国が導入しようとしている時間外労働の上限規制の、医師を別枠とする考え方には、何かと問題があります。
(1)一般業種においては、残業時間は原則として、年360時間まで
(2)特例として労使が合意した場合においても上回ることができない残業時間の上限は、年720時間
(3)医師については、残業時間は別途省令で定める(医師の特例条項)が、年960時間になるという話も
(4)さらに救急や産科などで働く医師には、上限を定めないという意見もあるとか
働き過ぎを防ぐための規制のはずが、医師は忙しいので残業を規制しないという、本末転倒な理屈です。
残業規制の趣旨は労働者の健康確保や仕事と家庭の両立にあり、ひいては女性の社会進出を促進することです。
ところが医師には厳格な残業規制を適用せず、健康や家庭への配慮よりも患者さんのために頑張れということ。
これまで医師の労働環境はずっとそうでしたが、今後変わるかと思いきや、それほど変わらないわけです。
医師はこれからも、自分の健康と家庭を多少犠牲にしてでも、国民の健康のために貢献することになります。
しかし、女性医師を男並みにコキ使うわけにはいきません。妊娠・出産・育児等では、守られるべき存在です。
せめて育児の部分だけでも、男が役割分担をすればいいのでしょうけど、それは個々の家庭の事情もあります。
女性医師が、忙しくない部署(診療科)に偏れば、忙しい科の医師は不足してますます忙しくなります。
忙しい部署でも働かせやすい男性医師の割合を増やしたいという気持ちは、どの大学や病院にもあるでしょう。
医師の長時間労働が前提となっている現在の医療現場は、今後もあちこちで問題が出てきそうです。