クルーズ船内告発動画を批判する人たちが、どうもうさん臭い

神戸大感染症内科の岩田健太郎教授が昨夜YouTubeに投稿した動画が、恐ろしいほどの波紋を呼んでいます。

これは岩田氏が昨日、横浜のクルーズ船に乗り込んで見た「惨状」を告発したものです。

岩田氏は日頃から、感染症を分かり易く解説する文章を書いており、オカシなことを言う人物ではありません。

彼がアップロードした動画の内容には驚くばかりですが、残念なことに、決して意外ではありませんでした。

動画は多くのメディアで取り上げられ、また多くの人々が驚きをもって各自のブログ等で拡散しつつあります。

ところが一方で、この動画に対する批判的意見もまた、一部で噴出しています。

ただ、それらは岩田氏の動画の内容を真っ向から覆すものではなく、苦し紛れの揚げ足取りにしか見えません。

学者生命を賭けた岩田氏の告発を批判する人たちに、政権に近い方々がいるのも、よけいうさん臭い。

真実は何なのか、どちらが正しいのか、双方ともに嘘があるのか、私にはまったくわかりません。

しかし、昨今の国会審議を見ていると、政治家や官僚の言い分をすんなりと信じる気にはなれません。

ソレとコレとは別だと言われそうなので、この件はこれ以上は膨らませないでおきます。

いずれにせよ、実際にクルーズ船内にいた乗客や乗員の証言が得られる日は、そう遠くないでしょう。

一部のDMATの医師は、汚染したガウンでクリーンなエリアに入る人もいた、などと証言し始めています。

船内の様子を撮影した乗客も多数いたはず。岩田氏の告発がデマか真実か、じき分かります。

ウイルス検査陰性の乗客らが、下船・帰宅後に発症しないことを祈る

クルーズ船から88人、船外では、東京3人、横浜1人、和歌山では3人の感染者が新たに判明しました。

東京の3人のうち2人(80代と50代)は重症、横浜の1人(60代)も呼吸管理中とのこと。

東京の残り1人と和歌山の1人は、すでに感染が判明している医師の子ども(20代と10代)でした。

重症者の割合が多い印象がありますが、重症だから検査した、という側面があるのでしょう。

すでに判明している感染者との濃厚接触者の中に、次々と新たな感染者が出ているようにも見えます。

しかしそれも、濃厚接触者だから検査したのであって、検査したから感染が発覚しただけの話。

つまり、検査などしていない「風邪症状」の感染者が、全国の市中に無数に存在している可能性があります。

毎日のように風邪やインフルの診療をしていますが、その中に新型コロナがやがて入り込んでくるのでしょう。

クルーズ船の乗員乗客約3,000人のうち、ウイルス検査が陰性で無症状の方は、明日から下船が始まります。

14日間船室に閉じ込められた方々が、本当に確実に隔離されていたかどうかは不明です。

もしも不確実なら、下船後さらに14日間隔離して経過を見るべきかもしれませんが、それはもう酷でしょうね。

何度も書きましたが、できるだけ早く下船させて隔離しておけば、ここまで感染は拡大しなかったはず。

これにはしかし、日本政府の問題だけでなく、外国船籍だからこその難しさもあったと、指摘されています。

にしても、このたびのクルーズ船問題では、日本は諸外国から大いに非難されています。

「(日本は)1回決まったら最後まで(方針を変えず)ずーっと行ってしまう。自分で間違ったと反省しない」

そのように言うイタリア人がいました。これは痛い。日本のお役人の体質をよくおわかりで。

「クルーズ船の対応で良かったこと悪かったこと、しっかり検証して次につなげていきたい」と菅官房長官。

過去形で言うにはまだ早いですよ。明日からの下船方法やその後のフォローも、世界中が注目してますから。

「ここはウイルス培養船だ。3日前に検査して陰性だったが、3日もここにいたら陽性に変わる」

下船を前に、そう嘆く乗客もいました。ホントにそう思います。下船する乗客乗員の今後が、とても心配です。

「帰国者・接触者相談センター」って名称が、すでにダメっぽい

言うまいと思えど今日の寒さかな( You might think today’s some fish.)。今夜、熊本には雪が積もるとか。

書くまいと思へど今日もクルーズ船。今日は99人ですか。船外でもまた、あちこちで感染者が出ています。

新型コロナウイルス感染の拡大は、とどまる様相がありません。そろそろ「国内蔓延期」も近いですね。

厚労省は今日、この感染症を疑うケースを「帰国者・接触者相談センター」に相談する目安を公表しました。

・かぜの症状や37.5度以上の発熱が4日以上続いている人や、強いだるさや息苦しさがある人

・高齢者や持病のある方は上記の症状が2日程度続く場合に、妊婦は早めに

さらに、センターに相談した場合は、センターから勧められた医療機関を受診すること、となっています。

また、発熱などの風邪症状が見られるときは、学校や会社を休むように、とのこと。

