川崎市内の工事現場の、「熱中症対策自動販売機」と張り紙がされた、ポカリ1本50円の自販機が話題です。
ポカリ代金の差額は大和ハウスが負担しているそうで、名目は「熱中症対策費用」だとか。
中学生の時、下校中に山口県庁に立ち寄り、職員用自販機で10円のファンタを買ってたことを思い出します。
県庁職員の福利厚生としての格安飲料だったのでしょうけど、私がとがめられることはありませんでした。
それはさておき、ポカリです。熱中症対策として推奨されていますが、場合によっては危険な飲料です。
先日、ひどい熱中症で、全身熱痙攣を起こしている方が来院されました。
作業でひどく汗をかいた後に、発症したようです。熱中症としては最重症のIII度です。
救急車を呼ぶ時間がもったいないので、当院ですぐ点滴しました。病状は劇的に改善しました。
ここまで熱中症がひどくなった原因は、ポカリの飲み過ぎです。
汗には塩分が含まれます。日頃あまり汗をかかない人が急に発汗すると、とくに塩分が出やすいといわれます。
塩分を多量に喪失した時には、塩分を摂らなければなりませんが、大事なのは飲料の水と塩のバランスです。
塩分を失った人が、体液よりも塩分濃度の低い飲料を飲めば、からだの塩分濃度はますます薄まります。
残念ながらポカリは、体液よりもずっと塩分濃度の低い飲料です。飲めば飲むほど体の塩分濃度は低下します。
塩分濃度が下がると、体は水分が過剰と判断して利尿作用が働き、ますます脱水になるおそれがあります。
普通の発汗のときはポカリでも良いですが、ひどい発汗時にポカリを過信しては危険です。塩が足りません。
熱中症対策として、その治療にポカリが最適であるかのようなメディアの扱い方には、問題があります。