さくらももこ氏死去

「さくらももこの訃報を目のあたりにして『神のちから』(さくらももこ 小学館)を引っ張り出した」

週刊文春の『私の読書日記』欄で、三上延氏がそのように書いていたので、私も引っ張り出してみました。

『神のちから』が書斎にあることは、わかっていました。震災後の片付けの時に、目にした記憶があるのです。

では、どこにあるのか。メインの、作り付けの棚ではありません。そこは今、スコッチが占領してますから。

古い(購入して20年以上を経た)本ばかりを収納した、いちばんへんぴな書棚を探してみます。

はたして、前後に重なった本の後ろ側のいちばん日の当たらない場所に、その『神のちから』はありました。

まあ、もともと書斎自体に日は当たりませんけどね。窓は小さい上に、シャッターを下ろしてますから。

あらためて読むと、ひどくシュールですね。四半世紀ぶりに読んだのに、ほとんど内容を覚えていました。

とくに私が好きなのが『<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1769.html" target="_blank" title="それていくかいわ">それていくかいわ</a>』です。当ブログの読者なら、お分かりいただけるでしょう。

『神のちから』に収録されている最後のエッセイは、「こんすたんちのーぷるのおもいで」です。

それは、「まだ見ぬ土地、コンスタンチノープルよ、さようなら。おなら。」で締めくくられていました。

そのシュールさは、私にはとうていマネできません。『ちびまる子ちゃん』とのギャップも、なかなかです。

53歳という若さで、さくらももこ氏の命を奪ったのは「乳がん」でした。

息を引き取る前の最後の言葉は、「さようなら、おなら」だったかもしれません。

半分、バルミューダ。

わが家のLDKにある家電の多くが、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1409.html" target="_blank" title="バルミューダ">バルミューダ</a>の製品です。

空気清浄機、加湿器、トースターに炊飯器、書斎にはノートPC用の冷却器も。

扇風機もありましたが、地震で首が折れてしまい、強度に不安を感じたので、買い替えたのは<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2198.html" target="_blank" title="ダイソン">ダイソン</a>です。

来月、バルミューダから「The Light」という名の電気スタンドが新発売されます。価格はかなりのもの。

正直言って、今回はパスですね。これまでの製品とは少し違うというか、微妙にダサい(言ってしまった)。

子どもの学習机用らしく、光の質も考えられていますが、もうわが家には不要です。

バルミューダの創業者・寺尾玄氏が、起業して最初に生み出したのが扇風機「The GreenFan」でした。

自然の風に似せた、渦のない優しい風が吹くのが特徴だといいます。

同時に速度の違う風を送り出す二重構造の羽根と、世界で初めてDCモーターを扇風機に採用しています。

加えて、同社の製品に共通するのは、シンプルでボタンが少ないこと。これはApple製品にも似ています。

購入後の組み立てや消耗品の交換も、大手メーカーの製品よりもシンプルでわかり易くなっています。

なので私がバルミューダ・ファン(扇風機ではなくて愛好者の意味)になるのは、当然の帰結でした。

「家電という道具を通して、心躍るような、素晴らしい体験を皆様にお届けしたいと考えている企業です」

寺尾玄氏は自社のことを、そのように言ってます。まるでAppleじゃないですか。

同社のサイトでは、だいぶ前から、NHKの連ドラ『<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2382.html" target="_blank" title="半分、青い。">半分、青い。</a>』への「協力」をアピールしています。

