インフル油断せずに

インフルエンザの先週の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1951.html" target="_blank" title="定点当たり報告数">定点当たり報告数</a>は、熊本県が16.41、熊本市が11.68と、流行の終息基準間近です。

しかし流行はピークを越えたとはいえ、まだくすぶっています。

1月にA型に罹った方が、最近になってB型を発症するようなケースも目立ちます。

A型に感染しても、B型の免疫は獲得できないのです。その逆もまたしかり。

それどころか、A型インフルエンザに2度罹った人も、複数います。

どちらも迅速検査で陽性反応が出ており、ほぼ間違いはないでしょう。

一方がA(H3;いわゆるA香港型)で、もう一方がA(H1 pdm09;ちょっと前の新型)かもしれません。

そんな中、1月2月を無事乗り越えた当院職員が、3月に入って次々とインフルエンザに罹ってしまいました。

型が変わったためでしょうか、決して油断したわけではないのです。

規定通り5日以上の出勤停止としているために、今日は同時に2名が出勤停止中という異常事態に陥りました。

マンパワー不足でてんてこ舞いの診療でしたが、これが1月のハイシーズンでなくてよかったと思います。

さて心配事は、もしも私がインフルエンザに感染したら、ということ。

開院して9年半になりますが、まだ一度もインフルエンザに罹っていません(←たぶん)。

だから一度も、クリニックを病欠したことはありません。そう言えば、その前の市民病院時代もそうでした。

その前の、某大学病院時代には、高熱で寝込んだことが一度ありました。ちょうど年末年始のこと。

医者にはかかりませんでしたが、たぶん、インフルエンザだったのでしょう。

12月30日から年賀状の準備をする予定が狂い、体調回復後の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1907.html" target="_blank" title="1月2日から準備">1月2日から準備</a>を開始したことを思い出します。

