「全日空機が1万メートルを急降下 重大インシデント」
米国から成田に向かっていたANA機(171便)のトラブルが、このような見出しで報じられました。
これだけ聞くと、エンジントラブルかなにかで1万メートルも急降下したのかと、ドキドキしてしまいます。
きりもみ回転しながら急降下、あわや墜落か、機内大パニック、けが人多数、なんて事態まで想像します。
ですが実際にはそうではなく、与圧システムが故障したので緊急で降下しましたよと、それだけの話です。
重大インシデントは空調の故障であって、降下は被害を最小限にするための回避操作にすぎません。
ただし高度1万3千メートルで与圧システムが故障したら、気圧低下のために乗客乗員の身に危険が及びます。
気圧に比例して酸素分圧も下がるからです。一定以下の低酸素になれば、人は意識を失います。
さいわい今回のANA機では、機内の急減圧はなかったため、酸素マスクは使わなくて済んだようです。
降下による気圧の復帰も早かったのでしょう。それも機長の迅速な判断と的確な操縦操作あってのこと。
だからこそ冒頭のような見出しは、本質を見誤ったものです。いや、故意かもしれませんね、あの表現は。
誤解を招く覚悟でキャッチーな見出しを盛るメディアのあざとさは、今に始まった事ではありません。
それがバラエティー番組ならまだしも、報道番組やニュース記事なら、節度をもって正確に報じてもらいたい。
NHKの見出し「全日空機 飛行中に客室内の気圧下がるトラブル」はその点、正確。インパクトに欠けるけど。