ドラマでは今週、扇風機の発明品が登場しそうな雲行きです。バルミューダ臭が露骨でなけりゃいいのですが。

ブラックアウト

「ブラックアウト」という言葉は様々な状況で使われますが、今回は広範囲に一度に起きた停電のことでした。

北海道の大地震によって、北海道全体が瞬時に、真っ暗になりました。文字通りのブラックアウトです。

その原因は、北海道内の発電が、震源地近くの苫東厚真発電所に一極集中していたためだとされています。

泊原子力発電所が稼働していなかったために、高効率の苫東厚真発電所がフル稼働していたのも遠因とか。

停電には2種類あることを、このたびのブラックアウトで知りました。

ひとつは発電所や送電網等のトラブル。今回の、苫東厚真発電所の、地震による稼働停止はそれですね。

そしてもうひとつが、電力需給のバランスが崩れて発電機に負担がかかり、自発的に発電を停止するもの。

発電機は、過大な電力需要に耐えられないとき、自らを守るために発電を停止する機能があるようです。

1カ所が停止すれば残りの発電機にはますます負担がかかるため、結局全部が止まってしまうわけです。

もしも苫東厚真が止まった時点で、すぐ北海道の半分を停電にすれば、需給バランスを保てたかもしれません。

たとえば今回、札幌以外を全部強制的に停電にすれば、札幌だけは停電を防げたんじゃないでしょうか。

苫東厚真発電所が止まったら、残りの発電所も全部止まることは、理論的には十分に想定できていたはずです。

なのに対策をしてこなかったのは、科学的には想定できても、心情的に想定しようとしなかったからでしょう。

極端にひどい災害だとか最悪のケースというのを、どうしても想定したがらないのが日本人の特徴なのです。

あれだけの大地震や津波や豪雨災害を経験したのです。そろそろ真剣に最悪の事態を想定しませんか。

プロペラ機に乗る

大阪で開催されている「日本心臓病学会」に参加するために、日帰りで大阪に行ってきました。

3月に「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2362.html" target="_blank" title="日本循環器学会">日本循環器学会</a>」で大阪に行ったときとは異なり、今日のANA便は往復ともにプロペラ機でした。

空港の掲示板に、わざわざ「プロペラ機で運航」と記載されるぐらいですから、比較的珍しいのでしょう。

私も、プロペラ機に乗ったのは、たぶん22年ぶり(1996年に福岡–高松便で乗ったような記憶あり)でした。

ボンバルディアの「DHC-8-Q400型機」というのが、今日の機材。74人乗り。CAさんは2名。

翼が胴体上部に付いていて、翼の付け根付近の両側に、大きな黒い6枚羽のプロペラが存在感を出しています。

乗り込む前は「ちっこい」、乗り込んでみて「狭い・低い」、というのが印象と感想。

エンジンがかかるとブーンとうなり始め、離陸直前から音量が増してひどくブンブン言い始めました。

まさに離陸する時、かなり激しいブンブン丸になりましたが、それよりも、加速の強さに驚きました。

加速が強いというより、機体が軽いからなのか、すぐに速度が乗って、ヒョイっと離陸してしまいました。

プロペラ音が機内に入るとき、逆位相の音を重ねて<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1026.html" target="_blank" title="ノイズキャンセル">ノイズキャンセル</a>をしているらしいですね。

型番に着けられた「Q」は「quiet」の意味だとか。でもそれだけノイズ低減して、あのブンブン丸ですか。

巡航中の機体は安定そのもので、音も気にならなくなりましたが(寝てた)、着陸前の揺れで目が覚めました。

ジェット機だとユッサユッサと大きく揺れるところですが、プロペラ機では細かく強く速く揺れます。

そして着陸。ジェット機兼用の長い滑走路には、大丈夫か?と思うほど、なかなか着地してくれません。

ジェット機だと「ドスン」と着地するところですが、プロペラ機では「ダンッ」と硬いショックでした。

飛行に不安はなく、もう少し広ければ言うことないですが、ジェット機と同じ運賃というのが解せませんね。

予防接種歴の管理

当院でワクチンの接種を行ったお子さんの予防接種歴は、自作の「予防接種台帳」で管理しています。

私がMacの「ファイルメーカーPro」というソフトで作製したデータベースです。

熊本市在住の方であれば、熊本市の「予防接種番号」が「母子手帳(親子健康手帳)」に記載されています。

定期予防接種の予診票には、その予防接種番号の記入欄があり、市が管理できるようになっています。

おそらく市のデーターベスには、市内のすべてのお子さんの予防接種歴が入力されているはずです。

ときどき、母子手帳を紛失して、再交付を受けた方が来院されます。予防接種のページは「まっさら」です。

でも、大丈夫。保健所に問い合わせれば、データベースを参照して、その子の予防接種歴を教えてくれます。

ただし、保健所があいているのは平日のみ。土日の問合せに対応してくれないのは、けっこう痛いですね。

さて今日は、平日だというのに、保健所がまったく役に立たないケースに遭遇しました。

県外からの転入者で、しかも母子手帳を紛失したという方です。

熊本に来て再交付されたばかりの母子手帳は、まっさら。予防接種歴は保護者の記憶に頼るしかありません。

ワクチンの過剰接種を避けるためには、過去の接種歴を確認しなければなりません。

保健所に尋ねると、他県での接種歴は熊本市では把握してないので前の居住地の自治体に尋ねてくれ、だと。

はぁ?、そういう「名寄せ」作業って、一医療機関がすることですか?、保健所の仕事じゃないの?

