ブレンデッドウイスキーはともかく、シングルモルトをロックで飲むなど邪道だ、というのが常識のようです。
それならばと、最近はストレートを試すようになり、ついにシングルモルト専用のグラスも買いました。
そのグラスの特徴は、そのほどよい細さと、飲み口の広がり具合と、ガラスの薄さでしょうか。
余市(ウッディ&バニラ)とラフロイグ10年で試してみたところ、前者はフルーティーで、後者は刺激的。
アルコール度数55%の余市がむしろまろやかで、40%のラフロイグがひどく焦げ臭くノドを焼きます。
3分の1ほど飲んだところで、残りをワイングラス(ブルゴーニュタイプ)に移し替えてみて、驚きました。
揮発した成分が、目に刺さり鼻を突くほどに立ち込め、一つ一つの香りが分離して、分かり易くなったのです。
さらにその残りを、ロックグラスの氷の上に注ぐとこれがまた、変わるんですね。面白い。
低温によって香りが沈静化した分、香りに邪魔されていた味、とくに甘みやコクを感じやすくなりました。
このように、グラスを次々とせわしなく変えて、香りと味の変化を感じながら飲むのが、いまの私の流儀です。
シングルモルトは結局、自己流に楽しめばいいと思いました。
難を言うなら、私の方式では洗い物がやたらと増えます。洗うのはもちろん、私です。
ウイスキーを、とくにシングルモルトを飲まない方には、まったく興味の湧かない話でしょう。
でも、心配ご無用。私もほんの10年前まで、ウイスキーの美味しさを知らなかった人間ですから。
人類が初めて口にした酒は、果実か穀物が発酵してできたワインやビールのような醸造酒だといわれています。
ずっと後になって、その酒を加熱して蒸溜して飲んでみてはどうかと思いついた人の、その発想に感謝します。