油断大敵です。

プラグインハイブリッド

新型プラグインハイブリッド車(PHEV)「プリウスPHV」の、日本での発売が発表されました。

ガソリンを使わない状態で、モーターだけで最長68.2km走れる、というのがウリのようです。

つまり私のように、日頃は職場かハンズマンに行くときにしか車を使わない人間は、ほぼガソリン不要です。

自宅で毎晩充電しておけば、ガソリンスタンドに行くことはほとんどなくなるわけです。

「ガソリンを使うのは、充電を忘れたときか特別に長距離移動が必要となったときに限られる」

トヨタの内山田会長はこう言ってますが、ならば私は尋ねたい。

そのような限定的な使用だけのために、モーター+ガソリンエンジンという、複雑な構造が必要なのですか。

単純に、モーターだけで良くないですか。空いたスペースに、バッテリーを積みましょうよ。

EVではなくPHEVを推奨するメーカーは、ガソリンエンジンを捨てきれないだけのように思えてなりません。

10年後や20年後とは言いませんが、50年先を見据えたら、EVの開発に全力投球すべきじゃないですか。

私はもちろん、ガソリンエンジン車が好きです。

いまの車の直6(直列6気筒)エンジンは、とても感触が良いし、その前の車の直5も良いエンジンでした。

EVとの違いは、音と振動です。音は多分に色づけされていますが、振動にはエンジンの個性が感じられます。

おそらく、CDとレコードの違いのようなものでしょう。ということは、やがてすべてEVになるのでしょうか。

音と振動を電気的にチューニングした「エンジンモード」のあるEVができたら、私はそれでもいいです。

3月9日は脈の日

3月9日は「日本脳卒中協会」が制定した「脈の日」です。3(みゃ)月9(く)日という語呂合わせ。

ではなぜ「脳卒中」協会が「脈の日」か、というのが今日のテーマです。

脳卒中(脳血管障害)は、私が生まれた昭和30年代から50年代半ばまでは、日本人の死因の第1位でした。

その後、がんにトップの座を渡し、やがて心臓病にも抜かれ、数年前には肺炎にも抜かれて今は第4位です。

なんだ、脳卒中って、どんどん減ってる病気なんだ、と思ったとしたら、それは大間違い。

死亡する人が減っただけの話で、脳卒中の患者数自体はとても多いのです。

現在入院治療中の患者数でいえば、脳卒中はがんの1.5倍、心臓病の3.5倍といわれます。

医学の進歩によって死亡率は減りましたが、脳卒中による後遺症のある方は、おおぜいいるということです。

日本人の脳卒中は昔は「脳出血」が多かったのですが、最近は脳血管が詰まって起きる「脳梗塞」が主体です。

脳の血管がより太い部分で詰まった場合ほど、脳細胞の壊死範囲が広いので、より重い後遺症が残ります。

脳内で血栓ができる「脳血栓」よりも、別の場所から大きな血栓が脳に流れてくる「脳塞栓」の方が重症です。

心臓の内部にできた大きな血栓が、脳に流れて詰まる「心原性脳塞栓」は、脳塞栓の中でもとくに重症です。

左心室のように、常に力強く拍動している心臓の内部には、普通は血栓などできません。

左心房もそれなりに拍動しており、大きさや内膜(内面の膜)や弁に異常がなければ、血栓はできません。

血栓ができるのは、左心房の拍動が止まって震えるような動きになる「心房細動」という不整脈のときです。

左心房内で血液がよどむと、小さな血栓ができはじめ、だんだんと成長して大きなかたまりになります。

なんかの拍子に、その血栓が左心室の方に流れると、勢いよく大動脈へ拍出されてしまいます。

それが運悪く頸動脈に向かった場合に、脳血管のどこかに詰まって、脳塞栓が起きてしまいます。

心房細動の治療法については割愛しますが、いま現在、自分が心房細動かどうかは、自分でチェックできます。

手首の動脈の拍動を、反対の手の人差し指と中指と薬指で触れてみて、規則正しいかどうかで判定します。

というわけで、今日は「脈の日」。今日から1週間は「心房細動週間」です。

抗生剤不使用の啓蒙

厚生労働省の有識者委員会が、軽い風邪や下痢には<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-396.html" target="_blank" title="抗生剤">抗生剤</a>の投与を控えるよう呼びかけたと、報じられました。

抗生剤の投与を控えるべき理由は、おもに次の2つ。

(1)軽い風邪はウイルス感染なのだから、抗生剤は効かない

(2)安易な抗生剤の使用によって、耐性菌が増える恐れがある

しかし一方で、風邪や下痢の患者を診て、それがウイルス感染かどうかを、確実に診断するのは困難です。

ウイルスや細菌を検出するための迅速検査や血液検査を、いちいち行うわけにもいきません。

病状の経過や臨床所見、周囲の流行状況等から、ウイルス感染かどうかを総合的に判断することになります。

そしてウイルス感染が確定的な場合を除いて、すべての感染症は、細菌感染の可能性を考慮しておくべきです。

とくに病状が重い場合には、先手を打って抗生剤を投与するという、リスクマネージメントもあるでしょう。

要は、風邪のように見える病状が、すべてウイルス感染だとたかをくくるべきではないということです。

結局、風邪に抗生剤を処方するかどうかは、その都度、医師が判断すべきものなのです。

そんなことは百も承知の厚労省が、あえて冒頭のような呼びかけをしたのには、理由がありそうです。

医師相手の呼びかけという体裁をとってますが、実は、一般国民への啓蒙ではないかと思うのです。

厚労省は「手引書」をまとめて、今月中に全国の医療機関に配布するそうです。

医療機関はそれを、安易に抗生剤を要求する患者さんに見せる、という使い方もアリなのでしょう。

近親者を執刀する

ドラマ『<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1974.html" target="_blank" title="A LIFE">A LIFE</a>』第8話では、キムタクが父親の心臓手術を執刀して、ちょっとしたトラブルが起きました。

「近親者は執刀しないのが外科の通例」だと、ドラマで言ってましたが、私には経験が無いのでわかりません。

それを敢えて執刀したキムタクが、手術のごく初期段階で肺動脈を傷つけ、かなり出血させてしまいました。

手術操作の準備として、大動脈に牽引用のヒモを回しておきます。これを「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1953.html" target="_blank" title="テーピング">テーピング</a>」といいます。