そのように私は、実際に少々厳しく言い返してしまいました。あとで仕返しされたら怖いですが。

他の自治体、とくに他県からの転入者については、熊本市は予防接種歴を把握できないようです。

マイナンバーでも活用しない限り、子どもの予防接種歴を全国で統一して管理することは難しいのです。

なので現行システムでは、他県で接種済のワクチンを、転居後にまた定期接種してしまうことがあり得ます。

過剰接種が医学的には問題がなくても、公費を使って無料で接種する以上、できれば避けるべきです。

それを防ぐのは、国や自治体の仕事です。医療機関に頼らないでください。

医学部合格率の男女比

文部科学省が昨日、医学部受験合格率は全国77%の大学で男子の方が高かったと、調査結果を公表しました。

男子受験生の合格率が女子の合格率の何倍かで表すと、順天堂大が1.67で最大だったようです。

誤解のないように付け加えますが、これは合格者の男女比ではありません。合格率の男女比です。

問題となった<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2498.html" target="_blank" title="東京医科大">東京医科大</a>は1.29でしたが、この東京医科大をも上回る大学が13大学もあったそうです。

もちろん、だからといって、それらの大学でも不正があったというわけでは、もちろんありません。

私の母校も、男女比では高い方から数えて5番目、国公立では全国トップの1.43でしたが、大学サイドは、

「男女の区分なく合否判定を行っているため、男子の合格率が女子を上回る理由は特に把握していない」

とコメントしているようです。

このように大きな男女比が生じた原因として考えられることは、

(1)物理や数学を難しくするなど、入試科目や配点が男子に有利である(ように作ってある?)

(2)一般の男女の学力差とは異なり、医学部の受験生層では男子の学力の方が高い(のではないか?)

このうち(1)については、科目別・男女別得点を公開してもらえば、その詳細がわかるかもしれません。

また、有名進学校の多くが中高一貫の男子校であることが、(2)に関与している可能性もあります。

医師としての適性を判定する入試において、そもそも学力試験は万能ではなく、限界があるのです。

かといって面接試験は客観性に乏しく、男子を採りたい心理が作為的な評価につながる懸念がありますけどね。

医師の働き方改革

厚生労働省は昨日、「第9回 医師の働き方改革に関する検討会」を開催しました。

医師・医療の特殊性をふまえて、医師の時間外労働の上限規制をどうするか、ということが焦点です。

この議論を行うとき、真っ先に上がってくるキーワードが、医師法19条に規定された「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2498.html" target="_blank" title="応召義務">応召義務</a>」でしょう。

