拗音の直音化

「森友学園」が運営中の保育園が、事業停止に追い込まれる可能性がでてきました。

私にはどうでもいい「森友問題」ですが、保育園がいきなり閉園となると、困るのは園児とその家族です。

そうでなくても待機児童問題が深刻なのに、こんなことが原因で園児がとばっちりを食らうのは、いけません。

誰とは言いませんが、あのオバちゃん、なんとかしてほしい。

今朝のテレビのニュースで「保育園が授業停止になる」と言ったように聞こえたものだから、驚きました。

保育園でも「授業」って言うのか、へぇ、と感心してたら、画面を見ると「事業」でした。

「事業」が「ジュギョウ」に聞こえるのは、おかしいですか。私の耳の滑舌(?)が悪いのですか。

その反対に「授業」を「ジギョウ」と発音したり、「新宿」を「シンジク」と言ったりすることはありますね。

「拗音(ようおん)の直音化」というやつで、「シュ・ジュ」が「シ・ジ」と発音されるものです。

「手術」をゆっくり言えば「シュジュツ」ですが、「手術中」だと「シュジッチュウ」になったりします。

急いでるときには「スグ、シューツシマス」となったりもします。

これらはあくまで、くだけた日常会話で用いられるべき発音であって、正式なものではないはず。

ところが驚くべきことに、あのNHKが、「拗音の直音化」をつい最近まで「正式に」許容していたようです。

つまり、ニュース原稿を読むときに、「新宿」を「シンジク」のように発音してもよい、という規定です。

ほかにも「半熟(ハンジク)」「輸出(ユシツ)」などの直音化が認められて、使われてきたそうです。

東京出身者が多かったNHKが、東京方言(東京ナマリ)に配慮したものともいわれています。

1960年から続いていたこの取り決めは、驚いたことに、昨年12月にようやく廃止が決定されました。

やっぱりちゃんと発音しましょうよ、ということです。今頃ですか。

日本脳炎ワクチン不足

日本脳炎ワクチンの流通は、最近ずっと綱渡りの状態でしたが、ついに深刻な品不足に陥りそうです。

昨日から報じられているように、最大の原因は化血研問題ですが、いろいろな事情が重なった不幸な事案です。

(1)乳幼児へのワクチン接種の拡大

定期接種の対象年齢は0歳6カ月からですが、推奨接種年齢は3歳からとなっていました。

しかし乳幼児の日本脳炎発症例を受けて、小児科学会が、0歳6カ月からの接種の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1607.html" target="_blank" title="キャンペーン">キャンペーン</a>を行いました。

そのために、0歳から3歳の子どもが一斉に、日本脳炎ワクチンの接種を開始することになったわけです。

(2)北海道でのワクチン接種

40年以上北海道で患者が発生していないことなどを理由に、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1046.html" target="_blank" title="北海道">北海道</a>では定期接種が行われていませんでした。

転居や旅行など人の移動を考慮すれば、北海道の子どもたちもワクチンを接種しておくべきなのは当然のこと。

昨年度からようやく、北海道でも「悲願の」日本脳炎ワクチンの定期接種が開始されたところでした。

接種機会を逸していた子どもたちへの救済(キャッチアップ)も含めると、接種対象者はかなり膨らみます。

(3)化血研の不祥事と震災

不祥事問題で、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1557.html" target="_blank" title="出荷が停止">出荷が停止</a>され、ようやく再開を許された矢先、震災で工場が被災しました。