用いるのは、赤テープと決まっています。私の経験ではどこの病院でも赤だったし、ドラマでも赤テープ。

ついでに言うなら、上下大静脈は青テープ、肺動脈は黄テープというのも、たぶん全国共通でしょう。

大動脈の裏側に「直角鉗子」を入れ込んだ後、その先を少し広げ、テープの一端をつかみ、引き出します。

テープをつかむとき、大動脈のすぐそばにある肺動脈の壁も、同時に薄く挟み込んでしまうことがあります。

鉗子を引き出すときに抵抗があるので気付きますが、うっかり無理やり引き出すと、肺動脈が裂けます。

おそらくそのようないきさつで、キムタクも肺動脈壁を損傷したのでしょう。なんとか修復はできました。

近親者の執刀だから、余計な緊張をしていたということなのでしょうけど、そんなことってあるんでしょうか。

むしろ、手術の現場でよく見かけるのは、特別な患者を執刀する際の「格好つけ」の問題です。

手術の見学者がいたりVIP患者の執刀の場合、日頃よりもカッコよく手術したいと、つい思いがちです。

なので自信なさげに見える慎重な操作や、くどすぎる確認作業を、そのような時に限って省いてしまうのです。

魔が差すというのは、まさにそういう時です。

手術は、緊張しすぎて失敗するよりも、油断して失敗することの方が、ずっと多いと思います。

駐車ミスで衝突した件

今夜、帰宅して自宅のガレージに駐車中に、リアバンパーを後ろの塀にぶつけてしまいました。

そのようなヘマをやらかさないために、二重三重の予防策があったのに、です。

(1)車輪止め

まかり間違っても車が塀まで下がらないように、コンクリートの車輪止めを設置しています。

(2)後方モニター

車をバックさせるときは、リアビューや合成映像がモニターに映り、駐車を正確にアシストしてくれます。

(3)緊急ブレーキ機能

バックしている際に障害物に接近すると、自動的にブレーキがかかり、車が衝突するのを確実に阻止します。

ところが今夜の場合、

(1)車輪止めの無いところに駐車した

周辺道路の気になる出来事に気を取られ、いつもより30センチほど、横にずれてバックしたのです。

(2)後方モニターが、突然消えた

バックの途中で突然、システムエラーが起きました。驚きのあまり、私の集中力と判断力が失われました。

(3)緊急ブレーキが作動しなかった

実は、この装置はオフにしていたのです。そうしないと、ギリギリまで車を下げることができないからです。

このように、私の不注意やシステムエラーが重なって、せっかくの衝突回避策も無効になってしまうのです。

明日、ディーラーに車を持って行こうと思ったら、明日はディーラーの定休日というオマケ付き。

あらためて、リアバンパーを触ってみたら、ザラッと傷ついてました。こういうの、いちばんガッカリです。

インフル悪魔の証明

インフルエンザの検査を「希望」して来院される方が、毎日何人かいます。その目的は、

(1)早期治療のために、インフルエンザかどうかをはっきりさせたい

(2)登園・登校・出勤等のために、インフルエンザではないことを確認したい

病状や状況(家族にインフルエンザがいる等)によっては、(1)の場合、必ずしも検査は必要ありません。

たとえ検査をしなくても、医学的にインフルエンザとの診断がつくことは、しばしばあります。

したがって痛い検査をしなくても、インフルエンザの治療を開始することは可能です。

問題は(2)です。迅速検査キットで「インフルエンザではない」ことを立証するのは、本当は困難です。

とくに発症したばかりの人では、(1)の目的なら検査することがあっても、(2)の目的では検査しません。

そもそも、インフルエンザの検査をするかどうかは、医学的状況等をふまえて医師が決めることです。

誰かが希望するから検査する、というわけではありません。これは、ノロウイルスなどの検査でも同じです。

ところが最近の保育園等では、インフルエンザではないという「悪魔の証明」を求めるケースが目立ちます。

迅速検査の感度は60〜80%程度ですから、インフルエンザを完全に否定することなど、理論的に不可能です。

そのような場合、私は安易に検査をしない方針です。

「検査が陰性=インフルエンザではない」という、誤ったお墨付きだけは、与えたくないからです。

責任転嫁で自滅

百条委員会を前に、石原慎太郎元東京都知事は自ら記者会見を開きました。その理由として、こう言ってます。

「とてもそれまで待てない心境なんです。これはね、座して死を待つつもりは私はございません」

どうやら石原氏は、委員会では死ぬと思っているようです。それだけの理由があると、自覚しているわけです。

そのまな板の鯉が、まな板にのるまでの待ち時間が長すぎて耐えられないと、そういうことでしょうか。

発言力のある大物なのだから、悠然と構えて、都政・都庁の闇を、あらいざらいぶちまけたらどうですか。

なんなら本を書きませんか。面白けりゃ買いますよ。

米国のドラマや映画だと、委員会の直前にキーパーソンが急死(変死)する、というのが定番ストーリーです。

