かかりつけ医割増し

「24時間、365日対応」「常勤医2人以上」

国が進めようとしている「かかりつけ医」制度には、このような基準が医療機関側に求められます。

基準は多少緩和されましたが、それでも、医者が私1人だけの当院は、かかりつけ医になれません。

そもそも、医師2人で24時間365日対応せよ、なんていうこと自体が、ブラックジョークとしか思えません。

「働き方改革」を進める厚労省が、医師に対しては、ブラック企業のような働き方を勧めているわけですから。

「かかりつけ医」の基準を満たした医療機関では、初診料が従来の2,820円から3,620円にアップします。

差額の800円は「機能強化加算」とよばれるもので、「かかりつけ医割増し」と言ってもいいでしょう。

上乗せされた分、医療費が上がります。たとえば3割負担の方なら、240円ほど支払いが増える計算です。

つまり「かかりつけ医」にかかると、そうじゃない医者にかかるよりも、患者負担は大きくなるのです。

問題は、「かかりつけ医」が個々の患者にとっての実際の「かかりつけ」かどうかは関係ないということです。

国が言う「かかりつけ医」というのは、「かかりつけ医機能取得医療機関」ともいうべき、一種の資格です。

この資格を取得した医療機関は、すべての受診患者に対して「かかりつけ医」となります。

したがって、その医療機関に初めてかかった患者にも、「かかりつけ医割増し」が800円上乗せされます。

逆に、毎月来院する生活習慣病等のかかりつけ患者からは、割増料金はとれません。初診ではないからです。

こう考えてみると、国が描いている「かかりつけ医」像は、かなりいびつです。

そしてその制度を誘導しようとして医者に与えるインセンティブは、結局、患者負担増が財源です。

そのことが裏目に出て、制度が思うように普及しないという、ありがちな結末を迎えそうな気がします。