医師は例外的に働け

厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」は、もう15回ほど開催され、内容が具体化してきました。

検討されているポイントをまとめると、

(1)時間外労働の上限は、一般労働者の年間720時間に対して、医師は960時間(月80時間)とする

(2)医師不足の地域や診療科などでは、例外として、年間1920時間(月160時間)まで認める

(3)連続勤務時間は28時間以内とする

(4)勤務間のインターバルは9時間以上とする

このうち(1、2)は、現状を追認して非道な「お墨付き」を出しただけの話。驚くに値しません。

一方で(3、4)は、中規模クラスの病院の外科では、とても実現できるとは思えません。

たとえば熊本市民病院時代。私が所属していた小児心臓外科のスタッフは、部長・医長・医員の3名でした。

この3人が全ての患者の主治医となり、手術に携わり、うち1人が泊まり込んで術後管理にあたっていました。

泊まり込んだ医師でも、その翌日には朝から回診・手術・術後管理というスケジュールが待っています。

連続勤務の上限が28時間となった場合、前の晩に泊まった医師は翌日の手術に参加できなくなります。

ところが心臓手術は2人ではできません。となると、2日連続で手術の日程を組むことが不可能となります。

もしも緊急手術を行うことでもあれば、その翌日に予定されていた手術はキャンセルしなければなりません。

毎日手術したり、ときには緊急手術もできるためには、外科チームの要員はどうしても4人以上必要です。

あるいは、術後管理を外科医以外の担当医が行うようなチーム医療体制も、本来は必須なのです。

このような改革は、多くの病院で、経済的観点や医師不足のために、実現性が乏しいものです。

ともかく、医師の健康確保よりも医療サービスを優先する限り、医師の働き方はなかなか改革できません。