これらはあくまで「目安」ですから、現場の医師による判断も重視されるのだとは思っています。

先週、湖北省近隣の都市からの帰国者が当院を受診されたので、念のため保健所に相談してみました。

すると保健所は、「湖北省ではないのでPCR検査の対象ではない」との理由で、経過観察するようにとの返答。

いまなら保健所の対応も異なるかもしれませんが、先週はまだ強力な「湖北省縛り」があったのです。

厚労省からの指示や通知に100%従うのが自治体や保健所ですから、臨機応変な対応など存在しないようです。

もとより、やり過ぎて叩かれることを何よりも恐れるのが、お役人の体質です。

しかし、中央省庁が後手後手の対応しかできていない現状では、地方のお役人が勇気を持って当たってほしい。

今後日本中で、そして熊本でも、感染疑いケースが出始めてくることでしょう。

感染症指定医療機関でも何でもない当院は、不安な場合は相談センターに問い合わせることになります。

しかし、相談したら的確な対応があるのか、大事をとって最大限の配慮をしてくれるのか、それが心配です。

武漢からの観光客が置いて帰った時限爆弾が、各地で爆発を始めた?

クルーズ船からまた70人感染者が出たというニュースにも、もはや驚かなくなってしまいました。

全員が感染するまで船内軟禁を続けるつもりかよ、なんてのが冗談ではなくなりそうな勢いです。

400人近い米国人乗客の内の大半が、今夜から米政府のチャーター機で帰国することになりました。

香港政府も、330人を帰国させるためのチャーター機を派遣する方針とのこと。他の国々も同様の動きです。

各国政府が国内世論におされる形なのか、「汚染国からの自国民救出」を始めたということでしょう。

船内から新型コロナウイルス感染者が出たのなら、すぐ横浜で全員下船させて個別隔離すべきでした。

それなのに、隔離もせず船内で自由に飲食や観劇などが行われていた<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3045.html" target="_blank" title="あの時期">あの時期</a>が、どうしても悔やまれます。

乗客ら全員の下船・隔離等を実現するためには、移動手段や宿泊施設など、膨大で困難な作業を伴います。

なので外国人が帰国してくれることは、日本としては願ったり叶ったりですが、なんか格好良くはないですね。

本来であれば、日本政府主導で計画的に、サクサクと船内全員の下船なり隔離なりを進めて欲しかった。

そのクルーズ船以上の大問題になりつつあるのが、別ルートからの国内感染の拡大です。

もちろん、別ルートとはいえ、新型コロナウイルス感染はすべて、元をたどれば「武漢」です。

最初に報じられた日本人の国内感染者は、武漢からのツアー客を乗せた、奈良のバスの運転手でした。

しかし、1月に武漢から日本に来た観光客は、一説には1万人以上と言われます。バスなら数百台分です。

その中に感染者がいて日本各地に感染を広げ、いまや全国中に無数の感染者が分布している可能性があります。

発症して重症化した患者が念のためPCR検査を受けたら感染が発覚した、ということなのかもしれません。

感染ルート不明な感染者が、あちこちで次々に現れ始めるフェーズが、いまちょうど始まったのでしょう。

「新しいフェーズに入った」と言うけれど、大流行はやはり避けたい

新型コロナウイルス感染症は、この2,3日で「新しいフェーズに入った」と、しきりに言われています。

特段に致死率の高い病気ではないので、インフルエンザと同じように予防(手洗い等の励行)すれば、大丈夫。

という考え方を基本として、重症化しやすい高齢者らを守ろう、という方向にシフトしつつあります。

しかし、インフルエンザと大きく違う点があることを、よく認識しておかなければなりません。

(1)誰も免疫をもっていない(過去に感染して獲得した免疫もなければ、予防接種による免疫もない)

(2)初期症状はインフルよりも軽い(最初から高熱が出ることが少なく、徐々に悪化する)

(3)潜伏期がインフルよりも長く、潜伏期間中でも感染力がある(知らないうちに感染が広がりやすい)

(4)簡易検査法がない(一般の医療機関では診断ができず、状況証拠で判断するしかないが、それも困難)

(5)特効薬がない(インフルに対するタミフルのような切り札がなく、対症療法しかない)

では、新型コロナウイルスの感染規模はどうなるでしょう。もしもインフルと同等だとしたら、一大事です。

季節性インフルエンザは、毎年約1千万人が罹患し、その結果、約1万人が亡くなっています(<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1149.html" target="_blank" title="超過死亡">超過死亡</a>)。

