がんを予防する自由

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2299.html" target="_blank" title="HPVワクチン">HPVワクチン</a>は、副反応を疑う事象が問題となって積極的勧奨が中止され、接種は実質的に止まっています。

このことについて、某医師系サイトが行った日米医師の意識調査の結果は、なかなか興味深いものでした。

「日本は接種を勧奨すべきだ」とする産婦人科医の割合は、日本の78%に対して、米国では意外にも57%。

一方で「接種者が個別に判断すればよい」とする産婦人科医の割合は、日本の14%に対して米国では41%。

つまり米国の医師は、ワクチンを接種するかどうかは国ではなく個人が決めることだ、という考えなんですね。

医学的な判断はどうあれ、最終的には個人の意思を尊重するというのが、いかにも米国的です。

ひるがえってわが国の、接種率がほぼゼロという現状は、はたして個人の意思によるものなのでしょうか。

全国民がそれぞれ自分の判断で、HPVワクチンを否定した結果なのでしょうか。

メディアの執拗なネガティブキャンペーンに惑わされ、思考停止に陥ってるのではないのでしょうか。

そのメディアが作った世論に負けて、大事なワクチンの接種を事実上停止させてしまうという、弱腰の厚労省。

しかし積極的には勧めないくせに定期接種のままにしておくのは、あとで言い逃れするためのずるい伏線です。

医学的根拠に乏しいとされるのに繰り返し放送された、あの少女の映像こそが、HPVワクチン問題の始まり。

ワクチンが予防しようとしている病魔の恐ろしさの方に国民の目を向けさせるためには、どうしたらいいのか。

がんを予防しようという気にさせる、効果的な方法はあるのでしょうか。

私は、子宮頸がんの統計、病状、手術シーン、摘出臓器など、あらゆる現実を、映像で流すべきだと思います。

ワクチンの副反応だとする映像にはいまだに議論がありますが、子宮頸がんの惨状に議論の余地はありません。

毎年3,000人が子宮頸がんで亡くなっているという現実から、目を背けてはなりません。

機内の咳

所用があって、日帰りで沖縄に行ってきましたが、服装を間違えました。ツイードのジャケットは暑かった。

最近なじみになった熊本空港のラウンジでは、今日もパソコンと向き合っている背広の男性が目立ちます。

ネットサーフィンやゲームなどではありません。どなたもひたすらキーを打ってます。文章を書いてます。

報告書とか、企画書とか、そういう類のものでしょうか。まさかブログじゃないですよね。

その企業戦士たちの姿を目の当たりにして私も、iPhoneでこのブログをいま、書き始めたところです。

出張の往路か帰路か、搭乗までの待ち時間も惜しんでキーを叩きまくるスーツ姿の男たち。

航空機での移動は私にはまだ非日常でも、彼らにとってはバスかタクシーぐらいの感覚なのでしょう。

さて搭乗。後ろの方の席から、幼な子の泣き声と大人の咳込みが聞こえます。

子どもは泣くもの。しょうがない。問題は咳。後ろの席の咳。インフルエンザの可能性だってありますから。

こういうとき、咳のすぐ前の席の乗客は、イヤな気分でしょうね。確実にしぶきを浴びるのに逃げられない。

日頃のインフルエンザの診療ではいつも、病状改善後の登園・登校・出勤等が可能な日をお伝えしています。

子どもの親御さんは確実に、その規則を守ってくれます。でも、大人の患者がそれを遵守するかどうか。

少々体調が悪くても、まだ熱があっても、見切り発車して出勤する方もいるでしょうね。

どうしても休めない出張も、きっとあるのでしょう。でも、周囲は大迷惑です。

多人数が密室で長時間をともに過ごす航空機ではとくに、感染のリスクを考慮したマナーが大事です。

節煙は無意味か

禁煙指導のキモは「完全禁煙」であって「節煙」ではないことは、よく知られていることです。

喫煙本数と喫煙リスクは、必ずしも比例しないからです。

ある研究によれば、心筋梗塞や脳卒中のリスクは、1日1本吸うだけでも1日20本喫煙の4割程度あるとのこと。

毎日の喫煙本数を20本から1本に減らしたところで、完全禁煙に比べれば五十歩百歩だというわけです。

ある記事によると、「禁煙でやってはいけないこと」と称して、以下の4点が提示されていました。

・だんだんと減らそうとすること

・軽いたばこに変えること

・加熱式たばこ、電子たばこに変えること

・「1本くらいなら」と甘くみること

理解できる考え方ですが、しかし私は異を唱えたい。少なくとも、だんだん減らすことには意味があります。

