天皇皇后両陛下は今夜、天皇陛下の即位をお祝いする国民祭典に出席され、お言葉を述べられました。
「先に即位礼正殿の儀を行い、即位を内外に宣明しました」
これが冒頭の文です。天皇陛下って主語がないんだなあ、と思いながら、続きを聞きました。
「そして今日、ここに集まられたみなさんからお祝いいただくことに感謝します」
これにも主語がない。結局、全部で10の文からなるお言葉の文章には、1つも主語がありませんでした。
比較のため、安倍首相の祝辞も聞き直してみましたが、これも意外と主語が少ないですね。
冒頭の一文の主語は天皇で、国民を主語にした文が3つ、受動文1つ、残る4文は主語なしでした。
こういった、国民を代表するような立場の挨拶では、「私は」のような表現は避けるのかもしれません。
しかし、天皇陛下がご自分のことを一人称で言わなかったのは、また別の理由があるような気がします。
天皇は「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」であると、日本国憲法第一条に謳われています。
公的な場での天皇のお言葉は、象徴としての発言であるため、一人称がそぐわないのかもしれません。
「私」を封印して生きていく天皇の孤高を貫く厳しさを、今回のお言葉を聞いてあらためて感じたのでした。