放射能汚染警報の吹鳴

東海村の核燃料サイクル工学研究所で、放射性物質が漏れる事故が起きました。

「東海村で放射性物質漏れ 作業員9人中、4人影響なし」

こんな見出しの報道に対して、「5人被爆となぜ書かない」などの批判を目にします。

たぶん「4人影響なし」は、メディア独自の表現ではなく、日本原子力研究開発機構によるものでしょう。

「プルトニウム燃料第二開発室α線用空気モニタ警報の吹鳴について」

というタイトルのプレスリリースが、同機構から出ました。「吹鳴」という言葉が、いかにもお役所っぽい。

よく読むと、警報が鳴る(吹鳴する)よりも前に、汚染検査によって汚染が検出されていたようです。

なのに「汚染検出について」とはせずに、「警報の吹鳴について」という間接的なタイトルにしたのはなぜか。

同機構は続報として、「9人の皮膚汚染及び内部被曝なし」と言ってますが、安心して良いのでしょうか。

福島の事故の時、東電も政府も、あの緊急事態を一部隠蔽もしくは矮小化したコメントを繰り返していました。

最近で言うなら、例の厚労省の毎月勤労統計調査問題と、その後の第三者委員会の顛末も同様です。

あとでバレるかもしれないことでも、とりあえず隠す。追求されたら、小出しに白状する。

日本の政府や官僚や大企業には、隠蔽体質が染みついているようです。

国民に真実を知らせて混乱を招くよりは、何も知らせない方がマシとでも考えているのでしょうか。

責任回避というよりも、本気で罪悪感が無いのかもしれません。

成熟した後は衰える?

iPhoneが中国で売れなくなり、Appleの売り上げが落ち込んでいます。

売れ行き不振の原因は米中の貿易摩擦だと前に書きましたが、それ以前に、スマホ自体が売れないようです。

「かつてと比べて顧客が古いiPhoneを長く保有し買い替えなくなった」と、クックCEOも認めています。

iPhoneの顧客の買い換えサイクルが長くなったというのなら、それはまさに私にも当てはまります。

毎年新しいiPhoneを買い続けてきた私ですら、しかもApple信者でありながら、昨年は買いませんでした。

2年前のiPhone Xは、全面有機ELスクリーンと顔認証 (Face ID)が初めて搭載されたので買いました。

しかし昨年の「iPhone XS」や「iPhone XS Max」は、画期的な新製品とは言いがたいものでした。

いや、画期的ではなくても毎年買い換えてきた私ですが、そろそろ冷静に、吟味して買いたくなったのです。

私ですらこれですから、一般の方が買い換えるサイクルは、もっと長くなる可能性があります。

これはスマホが世の中に一通り供給され、一定の地位を得て成熟期に入ったからであり、仕方のないことです。

では、スマホの次には何がスマホのように普及するのでしょう。

世界中の人々が購入し、短いサイクルで買い換える商品って、今後現れるのでしょうか。想像がつきません。

ウォッチもスピーカーも車も、買い換え需要を生み続ける商品になるとは思えません。

スマホだって、それが単なる携帯電話なら、本来はたびたび買い換えるモノではなかったはず。

世の中のIT化を推進するためのキー・デバイスとして機能したからこそ、これほど普及したわけでしょう。

はたして、次なるキー・デバイスは何になるのでしょう。そして誰が発明するのか。

科学技術は加速度的に進歩しています。次の10年で、その画期的なモノが誕生することを期待しています。

幻のゾフルーザ顆粒

体感的には峠を越えたように感じるインフルエンザの流行ですが、地域によってはまだ、これからでしょう。

先日来、そして今日のNHKでも盛んに報じているのは、抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」の耐性問題。