禁煙外来では完全禁煙を指導するわけですが、そうすると脱落する人が出てきます。

「目標は0本ですが、とりあえず5本まで減らしましょうか」ぐらいのハードルの低さも大事です。

節煙すれば、まず発がんリスクが減ります。受動喫煙も減らせます。禁煙の意志を周囲にアピールできます。

医療現場での実体に即せば、理想を目指すよりもまず、一歩前進の方が重要です。

いきなり完全禁煙できる人ばかりではありません。禁煙外来も、人それぞれの対応でいいじゃないですか。

感染症は感染する

インフルエンザの定点当たり報告数が、大幅に減少しています。

第6→7週(2/12-18)の変化は、全国:45.38→29.65、熊本県:49.64→31.35、熊本市:38.24→26.80。

このペースだと第9週(明日からの週)には、警報レベル解除基準(1定点あたり10)まで減りそうです。

今シーズンは、A型とB型の両方に罹る方だけでなく、同じ型のインフルに2回罹った子にも遭遇しました。

さらに今日などは、今期3回目のインフルエンザ(A型2回、B型1回)と診断した方もいて驚きました。

インフルエンザに罹ったお子さんは、最も経過が良い場合でも、登校・登園ができるのは発症の6日後です。

このとき、いつが発症日なのか、その解釈がとても重要になりますが、それはしばしばアバウトです。

学校保健安全法を遵守して、登校・登園日を決めるわけですが、そこには「さじ加減」の余地もあるわけです。

急性胃腸炎(嘔吐・下痢)のお子さんがいつから登園できるかは、病状をみて決めることになります。

ノロやロタやアデノウイルス感染症のような、いわゆる「感染性腸炎」の場合は、とくに厳格に対処します。

一方で、原因不明の胃腸炎、たぶんウイルス性?、ぐらいの病状だと、もう少し緩い対応になります。

「胃腸炎ですね」と親御さんに説明すると、「感染性でしょうか」という質問をしばしば受けます。

「感染力の強い胃腸炎ではないと思いますが・・・感染性か感染性じゃないかで言えば、感染性です」

と応えると、親御さんはたいてい、ガッカリされます。まるで「伝染病」と言われたような反応です。

そんな時は、「おなかの風邪みたいなものです。風邪でも感染するでしょう?」と言って理解を求めます。

保育園や幼稚園が感染症に過敏になりすぎているので、親御さんに伝える病名には気を遣いますね。

裁量労働制問題

「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもある」

このように発言した安倍首相でしたが、その根拠となった数値がインチキだったことが問題になっています。

裁量労働制の労働時間は短めに、一般労働者は長めになるように、恣意的に計算してあったからです。

データを最大限利用して間違った解釈ができるように上手く工夫することは、巧妙なねつ造の一種でしょう。

数字をいじらせると官僚の右に出る者はいませんね。ただし、隠蔽工作は政治家ほど上手くはないようです。

厚労省の倉庫で新たに見つかったという調査票の原本は、段ボール32箱分に及ぶ膨大なものでした。

「ロッカーを探したが無かった」と言っていたデータは、もともとロッカーに入る量ではなかったのです。

「ええ、ですから、ロッカーには無かったと申し上げたのでございます」と官僚なら平然と言い訳しそうです。

冒頭の安倍首相の答弁でも、「というデータもある」という部分に、最初から言い訳がましさを感じます。

裁量労働制は、自由な出退勤と「みなし時間制」が特徴です。それ自体には、問題ありません。

ただ実際には、実労働時間が見なし時間とはかけ離れた長時間となるから問題なのです。

でもそれを言い出すなら、一般労働者のサービス残業も、基本的には同じことです。

裁量労働制であろうと従来型労働であろうと、超過勤務に対して手当を出さないことが、最大の問題です。

労働時間の長短を言う前に、まず労働の正当な評価が先決でしょう。

タミフル安くなります

抗インフルエンザ薬「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2313.html" target="_blank" title="タミフル">タミフル</a>」の後発品(<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1168.html" target="_blank" title="ジェネリック医薬品">ジェネリック医薬品</a>)が初めて、製造販売承認されました。