復旧後に製造を開始したものの、ワクチンが出来上がって出荷できるまでには1年半ほどかかるそうです。

在庫分の出荷を細々と続けてきましたが、それもほぼ底を突いた状態。ちょうど今がそういう状況なのです。

厚労省は、ワクチンが不足しているとは決して言わず、偏在しているのなら是正せよ、と言っています。

そんなお役人の責任逃れ発言を真に受けて、薬品卸による供給制限が今日から始まりました。

夏場は日本脳炎ワクチンの接種が増えますが、果たしてワクチンは足りるのか(たぶん足りない)。

名札を作る

最近のドラマを見る限りでは、刑事が提示する警察手帳は、縦型の見開きタイプですね。

上に顔写真や所属・階級なんかが記載されていて、下には「バッジ」が付いてる、米国風のヤツです。

昔のドラマで警察手帳といえば、黒い手帳の表紙に「警察手帳」と記されたものでした。

その中身を開くシーンを見た覚えがありません。たぶん、内部に顔写真など無かったでしょう。

しかし、手帳の表面を見ただけで犯人は観念し(または逃げ出し)、市民は萎縮するのでした(ドラマでは)。

でもあんなただの黒い手帳なんて、ニセモノが簡単に作れるのに、と子どもの頃は思っていました。

一般企業でも、最近は顔写真付きのIDカードのような名札を、首からぶら下げている方が多いですね。

名札をぶら下げたまま、街中でランチする人もいるし、名札を付けたまま当院を受診される方もいます。

そのことで、どのような不都合が生じ、どのように悪用され、どんな犯罪に巻き込まれるかはわかりません。

少なくとも、自分のフルネームや職場や役職名を職場外でも晒し続けることに、メリットはないでしょう。

一方で、自分の職場内では、自分がその職場の従業員であることを、つねに掲示し続ける意味はあります。

当院でもスタッフは全員、顔写真と名前と職種が記載された名札を付けています。

今日は、当院の新しい職員の名札を作りました。うちの職員の名札のカードは、ずっと私の手作りです。

写真を撮って、名札用のカードのレイアウトに印刷して、カットして、専用のホルダーに入れたら完成です。

その作業をするためのカッティングマットを、今日は新調しました。

これまではA4サイズのマットで我慢してきましたが、今日は思い切ってA2サイズを購入。二階級特進です。

カッティング用の定規も、これまでの35センチから、今日は思い切って、50センチに飛躍しました。

いずれも、名札作成のためにはオーバースペックですが、新しい文具の購入は、いつも楽しいものです。

黄砂に吹かれて

この2,3日、日本中を黄砂が吹き荒れています。昨日今日は、喘息発作を起こした方が何人も来院されました。

1週間ぐらい前にタクラマカン砂漠で起きた砂嵐が、偏西風に乗って日本に到達したもののようです。

途中で中国華北地方上空を経由したので、北京の大気の汚れも、黄砂と一緒に運ばれて来たかもしれません。

英語で黄砂は “yellow sand” というそうで、まさに黄色い砂です。そのまんまです。

しかし、カタカナで「イエローサンド」というと、「卵サンド」みたいなものを私は想像します。

中学校の頃、やや遠隔地から通学していた私は、半ドンの土曜日にも、弁当を持って登校していました。

下校中のバスとか、駅などで食べやすいように、土曜日の弁当はたいてい、サンドイッチでした。

母が作った、野菜とハムのみじん切りを卵とマヨネーズであえたサンドイッチは、私の好物でした。

「サンドイッチ」のことを「サンド」などと言うのは、もちろん日本人だけでしょう。

英語で “sand” は砂ですから、そのように略してしまうと、似ても似つかぬ別モノになってしまいます。

そういえば、高校時代に雨の中でサッカーをしているときに、友達のN君が言った言葉をふと思い出します。

ボールを受けるたびに体に砂が飛び散るのを、「三度三度(サンドサンド)、砂が付く」と。

「サンドイッチ」の語源が、トランプ好きの「サンドイッチ伯爵」であることは、よく知られています。

伯爵の名前は、その所領「サンドイッチ村」に由来しています。じゃあその “Sandwich” の語源は何?

調べてみると “wich” は “wick” と同じで、村の意味。なので “Sandwich” は「砂村」みたいなものか。

結局、「サンドイッチ」と “sand” は、元をたどれば無縁でもなかったわけです。

あまおう

「あかい・まるい・おおきい・うまい」の4つの頭文字をあわせて「あまおう」だと、最近知りました。

「甘さの王様」を連想させる、福岡県産の人気のイチゴの品種です。

こういうネーミングはあちこちで見受けますが、私の知る突飛なものは、香川の遊園地の名称でしょう。

その「レオマワールド」の「レオマ」は、「レジャーは・大西に・まかせろ」の略だとか。

言葉遊びとしての、いわゆる「縦読み」は、私も以前、当ブログで試したことがあります。

横書きの文章の、行頭の文字などを縦に読むと、何か意味のある別の言葉が出てくる仕掛けです。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-820.html" target="_blank" title="3年前の正月">3年前の正月</a>に、そこそこ苦心して書いたのですが、拍手の数からみて、思ったほどウケませんでした。

髙松に住んでいた頃、レオマには何度か行きました。後に閉園し、経営者が変わって再開園しているようです。

すでに、社長も大西氏ではないのですが、名称は「NEWレオマワールド」です。

香川の人にとって、レオマは遊園地の代名詞なので、敢えて変えなかったのかもしれません。

「あまおう」と「甘王」の商標登録を調べると、JA全農が「果実、野菜、苗」で登録しているようです。

その登録日のわずか5日後に、さかえ屋が「菓子、パン」で「あまおう」の商標を、あわてて出願しています。

するとこんどはJAが、その他のありとあらゆる食品や飲料や酒類で、「あまおう・甘王」を出願。

さらにJAは「歯磨き、化粧品、靴クリーム、靴墨」などにも、「あまおう・甘王」を登録していました。

食品や飲料や、歯磨きまではまあわかりますが、どうして靴墨ですか。

医療用ペンライト

診察道具シリーズ、第2弾。<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2037.html" target="_blank" title="先日">先日</a>は聴診器だったので、今日はペンライトです。