「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」

その月の残業時間が上限に達した医師が、さらなる残業が必要となる診療を求められた時、どうすべきなのか。

医師の応召義務については、これまでにも書いて来ましたが、残業規制とは両立しにくい規定です。

患者と医師の両方を守るためにも、応召義務の「正当な事由」については、きちんと規定してもらいたい。

医師は自分の技術を高め知識を深めるために、自分の時間を犠牲にして研鑽に励む傾向があります。

やるべき業務の多い医師に杓子定規に残業制限をすると、まず自己研鑽に充てる時間が削られかねません。

それよりも、現状で医師が従事している仕事のうち、削るべき時間はほかにあります。雑用です。

医師ではなくてもできる仕事は、医師以外が行うようにする「タスクシフト」が、検討されるべきです。

『ドクターX』の大門未知子が言ってた「医師免許が無くても出来る仕事は一切致しません」が、理想ですね。

手術前の説明(インフォームドコンセント)は、医師がすべき重要な仕事ですが、かなり時間を食います。

かつて私は、患者家族の都合を考慮して土日に行うことも多かったですが、それは私の休日出勤が前提でした。

それをヨシとしてきた時代もありましたが、今後は見直す部分かもしれません。

クリニックを開業する際に、何のためらいもなく「土日祝日診療」をすることに決めました。

勤務医時代にいつも休日出勤していた生活に慣れきっていたので、何の違和感もなかったのでしょうね。

ANAの新運賃体系

ANAは、国内線航空券の運賃制度を大幅に刷新し、搭乗日の355日前からの予約・購入が可能になりました。

それが今日、9月3日からです。今日以降は毎朝9時半に、その355日後のチケットが発売されます。

今日の355日後は来年8月24日。つまり今朝9時半から、8月24日の航空券が買えるようになったわけです。

さらに経過措置として、今日の午前0時から、8月23日までのチケットが全部自動的に発売開始となりました。

ちょうど私は、来年5月の羽田–熊本の往復航空券を購入する必要があったので、昨夜予約作業を行いました。

発売時刻の少し前からANAの予約サイトを立ち上げておき、臨戦態勢で0時を待ちました。

0時0分1秒に空席検索ボタンをクリックしたところ、まだ早すぎた模様。5秒後のクリックで反応あり。

まあそれにしても、チケット代が高い。半年以上も前なのに高い。それもそのはずで、ANAの新運賃体系は、

(1)まず「定価」で先行発売し、(2)しばらくして「特価」で発売し、(3)だんだんと価格が上がる

という戦略に変えたのですね。早ければ早いほど安いワケではないのです。まあ、うまく考えたとも言えます。

たしかにそのおかげで、私は大型連休中の航空券を容易に入手することができました。

でも、絶対その日のチケットが欲しいから高くても買う人間の、足元を見るような料金体系にも思えますね。

採血の難しさ

採血に失敗して、患者さんに痛くて不快な思いをさせたことが、最近ありました。

その失敗の瞬間の当方の対応にも問題があり、まことに申し訳ない出来事でした。

患者さんの言い分を聞き、謝罪し、やり直し採血にも成功し、最終的には円満解決しました。たぶん。

血管が出にくい方の採血に失敗することはしょうがないとしても、大事なのはその時の対応なんでしょうね。

好きで採血されているわけでもなく、やたら痛く、それをまた失敗されたのでは、だれでも不愉快です。

小児心臓外科の勤務医時代、手術の前に最初にする準備は、子どもにたくさんの点滴を入れることでした。

手足に点滴を2,3カ所、中心静脈にカテーテルを1,2本、さらに動脈圧監視用の管も入れる必要があります。

同時に複数の心臓外科医や麻酔科医が点滴に取りかかり、ときには小児科医にも手伝ってもらいます。

毎日毎日、赤ちゃんに点滴を何本も入れる仕事を何年も続ける中では、困難なケースに何度も出くわしました。

点滴用の特殊な留置針を、多いときは一人当たり20本も30本も使ってしまいます。

何時間トライしても点滴が入れられず、ついに手術そのものを中止・延期したことも、一度ありました。

開業して、小さな赤ちゃんに点滴を入れることは減りましたが、大きな子でも手こずる場合はあります。

また、大人の血管は赤ちゃんよりも何倍も太いはずなのに、驚くほど針が入りにくい方にも出くわします。

採血に苦労した患者さんが、「私は入りにくいからね」と笑ってくれると救われます。ありがたいことです。

そのような方にこそ、次はスパッと入れて見せたいものです。

定期接種では足りません

夏休み中には、小中学生の予防接種が多いのは、毎年のこと。

その多くが、11〜12歳で接種する二種混合ワクチンと、9〜12歳で接種する日本脳炎ワクチン(第2期)です。

いま二種混合ワクチン(DT)接種をしているのは、過去に三種混合ワクチン(DPT)を接種したお子さんです。

標準的には、0歳時にDPTを3回、1歳時にDPTを1回、11歳でDTを1回接種するというスケジュールです。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-387.html" target="_blank" title="約6年前">約6年前</a>からは、DPTに不活化ポリオワクチンが加わった四種混合ワクチン(DPT-IPV)が導入されています。

念のため説明を加えておくと、D:ジフテリア、P:百日咳、T:破傷風、IPV:不活化ポリオ、です。

さて、これらの不活化ワクチンは、何度も接種しなければ免疫が付かず、しかもなかなか長持ちしません。

現行制度では、DとTは標準的には0歳・1歳・11歳で合計5回接種しますが、PとIPVは4回止まりです。

小中高校生や大学生、成人での百日咳流行を考慮すると、Pの接種回数が不足していることは明らかです。

なので小児科学会では、11歳のDTの代わりに、DPTを任意接種することを提唱しています。

さらに、1歳までにDPT-IPVの接種を完了したお子さんの場合、就学前ごろには免疫低下も危惧されます。

なので5〜6歳児へのDPTとIPVの接種が推奨されます。これは先進諸国の多くですでに行われています。

じゃあ年長児にDPT-IPVを接種すればいいのかというと、現状ではそれはできません。

5回目のDPT-IPV接種は、まだ認められていないからです。よって、DPTとIPVを別々に接種します。

このような用途もあって、かつて<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-912.html" target="_blank" title="一度は廃止された">一度は廃止された</a>DPTが、今年から製造再開されています。

ややこしい話なので、まとめておきます。

(1)定期接種としては、DPT-IPV(四種混合)を、0歳で(3カ月から)3回、1歳でもう1回接種

(2)免疫低下対策として、5〜6歳時に、DPT(三種混合)とIPV(不活化ポリオ)を任意接種

(3)百日咳の免疫低下対策として、11〜12歳でのDT(二種混合)定期接種の代わりに、DPTを任意接種