沢井製薬から6月に発売される、「オセルタミビルカプセル75mg「サワイ」」という、長い名前の薬です。

後発品は原則として、有効成分の名前である一般名(generic name)+「会社名」で名乗るきまりなのです。

現在の、医療費としてのタミフル(先発品)の価格、いわゆる「薬価」は、1カプセル283円です。

後発品が初めて収載され、しかも沢井製薬1社だけなので、薬価はたぶん先発品の5割になるのだと思います。

1日2カプセル(朝晩)を5日間内服するとして、医療費の差は約1,400円、3割負担なら400円ぐらいです。

実際の薬局での支払には、調剤料やら指導料やら加算などが加わって、400程度の差は埋没しますけどね。

それに抗インフルエンザ薬なんて、生活習慣病の薬のように1年中内服するわけでもありません。

だから人気がなかったのか、このたびジェネリックを発売することになったのは、沢井製薬1社だけでした。

一方で、降圧剤(高血圧治療薬)の「アイミクス」は、20社から後発品が発売されることになりました。

やはりこの手の生活習慣病治療薬は、大人気のようです。しかも最近はやりの「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1997.html" target="_blank" title="配合錠">配合錠</a>」ですしね。

2種類の降圧剤「アムロジピン」と「イルベサルタン」をミックスした薬なので「アイミクス」です。

その一般名「イルベサルタン/アムロジピンベシル酸塩」は長すぎるので、後発品名は「イルアミクス」です。

10社以上から発売される後発品は、先発品の4割の薬価になるはずです。これは患者さんにはありがたい。

頭痛の日

2月22日は「頭痛の日」だそうですね。知りませんでした。今日知りました。

これがあと4年後だと、2022年2月22日で、さらに2が並びます。「頭痛が痛い日」とでも言いましょうか。

さらに2222年2月22日ともなると、「頭の頭痛が痛い日」ぐらいの勢いですね。(ふざけてすみません)

「日本頭痛協会」と「日本頭痛学会」が、「片頭痛を予防しよう」という啓発ポスターを作っています。

ただ、そのポスターに描かれているモデルが外国人(っぽい)女性なのが、どうしても気になります。

日本の団体が作成したポスターじゃないんですかね。もしかして、国際団体のポスターからの流用?

でも少なくとも、2月22日を頭痛に結びつける国って、日本だけですよね。

過去の啓発ポスターを見たら、2013年以降ずっと、外国人(っぽい)女性がモデルじゃないですか。

「頭痛=外国人女性」という固定観念でもあるのでしょうか。それとも、協会代表者の趣味?

「頭痛の日」にするのなら2月2日の方がしっくりきますが、その日はかつて、存在していました。

ジョンソン・エンド・ジョンソンが2001年に制定したけども、翌年には廃れたという幻の「頭痛の日」です。

その、メーカーが制定したのと同じ日を使うのがためらわれたために、2月22日が選ばれたのかもしれません。

「22」の部分で「頭痛」と読むのであれば、2月でなくても構わない気がします。毎月22日は頭痛の日です。

「片頭痛」は、その前兆として、「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1143.html" target="_blank" title="閃輝暗点">閃輝暗点</a>」と呼ばれる視野の異常が現れる場合があります。

私は頭痛持ちではありませんが、仕事中にいちど閃輝暗点を見たことがあります。

突然視界に、アルミホイルを弧状の短冊にしたようなものが、チンアナゴのように、ニュッと出てきたのです。

最初は驚き、戸惑ったものの、それが生まれて初めての閃輝暗点だと気づき、その後の片頭痛を待ちました。

待ちましたが頭痛は起きず、むしろ脳梗塞じゃないかと不安になり、後日脳外科でMRI検査を受けたのでした。

もちろん、脳には異常なし。その後2年ぐらい経ちますが、いまだにチンアナゴには再会できてません。

冬季五輪の楽しみ

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2328.html" target="_blank" title="平昌オリンピック">平昌オリンピック</a>では、日本人選手の活躍が目立つので、毎日楽しみです。

