『ワクチン副作用の恐怖』という本が出ました。著者は『患者よ、がんと闘うな』等で有名な、近藤誠氏です。
タイトルを見ただけで批判的な気分になりましたが、正しく内容を判断するために、敢えて買って読みました。
そして、驚きました。内容が正しいとか正しくないとか言う以前に、とても読みやすかったからです。
平易な文章でありながら、論理展開がしっかりしているのて、近藤氏の持論がとてもよく理解できるのです。
だからこそ、その読みやすくて誠実に感じる文体で、科学的には誤った情報を書いている点が問題なのです。
持論を展開するために、インパクトのある事例や、統計学的には有意とはいえないデータを駆使しています。
これはちょうど、HPVワクチン問題で、メディアが衝撃的な映像を何度も何度も放送した手法と同じです。
科学的(医学的・統計学的)に正しくないことでも、それを信じ込ませるだけの文章に仕上がっています。
ただし、一部のワクチンや行政問題など、共感できる記述も混在しているので、この本を全否定はしません。
近藤氏の理論は、感染症そのものよりもワクチンの方を極端に怖がる、そのバランスの悪さが最大の欠点です。
現行のすべてのワクチンの必要性を否定するか、あるいは有害なので接種してはならないと言い切っています。
小児科医に予防接種を勧められたら、次のように言い返せば医者は沈黙するそうです。
「子どもに後遺症がでることはない、万一でたときは損害賠償をする、と一筆書いてください」
ワクチンを接種せずに感染症に罹って、死んだり後遺症が残ったお子さんへの賠償は、誰がするのでしょう。