まさか今回は、そこまでのことはないでしょうけどね。

ただ、自ら先手を打って記者会見に臨んだわりには、石原氏の株が上がったとも思えません。

「自分が決裁したことの責任は認める」と、少し格好良く言ったあとに、責任逃れの言葉が続いたからです。

つまり「決裁責任は私にある→しかし細かいことは知らなかった」の順で言うと、言い訳が記憶に残るのです。

もしも「細かいことは知らなかった→しかし決裁責任は私にある」と言ってたら、多少は誠実に聞こえたはず。

ていうか、自分で企画した会見なら、しかも作家なら、もう少しうまくしゃべれば良いのに。

ガッテンできない話

NHKの「ためしてガッテン」がいつの間にか、ただの「ガッテン!」になってます。

「ためして」無いのです。「ためさずガッテン!」です。偶然か、番組の質も落ちたような気がします。

今週は「決定版!コラーゲン100%活用SP」と題して、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-497.html" target="_blank" title="コラーゲン">コラーゲン</a>が皮膚や関節に効く、という話でした。

以前この番組では、「コラーゲンは食べたら消化分解されて、コラーゲンではなくなる」としていました。

今回はそれを覆し、「コラーゲンが十分に分解されなければ、またコラーゲンが作られやすい」という話。

ある研究を参考にして、必ずしも定説ではない理屈で、コラーゲン食品の効果を宣伝するような趣旨です。

これはまさしく先週の放送と同じで、一部の学説を過大に評価して、一般人に間違った知識を与えるものです。

大炎上したと言ってもよい先週のテーマは、「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」でした。

「特定の睡眠剤(2014年発売の『ベルソムラ』)を飲んで熟睡すると、血糖値が下がる」というのです。

たしかに、不眠は耐糖能を悪化させるので、睡眠剤によって熟睡できれば、血糖値が下がりやすくなります。

睡眠リズムが改善することは、食生活をはじめとする生活習慣の改善にもつながるでしょう。

また睡眠剤のなかでは、まったく新しいメカニズムで効く『ベルソムラ』が、最近の話題になっています。

ただそれだけの話だと私は思うのですが、まさか、糖尿病の治療のためにこの薬を処方するなど、論外です。

標準的でもなければ、保険も利かないような治療法を、NHKが大々的に取り上げるのは、問題です。

回線足りるのか

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1974.html" target="_blank" title="Netflix">Netflix</a>を利用してて思うのですが、誰もがネットで映画を観たりしたら、回線はパンクしないのでしょうか。

米国ではトラフィックの70%が、動画や音楽のストリーミングで占められていると、IT記事にありました。

その内訳を見たら、Netflixが37%、YouTubeが18%と、この2つが突出しています。

日本ではどうなのか、総務省総合通信基盤局が年に2回集計して公表しています。そのタイトルが、

「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果」

まず「トラヒック」という言葉遣いに、ズッこけます。官公庁での公用語なのでしょうね、たぶん。

おそらく「グラヒック デザイナー」なんて言葉も使われてるんでしょう。

それはともかく、日本のダウンロードトラヒックは、過去1年で52%ほど増えているそうです。

同じペースで増えるとすると、6年後には11倍、10年後には58倍、20年後には3300倍になる計算です。

ありとあらゆるモノがネットにつながる「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-827.html" target="_blank" title="IoT">IoT</a>」の時代が来るので、アップロードトラヒックも急増します。

そのIoT用チップの80%が、ソフトバンクが買収したARMのCPUを搭載しているそうです。

今後20年間で1兆個のARMチップを出荷するという<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1894.html" target="_blank" title="孫社長">孫社長</a>。IoTを制して世界を制するつもりなのでしょう。

その時代に対応すべく、本格的な衛星インターネットサービスを、いくつかのIT企業が計画しています。

これは静止衛星よりもずっと低い軌道に、何百何千という通信衛星を打ち上げるものです。

有線の電話やネット回線とか地上波のテレビ放送が、必要でなくなる時代がやがて来るかもしれません。

まさか雷雨時に、テレビもネットも電話もすべてつながらなくなるようだと困りますけどね。