「オゼックス」という抗菌剤が、小児のマイコプラズマ肺炎に対して処方できるようになりました。
オゼックスは、ニューキロノン系という種類の抗菌剤の中では、7年前に初めて小児用が認められた薬です。
ただし副作用を考慮して、その適応は「肺炎、コレラ、中耳炎、炭疽」に限られていました。
しかもその肺炎は、肺炎球菌やインフルエンザ菌による肺炎などに限定されていました。
マイコプラズマ肺炎にも効くことはわかっていましたが、先月までは正式には使えなかったわけです。
従来、マイコプラズマ感染(肺炎)に対しては、マクロライド系という抗生剤が第一選択でした。
いま「抗菌剤」と「抗生剤」を、あえて書き分けましたが、今回その話題は掘り下げないでおきます。
ともかく、上記以外の疾病に対してオゼックスをを使うことは禁じられていたわけです。
実際の臨床では、治りの悪い中耳炎に対して、よく使われています。
ところが、昨年流行したマイコプラズマ肺炎には、マクロライド系がほとんど効きませんでした。
マクロライド系ではまったく下熱しないし咳もひどいお子さんに、切り札としてオゼックスを処方しました。
すると、ウソのように下熱して、たちどころに病状が改善するということを、昨年何度も経験しました。
ただしその際、レセプト上の病名は中耳炎です。マイコプラズマ肺炎にオゼックスは使えないからです。
もちろん、まったく中耳炎所見がなかったわけではない症例を選んだと考えてください(苦しい言い訳)。
そんな言い訳も、今月から不要になりました。今後は堂々と、マイコプラズマにオゼックスが使えます。
ただし逆に、軽い中耳炎などにいちいちオゼックスを使うのは、避けなければなりません。
安易に使っていると、やがてそのうちオゼックスが効かないマイコプラズマが出てくるでしょう。
このようにしてわれわれ医者(あるいは人類)と病原体は、いたちごっこを続けているのです。