数日前にも書いた通り、他の薬よりも耐性ウイルスが生じやすいのが問題だといわれています。

抗インフルエンザ薬は「耐性ウイルスが出ることを考えて慎重に選択すべき」だと専門家は言います。

でも「慎重に選択」せよと言われても困ります。具体的な指針を、学会には打ち出してもらいたい。

私が処方する際は、薬の特徴を簡単に説明して患者さんに選んでもらうのですが、次のような回答になります。

(1)新薬をお願いします

(2)従来の薬でお願いします

(3)先生にお任せします

ゾフルーザの処方に年齢制限はなく、体重さえ10キロ以上あれば10ミリ錠を1錠処方できます。

12歳未満の場合、20キロ以上なら20ミリ錠を1錠、40キロ以上なら20ミリ錠を2錠です。

でも10キロ台と言えば1〜6歳児の体重。錠剤が飲める子はあまりいません。

実はゾフルーザには、「顆粒2%分包」という製剤があります。1包=10ミリ錠1錠に相当する成分量です。

体重10キロ台の、錠剤の飲めないお子さんにも使える便利な剤形、に思えます。

ところがその顆粒は、20キロ以上のお子さんに限定して販売が承認されてしまいました。

つまり、20キロ以上なら錠剤か顆粒を選べますが、10キロ台だと錠剤しか処方できないのです。

そんなバカな。顆粒1包は10ミリ錠1錠と同じ用量なんだから、10キロ台の子どもには顆粒を処方すればいい。

・・・という考えの医者が出現する可能性を考慮して、メーカーは結局、顆粒の発売を延期してしまいました。

「適応外使用」のリスクを回避するためだそうですが、どうしてそんな杓子定規なことしますかねぇ。

リレーアタック対策

自動車のスマートキーの仕組みを悪用した、「リレーアタック」という手口の盗難事件が報じられてますね。

車から出ている微弱電波を増幅して中継し、自宅内のスマートキーから解錠信号を出させるようです。

あるいは、スマートキーからの微弱電波を増幅して車に届ける手法だと解説しているサイトもあります。

いずれにせよ、車から離れた場所にあるキーからの信号が利用されて、車が盗まれるわけです。

それは自宅だけでなく、スタバや銀行やクリニックの駐車場でも、同じことでしょう。

リレーアタックを防ぐためとして、昨日のNHKニュースが提案していた方法はしかし、私には非現実的です。

スマートキーを電波を遮断するポーチに入れるか、金属の缶に入れるか、アルミホイルで包め、だと。

通販サイトを見ると、いろんなデザインの専用ポーチが販売されていますが、私は買おうとは思いません。

だって、いちいちポーチに入れるのって面倒でしょう。まして金属缶やアルミホイルなど論外。

私が車で通勤するときには、スマートキーをいつも同じカバンの同じ場所の奥深くに格納しています。

実はこのカバンには、自宅とクリニックのカギが、伸縮するワイヤーで固定されています。

つまり、車のキーと自宅やクリニックのカギはいつも同じカバンの中にあり、切り離せないのです。

これは私が車で職場に着いた時に、「あ、カギ持ってくるの忘れた!」と慌てる事態を避けるための工夫です。

もちろん、過去に何度もカギを忘れて痛い目に遭ったあげくの、カギ忘れ防止策の最終形です。

通勤カバンは、車のキーと自宅と職場のカギの定位置であり、キーをカバンから出したくはありません。

なので、キーをカバンに入れたまま、自宅では電波を遮断することができないのかと、いま思案中なのです。

書斎に電磁シールド用のケージを置き、カバンはいつもその中に置く方法などを、真面目に検討しています。

不要FAX止まらず

迷惑メールとは限りませんが、不要なメールを毎日多数受信します。少なく見積もっても、数十通以上。

ときどき送信元サイトにアクセスして「配信停止」の手続きをするのですが、イタチごっこです。

ていうか今、「イタチごっこ」という言葉について掘り下げたい気分になりました。でも、今日はこらえます。

「メール」と書けば今は「電子メール」を指しますが、「ダイレクトメール」だとまだ、郵便物でしょうか。

郵送や宅配によって書類等が届く形式のダイレクトメールは、以前に比べてずいぶん減りました。

メールに比べて圧倒的に経費のかかるダイレクトメールは、その分余計に、お金をかけたものが目立ちますね。

意外と多いのが、不要FAXです。これもほぼ毎日受け取ります。

昨日受取ったものには「ファクシミリを拝借いたしますことをご容赦ください」と冒頭に書かれていました。

これはなかなか丁寧というか古風。どうやらホームページ作製業者のようですが、そんなIT企業がなぜFAX?

