複雑な人間関係が明らかになってきて、逆に手術シーンがつまらなくなってきた『ブラックペアン』第6話。
今日の手術は、心臓の腫瘍「粘液腫」の切除と、その残存腫瘍の摘出と、そのまた合併症への対処手術でした。
一粒で3度の、美味しくない、でも臨床現場ではありがちな設定でした。
粘液腫の多くは、左心房にできる「左房粘液腫」で、組織としては良性なのですが、生命の危険があります。
なぜなら、左房の出口である僧帽弁にはまり込んだり、腫瘍の一部がちぎれて脳まで流れたりするからです。
術前検査で、大きな粘液腫が心臓の拍動と伴に動き回る映像を見るのは、実に心臓に悪いものです。
担当患者の巨大な粘液腫が、まるで鞠のように心臓の中を転げ回っている様子を目にしたこともあります。
体の向きで粘液腫の動き方が変わり、何かの拍子に僧帽弁にはまり込み、突然死することもあり得ます。
手術中に粘液腫を見ると、表面が少し房状になった、ぷるんぷるんの赤いゼリーのような外観です。
つるんっと取れればいいのですが、下手に触るとぐじゃっと砕けます。
砕けた腫瘍のほんのごく一部でも、あとで脳に流れて行けば極めて重大な脳梗塞を引き起こします。
ロボットで粘液腫を切除するのは、ホントに高度な技術が必要だろうと思いますが、現実に行われています。
ただそのような難手術が、このドラマではあまり詳細に描かれておらず、それほど難しそうに見えません。
監修の渡邊剛先生からすれば、簡単な手術だからでしょうか。
いつも思うのですが、手術描写の大半は、左房かどこかの切開部の縫合シーンという、どうでもいい部分です。
最後に「メッツェン」で縫合糸を切る瞬間をたいそう重々しく描いているのを見ると、何かガッカリします。
もっと、ホントに難しい手術手技の部分を、一度でもまともに描写してほしい。