乳児のインフルワクチン

インフルエンザワクチンは、規定上は0歳6カ月から接種を受けることができます。

しかし当院ではこれまで、原則として1歳に近い月齢の乳児にのみ、限定的に接種を行ってきました。

0歳児への接種にあまり積極的ではなかった理由は、乳児ではインフルワクチンの効果が弱いからです。

生ワクチンは弱毒化したウイルスであり、体内で増殖して免疫系を刺激するので、強い免疫が獲得できます。

一方で不活化ワクチンは不活化したウイルスなので体内で増殖せず、誘導される免疫も弱いものとなります。

それでも、ウイルス全体を不活化精製した「全粒子ワクチン」はまだ、ある程度の免疫反応を引き起こします。

しかし、ウイルスの一部のみを精製した「スプリットワクチン」では、体内での免疫反応はごく弱いものです。

インフルエンザワクチンはかつて全粒子ワクチンでしたが、発熱などの副反応が多く、嫌われました。

その副反応を減らすべく、厚労省はスプリットワクチンへと方針転換し、現在に至ります。

当時の開発者によれば、「副反応がなければ効き目などはどうでもいい」というのが国の考え方だったとか。

残念ながらスプリットワクチンには、すでに免疫獲得済の抗体産生細胞を刺激する程度の効果しかありません。

つまり現在のインフルワクチンは、過去にインフル感染歴がなければ、ほとんど無効だということです。

そのような理由で、乳児への接種にはあまり積極的ではありませんでしたが、今シーズンは考えを変えました。

0歳6カ月以降であれば、すべての希望者に、原則として制限無く接種を行っています。

なぜなら、今回接種しておけば来シーズンの接種が2回目となり、多少でも効果が増えると思うからです。

いずれにせよ乳児への接種効果は弱いので、そのほかの家族がしっかりと予防することが肝要です。

当院では、家族全員がワクチンを接種することが、乳児へのインフルワクチン接種の条件となります。