前述の(1)〜(5)を考慮すれば、新型コロナがインフルよりも大規模な流行になる可能性すらあります。

すなわち最悪の場合、1千万人以上が新型コロナに感染し、1万人以上死亡するかもしれないということです。

軽症なので広がりやすく、でも一部で重症化しやすい新型コロナウイルス感染症って、ほんと、タチが悪い。

もはや封じ込めが無理っぽいので、早期治療に集中すべき段階ですね

「東京五輪はできるのか」

テレビの報道番組でも今日あたりから、そのような発言を少し耳にするようになりました。

日本は、悪い事を口にすれば、「そんなことを言うとホントにそうなるぞ」と批判される「言霊」の国です。

しかしいま、最悪かどうかはわかりませんが、日本がより悪い方向に向かっていることは間違いありません。

もちろんまだ諦めるには早い。最善を尽くせばなんとかなるはず。やれることは何でも迅速にやりましょう。

新型コロナウイルス感染におけるクルーズ船の乗客乗員の取り扱いは、諸外国にバカにされるほどの失策です。

発症したら濃厚接触者も含めて検査し、陽性なら隔離するという、まさに「感染待ち」作戦ですからね。

感染者を順次隔離していき、最終的に全員が感染した時点で、「よし封じ込めた」と言うつもりだったのか。 

このような、密室閉じ込め作戦の誤りに、いまごろ気がつき始めたようですが、だいぶ遅かったですね。

イヤなこと言わせてもらうなら、乗員約千人はほぼ全員、乗客も数百人レベルで感染してるような気がします。

それに加えて、日本国内のあちこちで、すでに感染が広がっていることが、やっとわかってきました。

皮肉なことに、クルーズ船の問題は相対的に重要度が下がってしまいました。

決して恐ろしい疫病ではなく、「正しく恐れる」なんて表現がよく使われますが、具体的には難しいことです。

感染者が増えれば、それに比例して重症者や死者も出てしまいます。

しかし無症状の方や軽症者があまりに多くて、感染者の把握も封じ込めも、もはや不可能かもしれません。

一般の医療機関としては、肺炎患者は迅速に高次医療機関へと搬送する、というスタンスで良いのでしょうか。

中国縛りはもはや無意味。ではどのような病状で新型コロナウイルス感染を疑えばいいのか。難しいですね。

感染経路不明の新型コロナウイルス感染者が、次々に出現し始めた

もう、クルーズ船どころの騒ぎではなくなってきました。新型コロナウイルス感染症は、予想外の展開です。

(1)神奈川の80代の女性が死亡

中国ともクルーズ船とも接点なし。1月22日に発症し、2月1日に肺炎と診断され入院。状態悪化し本日死亡。

(2)都内の70代のタクシー運転手が感染

死亡した80代女性の義理の息子。1月29日発症。乗客からうつったのか、義母からうつったのかは不明。

(3)和歌山県内の50代の男性勤務医(外科医)が感染

1月31日発症。中国人との接触なし。発症してから3日間は通常勤務。同僚の医師らにも肺炎患者が出ている。

(4)千葉県内の20代の男性会社員が感染

2月2日発症。中国人や肺炎患者との接触なし。発熱後も3日間勤務していた。

いずれも、クルーズ船やチャーター機とは別ルートの、市中や病院外来等における感染と考えられます。

当初は新型コロナウイルス感染と想定されなかったため、医療機関では通常の診療を受けたと思われます。

感染経路も不明なら、その後に感染が拡大した可能性とその経路もまた、不明です。

クルーズ船での感染拡大を毎日ずっと心配してきましたが、もう、その心配も無意味かもしれません。

われわれ医療従事者は、現時点では、来院した患者さんの中国渡航歴に目を光らせて診療する日々です。

ですが、これほどまでに国内での二次・三次感染が広がれば、中国縛りはもう余計なバイアスとなります。

かといって、肺炎患者全員を隔離したりPCR検査するわけにもいきません。難しいフェーズに入って来ました。

感染症対策が後手後手なのはしょうがないとして、今後どうするかです

クルーズ船からまた、新たに39人の感染者が判明しました。

だからずっと言ってるように、一刻も早く全員を順次船から下ろし、別の施設で個別隔離しなくちゃ。

幸運にもまだ感染していない人を(そんな人がいるのかどうか分かりませんが)、確実に保護するためです。

検疫官にも感染者が出ました。これは今後の医療従事者の感染を予感させる、ショックな出来事です。

新型コロナウイルス感染者は、感染症指定医療機関における感染症病床に入院させる規定になっています。

しかし緊急その他やむを得ない場合、感染症指定医療機関以外の医療機関に入院させることが可能です。

厚労省はここに来て、その例外規定を強調するような通知を出しています。感染症病床が足りないからです。

となると、感染症指定医療機関以外の医療機関で医療従事者が感染しないか、それがいちばん心配になります。

