「アロマテラピー」と「アロマセラピー」を、放送用語として両者同等に推奨すると、NHKが決定しました。
「放送用語委員会」の議論に異を唱えるわけではありませんが、できれば「テラピー」優位としてほしかった。
「テラピー」はフランス語読みであり、「セラピー」は英語だと、Wikipediaなどには書かれています。
しかし “therapy” という英語だって、その発音が「セラピー」と「テラピー」のどちらに近いかは微妙です。
業界団体はどちらを使ってるのか、「日本アロマ環境協会」のサイトを見たら、表記には混乱がありました。
「アロマテラピー」と書いておきながら、それを行う資格者を「アロマセラピスト」としているからです。
「セラピー」や「セラピスト」という外来語は、「アロマテラピー」よりも前から存在し、定着しています。
「アロマテラピスト」と言うべきところが、「セラピスト」に引きずられてしまうのでしょう。
もしかすると将来は、「アロマセラピー」が優位になっていくのかもしれません。
医者の世界には「ムントテラピー」という言葉があります。実際には、その短縮形の「ムンテラ」を使います。
「ムント(Mund)」はドイツ語で「口(くち)」の意味。「テラピー」は、この場合ドイツ語読みです。
本来は対話による治療を意味するのかもしれませんが、日本では通常、術前説明のような場面を指します。
今風に言えば「インフォームドコンセント」ですが、その事務的な言葉よりも、私は「ムンテラ」が好きです。
勤務医時代、手術の前には、病状や術式と起こりうる合併症について、患者と家族に詳しくムンテラしました。
心臓の手術は命に関わる一大事なので、極めて詳細かつ厳しい説明を行うのです。
私はそのとき、いつもふと思い出す音楽がありました。バッハの教会カンタータ147番(のコラール)です。
ドイツ語で、 “Herz und Mund und Tat und Leben.” (心と口と行いと命で)という名がついた曲です。
心臓に対して、ムンテラして、手術を行い、命を助ける、そのようなイメージと重なると私は思ったのです。