内科・小児科系の外来診療では、おもに口腔内を、たまに瞳孔を診るときにペンライトを使います。

以前は、すべての診察室や処置室等に、それぞれペンライトを配置していたのですが、やめました。

900円ぐらいの安いペンライトを多数購入したら、すぐに全部故障したからです。安物買いの銭失いです。

廉価品はスイッチ部分の耐久性が劣りますね。それに懲りて今は、ちゃんとしたモノを使っています。

それがウェルチ・アレンという医療機器メーカーの、医療用ペンライト(医療用照明器)です。

最初からコレを買っときゃ、いままでの無駄な買い物をせずに済んだのに、と思うのは毎度のこと。

このメーカーの耳鏡も、毎日使っています。勤務医時代には、手術用ヘッドライトでもお世話になりました。

ウェルチのペンライトは、作りがしっかりして質感が高く、光の色調も広がりも良いですね。スイッチも頑丈。

ただし専用のハロゲンランプが高額です。長く使えばしょうがないのでしょうけど、ランプがよく切れます。

あんまりたびたび切れるので私の方もキレて、とうとうLEDの替電球を買いました。これがまたやけに高い。

でも思い切ってLEDの替え球を買ったら、こんどは現在使用中のハロゲンランプが、なかなか切れません。

驚いたことにこのペンライトは、医療機器納入業者から買わなくても、Amazonでも売っています。

Amazonのサイト内の「検査・医療器具ストア」の商品って、思いのほか充実してますね。

「医療従事者のみ購入可能な医療機器が含まれています」という警告を見ても、たじろぐことはありません。

「あなたは、医療関係従事者ですか?」という質問が出たら、「はい」をクリックすれば買えるのです。

こういう確認方法って、どれだけ意味があるんでしょうね。

医療を取り巻く問題

同年代の第一線の医師が集まり、医療を取り巻く諸問題を語り合う懇親会が、昨日と今日、開催されました。

今年の会場は、福岡の「ヒルトン福岡シーホーク」でした。

久しぶりに行ってみると、あのトロピカルでゴチャゴチャしたジャングルが消え失せ、スッキリしていました。

ちょうど晴天に恵まれ、ホテルの「舳先」部分のレストランから海を見渡す景色は、なかなか良かった。

討論テーマは多岐にわたり、ここにすべてを書き尽くせませんが、一部をご紹介します。

(1)「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1610.html" target="_blank" title="善きサマリア人の法">善きサマリア人の法</a>」問題

航空機内で急病人が出た際に、「お客様の中に、お医者様はいらっしゃいませんか」とアナウンスされます。

これに応じた医師の行為は、たとえ結果が悪くても責任は問われない。それが善きサマリア人の法です。

米国などでは認められていることですが、日本では明確な規定が無いので、下手をすると罪に問われます。

今日の懇親会の参加メンバーに、幸か不幸かそのような目に遭遇し、機内で医療行為を行った者がいました。

幸い、事なきを得たそうですが、日本では今なお、結果が悪ければ訴えられるケースが、時々あります。

法整備上の問題だけではなく、ボランティア活動に対する日本人の考え方の特殊性があると思います。

(2)「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1826.html" target="_blank" title="敷地内禁煙">敷地内禁煙</a>」問題

総合病院でこれを実現するのは、形式的には可能でも、実際には困難。隠れタバコも出てきます。

今回の討論で、タバコとは関係ない疾患で入院している喫煙者の強制禁煙問題について、初めて意識しました。

一般男性の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1971.html" target="_blank" title="喫煙率">喫煙率</a>は、2016年で29.7%とのことなので、現時点ではまだ喫煙ルームは必要でしょう。

(3)「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-72.html" target="_blank" title="海外で心臓移植">海外で心臓移植</a>」問題

渡航手術費用を募金で集め、子どもの命を救ったという「美談」に、日本人は感動します。

しかし「移植が必要な患者の命は自国で救う努力をするべき」、というのが国際学会でのルールです。

このルールに違反して例外を認めてもらうための割り込み手数料が、「渡航手術費用」の大半だそうです。

(4)「心臓外科手術中の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-225.html" target="_blank" title="人工心肺">人工心肺</a>トラブル」問題