そのなかで今日は、「女子パシュート」と「女子カーリング」でしょうか。

「カーリング」のことを私は、スポーツというのはどうなのかと思っていた時期がありました。すみません。

しかし最近は、親切なテレビ解説のおかげでルールも戦術も多少わかってきたので、とても面白い。

あの、選手同士が北海道弁(?)で指示を出し合う声が丸聞こえなのも、なかなか盛り上がりますね。

今夜はスイスに敗れたけど、準決勝進出が決まったのは、よかった。明後日は、何かやってくれそうです。

「パシュート」の金メダルはすごかった。途中まで負けてたのに、最後に凄い勢いで逆転しました。

何がすごいかって、3選手が密着して一列になって、手足の動きが同じで、まったくずれてないことですね。

清水宏保氏による、「『Choo Choo TRAIN』のように3選手が重なっている」という表現がピッタリです。

こういう動きは日本人が得意だ、なんて軽く言うけど、なんで日本人にしかできないんでしょうね。不思議。

日本が獲得したメダルが、過去最多の11個になったと、メディアが大騒ぎしています。

まあ、それはめでたいことですが、金銀銅の区別なく合計した個数だけを比較するのは、どうなんでしょう。

長野五輪の10個のメダルのうち5個は金メダルですが、平昌では金メダルはまだ3個。今回は銀が多いですね。

競技種目は増えているし、ロシアも正式には参加していないし、過去との比較はほどほどにしときましょう。

それよりも、日本が過去にメダルを獲ったことのない種目へ幅を広げて、競技人口を増やしてほしいものです。

カーリングでもパシュートでも、日本人選手が強いと楽しいじゃないですか。

落ちない石、落ちる

「落ちない石」として受験生などに知られていた島根県の石が、落ちているのが見つかったというニュース。

「落ちない」「すべらない」さまざまな物が、受験生には重要な、縁起物・合格祈願グッズになります。

入試前の過敏な時期には、あらゆる物事が縁起の善し悪しに結びつけられてしまい、一喜一憂しますよね。

科学的な根拠はなくても、何かのモノに思いを託すことで気持ちが前向きになれば、それは意味があります。

その反対に、何か縁起の悪いことが起きたら、精神的ダメージは大きいでしょう。

日本人の特徴かどうか分かりませんが、縁起の悪いモノや出来事や言霊には、大きな影響を受けるものです。

今回の石は、「受験生の身代わりに落ちてくれた」という解釈で、ポジティブにとらえられているようです。

これはうまい。精神的ダメージを払拭するための、知恵ですね。

じゃあ、どうしてコレまでの年月ずっと落ちてくれなかったのかい、と言いたい気持ちは抑えておきます。

そんな屁理屈を言うようでは、「落ちない石」の御利益もないでしょう。

ともかく、昨年までは「落ちない」縁起物だった石が、今年は「落ちて」身代わりになったわけです。

このたび落ちた石は細かく砕いて、「身代わり石」と称したお守りにしては、いかがでしょう。

試験の前後などにわざと落として、身代わりになってもらう使い方です。

インフル中間総括

インフルエンザの流行はそろそろ、終息です。第6週(2/5〜2/11)の定点当たり報告数を第5週と比べると、

全国:54.33→45.38、熊本県:55.06→49.64、熊本市:51.84→38.24と、明らかにピークを過ぎました。

幼稚園から検査するように言われたと来院する発熱者の、その半分はインフルエンザではなくなりました。

しかし、例年なら検査しないような軽症例でも、懇願されて検査したら陽性が出たりするので油断できません。

今年は「隠れインフル」が多いと報じられているため、軽症でも求められたら検査を断れない面があります。

職場から検査を求められて来院する、微熱の成人もいます。そして実際、調べてみたら陽性だったりします。

なかには、「高熱なのにインフルなんですか?」などとオカシナことを言う、B型インフルの方もいます。

嘔吐や下痢など、胃腸炎症状主体のインフルエンザが今年は多いことも、知れ渡っています。

「下痢をしたのでインフルだと思って来ました」などと言う、明らかに普通のウイルス性胃腸炎の方もいます。

インフルエンザの非典型的症状ばかりが報じられやすく、一般の方の目もそちらに向いてしまいがちです。

しかし、従来通り高熱でぐったりした、いかにもインフルエンザっぽい方も多いのです。

B型でそのような重症例はたいてい、これまでにインフルエンザに罹ったことがない、と言う方です。

正確な集計はできませんでしたが、やはりワクチン未接種の場合、インフルエンザに罹りやすいようです。

来年こそは、ワクチン接種とインフル罹患との関係を統計学的に解析して(報告して)みたいものです。