手術と準備

手術シーンが減って、どんどんつまらなくなってきたドラマ『A LIFE』第9話ですが、まだ見てます。

「○○術を始めます」と始まる手術は、術野をほとんど写さないまま、短時間で創閉鎖シーンに至ります。

キムタクの心臓手術も、浅野忠信の脳外科手術も、ともに執刀医が皮膚縫合を最後まで行っていました。

そんなことってあるんでしょうか。皮膚縫合の段階で、若手医師が執刀を交替するのが普通じゃないですか。

外科医はそのように、簡単な手術手技から修練を積み重ね、だんだんと難しい部分を担当していくものです。

「メッツェン」という指示で手渡されたハサミで、今日も執刀医たちは皮膚縫合の糸を切っていました。

そんなことってあるんでしょうか。皮膚の縫合糸ごときを、大切な「メッツェンバウム」で切るなんて。

普通は「クーパー」か、百歩譲って「メイヨー」でしょう、そんな糸を切るときは。

そんな問題点はあったものの、今日は良いシーンもありました。それは「シャドーオペレーション」です。

手術操作の流れを具体的にイメージしつつ、手を動かし声を出して「通し練習」をすることです。

私も研修医時代からずっと、大事な手術の前日には必ず、シャドーオペレーションをしました。

手術の最初から最後までのすべての手順を、実際に行う通りに、きわめて細かく進めていきました。

執刀医として一人で行うこともあれば、助手やナースも参加させてチームで行う場合もありました。

私が初めて心臓手術を執刀したときの、手術前夜のシャドーオペレーションは、今でもよく覚えています。

テーブルを隔てて指導医と向かい合って立ち、「メス」という言葉からシミュレーションを始めました。

次に何をやるのか、たびたび手順がわからなくなり、自分の勉強不足・準備不足を思い知ったものです。

そんなことを思い出させてくれたので、今回の『A LIFE』はまあ、許すことにしますが、次回がもう最終回。