台風19号がもたらした災害を「未曾有」だというなら、その言葉の意味を考え直す必要がありそうです。
「未(いま)だ曽(かつ)て有らず」=「今までに一度も無かったこと」というのは、あくまで狭義。
実際には、「滅多に起きない」とか「自分では経験したことがない」ぐらいの意味でしかありません。
台風被害について、「まずまずに収まった」と二階・自民党幹事長が発言したことが、激しく非難されました。
被害者への配慮のなさや無神経な態度は責められるべきですが、その発言内容自体は誤りではありません。
例えば千曲川の氾濫は、ハザードマップに示されていた洪水範囲よりも狭く、まったく想定内の被害でした。
そのマップも、改訂版が2カ月前に、浸水想定エリアの全戸に配布されており、準備万端の状態でした。
要は、専門家や自治体等が想定する被害を、住民がどれほど現実的に捉えるか、という点につきます。
きちんと科学的に検討されていても、受け取る側が想定をないがしろにしたのでは、意味がありません。
今回の台風19号の規模や風雨被害は、1000年に1度のレベルなどといわれました。
しかし1000年に1度というのは、1000年間隔で起きるという意味ではありません。
毎年1000分の1の確率で、そのような大災害が起きるということであり、今年も来年も確率は同じです。
確率でいうなら、今後30年以内に70%の確率で起きるとされている、未曾有の天災がありますね。
これは政府の地震調査委員会による「首都直下地震」の発生確率ですが、とんでもない大きな数値です。
ところが不思議なことに、住民が大挙して東京から逃げ出すような気配がありません。
日本人は、自分で想定した結果が不本意なら軽視して、算出した確率を客観視できないようです。