3月9日は「日本脳卒中協会」が制定した「脈の日」です。3(みゃ)月9(く)日という語呂合わせ。
ではなぜ「脳卒中」協会が「脈の日」か、というのが今日のテーマです。
脳卒中(脳血管障害)は、私が生まれた昭和30年代から50年代半ばまでは、日本人の死因の第1位でした。
その後、がんにトップの座を渡し、やがて心臓病にも抜かれ、数年前には肺炎にも抜かれて今は第4位です。
なんだ、脳卒中って、どんどん減ってる病気なんだ、と思ったとしたら、それは大間違い。
死亡する人が減っただけの話で、脳卒中の患者数自体はとても多いのです。
現在入院治療中の患者数でいえば、脳卒中はがんの1.5倍、心臓病の3.5倍といわれます。
医学の進歩によって死亡率は減りましたが、脳卒中による後遺症のある方は、おおぜいいるということです。
日本人の脳卒中は昔は「脳出血」が多かったのですが、最近は脳血管が詰まって起きる「脳梗塞」が主体です。
脳の血管がより太い部分で詰まった場合ほど、脳細胞の壊死範囲が広いので、より重い後遺症が残ります。
脳内で血栓ができる「脳血栓」よりも、別の場所から大きな血栓が脳に流れてくる「脳塞栓」の方が重症です。
心臓の内部にできた大きな血栓が、脳に流れて詰まる「心原性脳塞栓」は、脳塞栓の中でもとくに重症です。
左心室のように、常に力強く拍動している心臓の内部には、普通は血栓などできません。
左心房もそれなりに拍動しており、大きさや内膜(内面の膜)や弁に異常がなければ、血栓はできません。
血栓ができるのは、左心房の拍動が止まって震えるような動きになる「心房細動」という不整脈のときです。
左心房内で血液がよどむと、小さな血栓ができはじめ、だんだんと成長して大きなかたまりになります。
なんかの拍子に、その血栓が左心室の方に流れると、勢いよく大動脈へ拍出されてしまいます。
それが運悪く頸動脈に向かった場合に、脳血管のどこかに詰まって、脳塞栓が起きてしまいます。
心房細動の治療法については割愛しますが、いま現在、自分が心房細動かどうかは、自分でチェックできます。
手首の動脈の拍動を、反対の手の人差し指と中指と薬指で触れてみて、規則正しいかどうかで判定します。
というわけで、今日は「脈の日」。今日から1週間は「心房細動週間」です。