映画『MMRワクチン告発』は、劇場公開直前になって、日本での公開を中止することが昨日発表されました。
製作者に重大な誤解があることが判明したため、この映画の公開が適切でないと配給会社が判断したようです。
「MMRワクチン」というのは、麻疹・おたふくかぜ・風疹の混合ワクチンのことです。
映画では、「MMRワクチンと自閉症に因果関係が疑われる」ということを、訴えようとしているようです。
この問題には少々複雑な経緯がありますが、ごくおおざっぱに書くなら、こうです。
(1)MMRワクチンと自閉症の関連性についての研究が、有名な医学雑誌に掲載された(1998年)
(2)それがまったくのねつ造論文であったことが判明し、撤回された(2010年)
(3)米CDCがMMRワクチンと自閉症との関連データを隠蔽していた、とする論文が発表された(2014年)
(4)その告発論文もまた、ねつ造と判明した(同年)
このうち(1)や(3)に大きなインパクトがあったので、その部分がひとり歩きしたということでしょうか。
「反ワクチン」を主張したければ、故意に(1)や(3)だけを引用・喧伝する手法もあるのでしょう。
センセーショナルな記事や報道は、それが後に撤回されても、その印象はもう完全には打ち消せないものです。
報道番組で何度も放映された「HPVワクチンの副作用に苦しむ女性」の映像が、まさにそれです。
科学的な立証もせず、まず映像のインパクトで印象を植え付けてしまうやり方は、おおいに問題だと思います。