件の検疫官は、マスクと手袋を付け、防護服は着用せず、乗客から質問票の回収作業等を行っていたとのこと。

ウイルスに感染したのは、マスクや手袋の外し方に問題があったんじゃないかと言う人もいます。

しかし検疫官に不手際があったとしても、それを誘発したのは膨大な仕事量に伴う過労ではなかったのか。

検疫作業の際に防護服を着用していなかったことが、今となっては悔やまれます。

その当時は、防護服など必要ないと、感染力を過小評価したということなのでしょう。厚労省の判断ミスです。

そんなことだから、感染者が出てもしばらくは乗客を船室で個別隔離せず、船内で自由に交流させたのです。

二次感染者が出てうろたえる、ド素人のような初期対応をした挙げ句が、いまの感染者数なのです。

まあ済んでしまったことは後日みっちり検証するとして、大事なのは今後です。

検査して下船なんてことを言ってたら、キリがないですよ。一刻も早く全員下船させ、地上で個別隔離です。

もちろん隔離施設は、前にも書いた「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3050.html" target="_blank" title="選手村">選手村</a>」です。もう選択の余地も猶予もありません。

『パラサイト』について、ネタバレしないように書くけど、たぶん無理

韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が、英語以外の映画では史上初の、アカデミー作品賞を受賞しました。

脚本賞も監督賞もとったのでパラサイトの「完勝」ですね。というわけで遅ればせながら今日、観てきました。

<ご注意:まだこの映画を観ていない方へ>

ネタバレには注意して書きますが、わずかなネタバレでもイヤな方は、これ以上読み進まないでください。

さすが、並み居る強敵を抑えただけのことはあります。高い前評判を前提として観ても、面白かったですね。

ひとことで言うなら、「韓国の格差社会の悲劇を描いた社会派スリラー(ちょっとコメディー)」でしょうか。

「衝撃の展開は誰も予想できない」と言われる本作品。少し予想しながら観ましたが、役に立ちませんでした。

根っからの極悪人は登場しません。そこが救われるところ。全登場人物が憎めない。むしろある意味被害者。

キャラクターがかぶらず、観ていてわかり易い。ただし、名前を混同しそうになるのが、韓国映画の難点です。

いろんな伏線が心地よく回収されていきますが、2度以上効果的に使い回す伏線が、なかなか上手いですね。

詐欺映画からスリラーへと、途中ジャッキー・チェンばりのドタバタにもヒヤヒヤしつつ、結末へ向かいます。

最後の方で何人か死傷しますが、これが日本映画なら、最終的に命が助かる人間が異なるような気がします。

エンディングもなかなかニクい。これがハリウッド映画なら、多分あと10秒早く終わってますよね。

クルーズ船の方々は全員感染者、と考えるぐらいの対処が必要では?

「新型コロナウイルス感染」の話題ばかりを書きたくはないのですが、何しろ毎日新事実が出てきます。

クルーズ船の乗客乗員から、また新たに65人の感染者が確認されました。これはまた、急に増えましたね。

おそらく、たった一人の男性(香港在住の80歳の男性)から、合計135人まで感染者が広がったわけです。

二次感染か三次感染か、はたまた四次感染か、それはもう、どうでもいいことです。

最終的に、乗客乗員全員が感染するんじゃないかと、そんな突拍子もない予想にも、現実味が出てきます。

船内に残る約3,600人は、あと9日間は船室で隔離される予定です。ホントに厳しい居住環境が続きます。

今日の65人との濃厚接触者や、発熱などの発症者は、今後ウイルス検査が行われるでしょう。

それ以外の、期日まで無症状でしのいだ人たちには、下船前に全員検査が行われることになりそうです。

その下船前検査によってウイルス陽性となれば、その本人は病院に送られます。

また、そのウイルス陽性者との濃厚接触者は、たとえウイルス陰性でも、隔離(経過観察)が必要です。

感染初期には、検査で「偽陰性」となる場合があるからです。

何日も同じ船室で過ごせば、中から誰か一人でも感染者が出たら、同室の全員が感染していることでしょう。

ここまできたらもう、乗客乗員全員がすでに感染者と考えて、先手を打って対処すべきではないですか。

たとえウイルス検査が陰性でも、今後しばらくは隔離、またはそれに近い管理が必要です。

船内の方々には酷な話です。最大限の心身のケアが必要なことは、言うまでもありません。

なにしろ人数が多いですから、いまのうちから少しずつ、隔離施設への移動を始めた方がいいと思いますけど。