術後せん妄による冤罪

患者にわいせつ行為をしたとして逮捕・起訴されていた外科医に、東京地裁は昨日、無罪を言い渡しました。

その理由は2つ。

(1)被害を訴えていた女性は麻酔覚醒時のせん妄の状態にあり、証言の信用性に疑問がある

(2)科捜研のDNA鑑定とアミラーゼ鑑定の信用性に疑問がある

女性が何を述べようと、科捜研の鑑定がどうであれ、真実を知っているのは男性外科医ただ1人です。

検察や弁護側や、裁判官も鑑定人もメディアも私も、実際のところ真実は知りません。

ですが、報道された情報から考察した私の個人的意見を言わせていただくなら、やはり冤罪だと思います。

少なくとも、さまざまな疑問点が出てきた状況では、「疑わしきは被告人の利益に」であるべきです。

今回の一件でタチの悪いことは、女性が幻覚を元に証言していた可能性があるということでしょう。

女性は自分の「記憶」を頼りに、迫真性のある出来事を具体的に述べるので、どうしても説得力があります。

さらに、科捜研の鑑定によって、その女性の証言が「立証」されたのでした。

ところがその科捜研の鑑定には、大事な証拠を破棄するなどの不自然な点や疑問点が見つかりました。

それに対して弁護側鑑定人らが呈した疑問に、裁判所が珍しく(?)耳を貸した形です。

幻覚を元に証言されることの恐ろしさに加えて、捜査機関が証拠をねじ曲げる怖さも感じる事件でした。

男性医師に落ち度があったとすれば、せん妄状態の患者を、1人で診察したという点につきます。

女性は判決に対して憤っているとのこと。彼女にとって男性医師のわいせつ行為は「事実」だからでしょう。

せん妄対策は医師のためだけでなく、患者にとっても重要なことです。