が外来語を嫌ってみせるところが、すでに嫌みな感じです。

日本語を使うか外来語を使うか、一方に統一する必要はなく、伝わりやすい方、言いやすい方でいいのでは?

「パンデミック」

日本語で「世界的大流行」と言うよりもシックリきます。しかも言いやすい。言い換える必要を感じません。

「クラスター」

「集団感染」と同義とは思いません。強いて言うなら「集団感染集団」か。もう、クラスターでいいでしょ。

「オーバーシュート」

感染者数のグラフが突き抜けて縦軸が足りない、ってイメージですかね。「感染爆発」でも悪くないけど。

「ロックダウン」

これはたしかに、「都市封鎖」とか「首都封鎖」の方がインパクトがあって危機感・有事感が伝わりますね。

いずれにしても、カタカナばかり使うなと、いちいち目くじら立てる必要なし。国民には伝わってますから。

さて、東京の爆発は収束するのか。首都封鎖はあるのか。日本全体の今後を占う意味でも、重大な局面です。

東京五輪は1年延期。来年はきっと、無事開催できますように

東京五輪は、1年程度延期されることが正式に決定しました。そりゃ、そうでしょ。

名称はそのまま「東京2020」でいくようですが、この際、「東京2020+1」なんて、どうですか。

今後、正式な開催日程を決めていくまで、調整作業は膨大でしょうね。多方面への影響も計り知れません。

明後日から始まる予定だった聖火リレーは中止です。妙な「ランタン車巡回」を始めてなくて良かった。

しかし最大の懸案は、いま加速しているというパンデミックですね。1年後に終息している保証はありません。

いやそれどころか、1年後でもまだパンデミックかもしれないとさえ思います。

「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、完全な形で開催する」

安倍首相は今日もそう語りましたが、人類が打ち勝つのは、なかなか難しいウイルスのようです。

「呼吸器系に感染して広がるウイルスで、症状が軽いのに感染力があるものが特に危ない」

そんな警鐘を鳴らした報告書が、2年前に出されています。コロナウイルスを念頭に置いたものだそうです。

いったん収束したように見えても、未感染者が多数いる限り、またすぐに流行が再燃するかもしれません。

油断すれば、いつでもオーバーシュートする危険があります。

なんども言ってきましたが、人口の6割とか8割が感染するまで、ずっと流行は続くのです。

バッハ会長も安倍首相も「五輪中止はない」と言いますが、それはまだ来年にならなければわかりません。

日本国民の8割が感染するより前に、ワクチンの完成を

新型コロナウイルス感染の「集団免疫」については、メディア側の理解が乏しいのか、報じ方が不正確です。

英国のジョンソン首相が「集団免疫戦略」を打ちだしたら批判を浴び、方針を転換した顛末がありました。

「じっと耐えて感染症の自然の成り行きに任せる」というのはたしかに、あまりにも無策で無謀でした。

しかし、成り行き任せではなく、感染拡大速度を制御しつつ集団免疫の完成を待つのなら、正しい戦略です。

なぜなら、新型コロナウイルス感染を終息させるための抑止力は、最終的には集団免疫しかないからです。

そして、人間が免疫を獲得する方法は2つ。実際にウイルスに感染するか、ワクチンを接種することです。

周囲のほとんどの人間が免疫を持っていれば、免疫を持っていない人間も、感染を免れることができます。

たとえば麻疹は、地域のワクチン接種率が95%以上であれば、集団免疫が維持され、大流行を抑止できます。

それでもときどき小流行が起きるのは、ワクチン接種率が低い集団の中で感染者が出た場合です。

新型コロナウイルス感染症も、国民の大多数が免疫を持ったら、それ以上の感染拡大は止まるでしょう。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3090.html" target="_blank" title="専門家会議">専門家会議</a>が「最終的に人口の79.9%が感染する」と言ったのは、8割が感染したら終息するという意味です。

残りの2割の未感染者は、周囲に8割も既感染者がいるので、新たな感染の機会が減るというわけです。

では、集団免疫が完成するまではどうすべきか。イタリア北部の流行例などを教訓にしなければなりません。

有効な隔離や適度な外出制限等を維持して、気を抜かず、感染拡大の防止に努めるしかありません。

医療が崩壊しない程度に感染者数を抑えつつ、日本国民の8割が感染するまで粘るということでしょうか。

できればそれよりも先に、ワクチンが完成してほしいものです。

新型コロナ大爆発のヨーロッパは、外出禁止でも犬の散歩ならOK

わが家の愛犬「花」ちゃんの散歩は、最近ではおもに(ていうかほとんど)家人が担当しています。

散歩コースは一定ではなく、花ちゃんが行きたい方向へ進む、ブラブラと行き当たりばったりの散策です。

路傍の草むらその他あらゆるものを、クンクン嗅ぎながらダラダラ歩くので、やたらと時間がかかります。

花ちゃんの散歩の最大の目的は、体力維持というより、環境臭気確認作業によるストレス発散のようです。

日頃は庭で、外を走るスクーターを追いかけて猛ダッシュを繰り返しているので、体力面の心配は要りません。

本来は、朝晩散歩したいところですが、時間的制約もあって、わが家では1日1回しか行われていません。

しかしたとえばイタリアのトリノでは、1日3回散歩させないと罰金をとられるのは有名な話。

そのイタリアでいま、新型コロナが大流行。必需品の買い物や薬局に行くこと以外の外出は禁止されています。

公園に行くのもジョギングも禁止されていますが、犬の散歩に限っては認められているようですね。

その規定を利用して、犬の散歩にかこつけた人間の散歩も多いといいます。そりゃ当然そう来るでしょう。

スペインでも同様に、外出できるのは、不可欠の仕事・食料買い出し・医療上の理由と、犬の散歩だけです。

フランスの外出禁止措置はもう少し緩いようですが、もちろん犬の散歩はOK。

これだけの危機的状況なのに、犬の散歩だけは確保しようとは、欧州諸国はなかなかのペット天国ですね。

まさかトリノでは、1日3回散歩の規則がまだ生きてたりして。