インフルエンザの検査を希望して来院する方が、毎日何人もいます。
このような場合、実際に検査をするかどうかは医師が判断すべきです。希望により行うものではありません。
ただしその際には、医学的な観点だけでなく、さまざまな社会的事情を考慮しなければなりません。
たとえば、まだ発症したばかりの方が検査を希望する場合、私はその目的が次のどちらなのかを尋ねます。
「インフルエンザ陽性」を確認したいのか、それとも、「インフルエンザ陰性」を確認したいのか。
前者には、もしもインフルエンザであるならば一刻も早く治療を開始したい、という願いが込められています。
なので病状の重症度によっては、ダメ元で検査することがしばしばあります。早く治してあげたいからです。
状況(家族がインフルなど)等でインフルの疑いが強ければ、もはや検査すら必要ないこともあります。
問題は後者です。念のため園に検査するように言われたとか、会社から求められた方も時々います。
残念ながら、検査して陰性であっても、インフルエンザではないという証明にはなりません。
インフルエンザではないことの証明は、インフルエンザであることの証明よりもずっと困難なのです。
したがって、インフルエンザ陰性の証明を強く希望される方には、検査をお断りすることがあります。
少なくともそのような方は、発症して十分に(24時間以上)時間が経ってから、検査を受けるべきです。
偽陰性の可能性がある方に、いたずらに陰性のお墨付きを与えるわけにはいかないのです。