そうか。ホームページを立ち上げてない事業所がターゲットなんでしょうね。だからFAX。納得。

こんなのをいちいち印刷してたら紙代やトナー代のムダになるところですが、印刷なんてしませんよね。

複合機で受信し、LAN経由で診察室のMacで見て、必要なものだけダウンロードして、残りは削除します。

いずれにせよ、FAXを紙に印刷することは、返信が必要なフォームの場合などを除けばほとんどありません。

紹介先の病院や検査センターからの重要な連絡FAXに紛れて、さまざまな業者からFAXが届きます。

当院のことをご心配なのでしょうか、経営を指南してさしあげますという親切なFAXもたびたび届きます。

高価買取しますというFAXもよく来ますが、何度言われても、うちにマイクロバスなんてありませんから。

「次回からFAX不要」というチェック欄に記入して返信すれば、その手のFAXはたぶん、止まるのでしょう。

ですがこちらの電話代を使うのもシャクなので返信しておらず、したがって不要FAXは何度も来るのです。

統計不信

厚労省の毎月勤労統計のみならず、他省庁の基幹統計でも、その4割で誤りが見つかったとのこと。

このような重要な統計は政策を左右する情報なのに、それを官僚が都合良く操作したのではどうしようもない。

マスコミはこの件を厳しく非難していますが、でも私に言わせれば、同じ穴のムジナです。

たとえば報道番組でよく使われる「街の人に聞いた結果」には、結論を誘導するインチキが目立つからです。

勤労統計が3分の1の抽出で行われたのが問題なら、少人数の意見を国民世論のように報じるのはどうなのか。

少なくともテロップで、「個人の意見です」ぐらいは表示しておくべきでしょう。

街角アンケートの集計程度では、国民全体の意見を推計する結論は出せないと言いたいのです。

それとは反対に、たった1つのケースでありながら医学的にはとても有意義な報道を、最近目にしました。

インフルエンザに罹った子どもの「異常行動」についてNHKが大きく取り上げていた、ある家族の事例です。

その母親がジェスチャー付きで、時系列を明確にして、7歳の子どもの病状経過について語るには、

(1)発熱後に、天井に向かって叫び続け、壁に向かって走り出した

(2)病院を受診して、インフルエンザと診断された

(3)抗インフルエンザ薬の処方を受けて下熱し、異常行動は消えた

ここで重要なのは、異常行動が治療よりも前であったということです。この前後関係はきわめて重要です。

少なくともこのケースでは、異常行動と抗インフルエンザ薬とは無関係であることが証明できるからです。

過去の多くの事例で「熱→薬→異常行動」の順番だったために、薬が濡れ衣を着せらてきた経緯があります。

このたびNHKがわかり易い反例を報じたことは、メディアが真実を認めつつあることの証かもしれません。

ゾフルーザ耐性出現

インフルエンザが全国的に大流行しています。

今年第3週(1/14-20)の定点当たり報告数は、全国の45都府県で第2週よりも増加していたようです。

増加が45都府県ということは、例外的に減少していたところが2つあるわけで、それが北海道と熊本県でした。

とはいえ、熊本県の報告数56.3は、前の週の58.8からの減少幅も小さく、まだ全国第16位の流行レベルです。

そのインフル治療薬としていま話題の「ゾフルーザ」ですが、耐性ウイルスが検出されたと報告されました。

A/H3N2亜型(いわゆるA香港型)の、解析した21株のうち2株に耐性変異を認めたので、その率は9.5%。

その21株の中に、タミフルなど従来の抗インフルエンザ薬の耐性株は無かったとのこと。

通常であれば、21例中の2例などという数値は、私なら模様眺めで済ませるような統計学的データです。

しかし、ゾフルーザに耐性ウイルスが生じやすいことは、臨床試験の段階からわかっていたことでした。

そして試験での耐性変異率は、370例中の36例(9.7%)でした。これが今回の9.5%と妙に符合するのです。

となると気になるのは、12歳未満に限ると、臨床試験での耐性ウイルス検出率が23.4%だったという点です。

さらに、耐性ウイルスが出た場合は、無治療の場合よりもむしろ治りが悪かったという結果も出ています。

ゾフルーザを実際に使ってみて、とてもよく効いたケースが多いですが、それほどでもない場合もありました。

これまでメディアはゾフルーザを持ち上げる一方でしたが、そろそろ少し反省する時期かもしれませんね。

その点もしっかり報じていただければ、処方する側としても助かります。

集団免疫の社会実験

麻疹が三重県内の宗教団体で集団発生していると書いた先日の「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2663.html" target="_blank" title="未確認情報">未確認情報</a>」は、ガセではありませんでした。

その団体のサイトに「お詫び」とする文章が2日前に掲載され、新聞等での「実名」報道も始まりました。

お詫び文には、そのコミュニティの考えとして、

「医薬に依存しない健康や、自然農法による安全・安心な食を基にした信仰生活を重んじております」

とあり、ワクチン未接種の信徒がいることを認めています。たぶん接種率はかなり低いと思われます。

「感染リスクの高い疾病のワクチン接種について(略)皆様にご心配をおかけしないよう対処してまいります」

とも述べていることから、麻疹ワクチンは例外的に、今後接種を行うのかもしれません。だといいのですが。

麻疹の流行を阻止するためには、地域のワクチン接種率95%以上を維持する必要があるとされています。

この接種率があれば、ワクチン未接種者の感染をも防げるという「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1962.html" target="_blank" title="集団免疫">集団免疫</a>」の考え方です。