割愛します。

予約投稿のリスク

毎年恒例の「日本の医療とその他を夜通し語り合う懇親会(仮)」が、今夜福岡で開催されたはずです。

私は数年ぶりに、この会合に参加したはずです。楽しんだはずです。

仕事のあと直ちに、熊本駅から新幹線に飛び乗る必要があったため、当ブログはあらかじめ執筆したものです。

それを予約投稿という形でアップロードし、指定日時に自動的に投稿されたのが、本稿というわけです。

この手法は、以前にも活用したことがあり、今回のようなケースや、旅行時にも役に立ちます。

なにしろ当ブログは、5年前の4月15日からこれまで、5年以上の連続投稿を更新中なのです。

たとえ天変地異(熊本地震)が起きても、必ず毎晩投稿し続けてきたブログです。

会合に参加するからといって、中断はしたくない。

懇親会のあとで書くことは、ほぼ不可能。ていうか、ぜったい無理。意識レベルも怪しいかもしれません。

このような予約投稿でリスクがあるとすれば、アップロード後に、重大な突発事項が起きる可能性です。

たとえば1年前の熊本地震の前震の夜、私が書きかけていたのは、のんきな話題のブログでした。

NHKのニュースを見ながら、パソコンに向かっていたら、突然の大地震。

その後、余震に揺られながら、地震直後の様子を伝えるブログを書いたのでした。

地震前に投稿して外出でもしていたら、その重要な日に、すっとぼけたブログになってしまうところでした。

なのでこのブログを書きながらいま、今夜だけは北朝鮮が暴発しないことを祈っているのです。

2020年に新憲法

「2020年を、新しい憲法が施行される年にしたい、と強く願っています」

憲法記念日の今日開催された、改憲派の集会に寄せたビデオメッセージで、安倍首相はこのように述べました。

ずいぶん大胆な発言をしたものだと驚きますが、今日はその話は掘り下げません。

同じく今日、改憲に反対する憲法学者らでつくる「全国憲法研究会」の講演会も開催されました。某教授曰く、

「『あなた手術しましょう、どこを切るかはあとで考えましょう』。今の改憲論は必要もないのに、とにかく手術を薦める医師のようで、信じないほうがいい」

あのね、言っときます。そんな医者はおらん。

手術を薦めるのは、それが医学的に必要だからです。とにかく薦めるのは、治療を急ぐ理由があるからです。

治療戦略を十分練って、術式を検討し尽くした上で、外科医は手術に臨むのです。

「どこを切るか」をあらかじめ考えておかなければ、手術など始められません。

「必要もないのにとにかく手術を薦める医師のよう」という某憲法学者の発言は、医師蔑視の表現です。

このような発言を平気でしてしまうのは、某大臣の失言と同じで、日頃からそのように考えているからです。

安倍首相の発言や政策を、論理的に批判するのは結構ですが、医者は関係ありません。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1355.html" target="_blank" title="たとえ話">たとえ話</a>には、一瞬納得させられることがありますが、じっくり考えれば、なんの科学的根拠もないのです。

分かり易いたとえ話を上手にする人の話ほど、よくよく疑いながら聞かなければなりません。

聴診の工夫

友達がFacebookで「激安聴診器」の話を投稿していたので、少しに気になって書いています。

一流品のコピー品とのこと。本物の10分の1以下の価格ですね。たぶん中国製か。

聴診器で事故や障害が起きるとも思えないので、ちゃんと聴けりゃいいんでしょうけどね。耐久性は大丈夫か。

学生時代からこれまでに、私も多数の聴診器を使ってきました。その<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1784.html" target="_blank" title="遍歴">遍歴</a>については、前にも書きました。

いま、メインの診察室(第2診察室)では「リットマン カーディオロジーIII」という聴診器を使っています。

「カーディオロジー(心臓病学)」という名前が付けられているように、循環器用ということになっています。

それ以外の診察室や処置室にもそれぞれ聴診器を置いて、いちいち持ち歩かなくてもいいよういにしています。

これらの部屋ではおもに呼吸器等の急性病変を診るので、聴診器は一般的な「リットマン クラシック」です。

冒頭に紹介した記事の中に、冬場には聴診器を手で温めてから患者さんに使え、という話がありました。

これを読んで私は、かつて聴診器を<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1139.html" target="_blank" title="ホットプレート">ホットプレート</a>で温めていたことを思い出しました。

もちろん今は、そんなヘンテコリンなことはしていません。

どの季節でも、聴診の直前には自分の手のひらで聴診器を温めます。人肌になじんでから、聴診を開始します。

しかも最初は胸ではなく、上腹部正中に聴診器を当てます。この場所の皮膚感覚は、比較的鈍感だからです。

これで、聴診器の冷たさを身構えていた患者さんが、そうでもないことを感知し、緊張感も和らぐのです。

子ども相手でも、同じようによく温めてから使いますが、聴診器を当てられたら大泣きする子がいます。

母親はたいてい「あー、ちゅめたかった(冷たかった)ねー」と言って、子どもをあやしたりします。

「いや、そのはずはありません。聴診器はちゃんと温めてましたから」なんて言い訳は、もちろんしません。

聴診時に子どもを泣かせないことが、医者の腕の見せ所だからです。私もまだ工夫が足りないのでしょう。