ヒルドイド問題

最近話題の「ヒルドイド問題」。今日は、中央社会保険医療協議会(中医協)総会でも取り上げられました。

乾燥肌(皮脂欠乏症)のひどいお子さんに対して、「ヒルドイド」は当院でもよく処方する保湿剤です。

これを、本来保険が適用されない美容用に使うことを、雑誌やネットが推奨してしているのが、問題なのです。

小児用に処方されたものを、親が美容目的で使っている例もあると、中医協も注目しているようです。

適用外使用による医療費増加に怒った健保連は、ヒルドイドを保険適用から除外せよと、息巻いています。

ヒルドイドは「ヘパリン類似物質」という一般名で呼ばれます。洋名は「Heparinoid」です。

“Heparinoid” = “heparin”(ヘパリン)+ “oid”(の様なもの)です。 “Android” と同じ語尾です。

商品名の「ヒルドイド」は、 “Hirudo” + “oid” から命名されたとのこと。 

“Hirudo” というのは、ドイツ語で「チスイビル(血吸蛭)」という、蛭(ヒル)の一種の名前です。

つまり「ヒルドイド」とは、「血吸蛭の様なもの」というシュールな意味なのです。

最近私は見かけませんが、子どもの頃、湿地や川を歩くと足や首に張り付いてきた、あの蛭のことでしょう。

蛭は皮膚から血を吸うので、打撲等でうっ血した場所に吸い付かせて、治療に用いることもあります。

ドイツ語の “Hirudo” が日本の「蛭」の一種だと聞けば、「ヒル」は元々外来語なのかと思ってしまいます。

しかし辞書をみると、「世中にあやしき物は雨ふれと大原河のひるにそありける」という用例がありました。

11世紀の拾遺和歌集のものです。ドイツ語の “Hirudo” と日本語の「ヒル」は、偶然の一致なのでしょう。

よく「ヒルロイドを処方してください」と言う上品な人がいますが、違います。「ヒルドイド」です。

ワセリンや市販薬では改善しない乾燥肌が、ヒルドイドで改善する方が多く、とくに冬場には大人気の薬です。

美容用に流用され易いから保険適用から外す、なんてのは筋違いもいいところ。乱暴な対応だと思います。