その反対に、未接種者が多いと思われる例の宗教団体においては、集団免疫も作用しなかったというわけです。

さらに、一般社会の接種率も不十分であったために、感染が外部にも広がったのでしょう。

私はインフルエンザも同じ事だと思います。

日本中で十分に高いワクチン接種率が達成できれば、流行はほとんど阻止できるのじゃなかろうかと。

この時期のインフル流行による膨大な医療費やその他の社会的損失を考えると、ワクチン代など安いものです。

日本では1960年代から約30年間、学童へのインフルエンザワクチンの<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1149.html" target="_blank" title="集団接種">集団接種</a>が行われました。

効果不明のため中止されましたが、後の解析で、毎年約4万人の死亡を防止できていたことが判明しました。

集団接種の中止後、高齢者の死亡が増えてしまったのは、集団免疫の働きが低下したことが原因なのです。

いま、ある地域でインフルエンザワクチンを住民の95%以上に接種したら、どういう結果になるでしょうね。

そのような社会実験をぜひ、行ってほしいものです。

インフルによる悲劇

淡路市の養護老人ホームでインフルエンザの集団感染が発生し、入所者7人が亡くなりました。

感染拡大を防ぐための、入所者全員へのタミフルの予防投与が行われなかったことが、問題視されています。

いたましい出来事ですが、私はこの件には違和感があります。

日頃はタミフルを使いすぎだと非難するメディアが、今度はタミフルの予防投与を支持する論調だからです。

インフルエンザに感染していた37歳の女性が昨日、駅で線路に転落して電車にはねられて死亡しました。

事故の3日前から体調不良を訴えながらも病院を受診せず、無理して職場へ出勤中の方でした。

たとえ若い方でも、たぶんインフルエンザによって、このような悲劇が起きるのです。

どのような方に対しても早期診断・早期治療を行った方が、患者個人のためには有益と言えるかもしれません。

小学4年生の男児が、インフルエンザ脳症で亡くなりました。

男児の基礎疾患や予防接種歴などの詳細は不明ですが、病状経過と治療歴が気になります。

少なくとも、インフルエンザ脳症を起こす可能性を減らすには、ワクチンと早期治療に尽きると思います。

インフルエンザは、薬を飲まなくても十分に栄養と休養をとれば治ると、日頃まことしやかに言われます。

その理屈は正しいかもしれませんが、自己中心的とも言えます。周囲への感染拡大を考慮してないからです。

学校や職場や地域社会への感染拡大を防ぐためには、十分な期間、周囲から隔離されている必要があります。

抗インフルエンザ薬で治療して体内のウイルス量を早く減らすことは、その隔離期間を減らす効果があります。

インフルエンザによる悲劇が報じられるたびに、やはり予防接種と早期治療が重要に思えてなりません。

当番医と当院の関係

日祝診療をしている当院と同様に、休日当番医でももちろん、インフルエンザ患者の診療で大忙しのようです。

医師向けのサイトに最近、多数の患者さんの診療を断らざるを得ない当番医の現状が、投稿されていました。

年間を通して当院には、当番医に断られたのでそちらを受診したい、と訴える方がたびたび来院されます。

時間外診療はあまり増やしたくはないのですが、当番医に断られたという患者さんはなるべく受け入れます。

医療機関2カ所に断られたのでは、あまりにも申し訳なく思うからです。

でも念のため申し上げておくと、当番医も当院も、標榜している診療終了時刻は同じ、午後5時です。

当院は開院当初の数年間、求められれば夜遅くまで際限なく診療を行ってきた経緯があります。

ある程度時間外を制限している今でも、当番医を断られた方にとっては、当院が頼みの綱なのかもしれません。

ただ、当番医に断られて当院に流れてくる患者さんが次々に現れることを、私は想定していませんでした。

では、当番医は早々と受付を打ち切ってけしからん、と言えるのかといえば、そうでもなさそうです。

この時期は多くの当番医が、定刻を大幅にオーバーして診療しているとの話を聞いたからです。

いくら何でも限界があるので、それぞれの先生の判断で、診療予約の打ち切りを決断されているのでしょう。

なんにせよ、この時期のインフル受診は過剰です。とくに早期検査や念のための検査が多すぎます。

この件はとても重要な問題なので、後日あらためて考察してみたいと思います。