女子受験生一律減点問題

東京医大が入学試験で女子受験生の得点を一律減点していたことが、ひょんなことから表に出てしまいました。

さまざまな観点からの議論を呼ぶ問題に発展しています。

「時代錯誤も甚だしい」という論調もあれば、「男女別の定員を明記すればよい」という意見もあります。

西川史子氏が、「成績で上からとったら女医ばかりになるから仕方ない」と率直に発言して叩かれています。

女性の働き方改革の観点からは、男女の機会は均等であるべきでしょうけど、問題はその先です。

それは、病院という職場が少なくとも現状では、肉体労働のブラック企業だという点です。

求められたら必ず診療しなければならないという医師の「応召義務」は、女性に適応しにくい面があります。

外科系にはしばしば、パワハラに似た「徒弟制」が存在しますが、女医相手ではその指導もしにくいでしょう。

勤務医の長時間勤務は当たり前。連続36時間勤務もあれば、月に1日も休めない医者などたくさんいます。

私の心臓外科医としての20年余りの経験の中で、出会った女性心臓外科医は少ないですが、みな優秀でした。

頭脳も技術もセンスも、男女差はないと思います。ただ、連続長時間勤務という肉体労働には、不向きです。

48時間ぐらいシャワーも浴びないとか、週に5日ほど泊まり込むとか、そんな勤務を女性にはさせられません。

まして、妊娠や出産は最優先事項。結局は、男性が女性をいたわり、カバーしなければならなくなります。

ところが昨今、男性の労働時間でさえ、厳しく制限する方向に向かっています。もちろん、当然のことです。

女医の産休や育休による穴を、男性医師がうめることも難しくなるでしょう。

すでに現場(病院)のあちこちの部署で、女医の戦力が不安定なために、さまざまな影響が出ているのです。

ならば、女医の人数自体を最初から制限しておこう。そんな考えから入試に手を加えたのかもしれません。

東京医大のやり方には問題がありましたが、もっと大きな問題は別にあるということです。