副大統領が上院議長

米国副大統領が上院議長を兼務していることって、常識なんでしょうか。恥ずかしながら私は今朝知りました。

米上院で賛否が50対50と割れた採決で、議長決裁票を投じた上院議長こそが、ペンス副大統領だったと。

このことによって、長年の私の疑問が解決しました。それはつまり、大統領権限継承順位です。

順位は17位まで決められていて、何があっても誰かが大統領を引き継ぐ体制になっているようです。

『24 -TWENTY FOUR-』などのドラマや映画で、私は大統領権限継承の瞬間を何度も目にしてきました。

大統領職を引き継いだ副大統領が、すぐに殺害されて、下院議長が大統領に就任した映画もありました。

でも、副大統領の次がどうして上院議長じゃなく下院議長なのか。ずっと疑問だったのですが、今朝解決です。

じゃあ、大統領と継承順位17位までが全員、テロで死んだらどうするんだ、とアホなこと考えてしまいます。

ところが、すでにそのことも考慮されているようで、さすがアメリカ。恐れ入ります。

18人全員が、同時に連邦議会議事堂には集まらないようにして、誰かが生き残るようにしているそうですね。

大規模なテロが起きて、順位が終わりの方の閣僚が大統領になる、なんてことが、ドラマになったりします。

『サバイバー: 宿命の大統領』は、キーファー・サザーランド演じる下っ端閣僚が、大統領になる話とか。

あれだけ国家に尽くしたジャック・バウアーなんだから、もう大統領になったって、いいでしょう。

サテンスキー事件

人間関係や経営問題やらが絡んできて、ドラマっぽくなって来たけど視聴率が低迷している『<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1939.html" target="_blank" title="A LIFE">A LIFE</a>』第4話。

手術シーンはめっきり減りましたが、それでも、リアリティー優先のマニアックな描写はまずまずでした。

術式は「左室形成術および冠動脈3枝バイパス手術」。左心室を修復し、バイパスを3本縫着する手術です。

「バイパスのグラフトはリタ、ライタ、ジーイーエーを使う」というセリフには、説明も何もありません。

このドラマ、手術の雰囲気と流れをリアルに見せるためなら、余計な解説は不要と、割り切っているようです。

ただ、人工心肺装置がほとんど画面に登場しません。心臓手術の現場としては、大いに違和感があります。

問題が起きたのは「IVCのテーピング」をしたときのこと。IVCとは下大静脈のことですが、これも説明なし。

人工心肺のチューブをIVCに挿入したあとで、血管を締め付けるために、あらかじめヒモを巻いておくのです。

この時にヒモを通す道具(鉗子)には、長さ、太さ、彎曲、角、歯、溝によって、種類がヤマほどあります。

しかも、それぞれの鉗子に名前が付いています。たいていは、外人の名前です。

看護師が、外科医(第一助手)の指示に背いて、自己判断で「サテンスキー鉗子」を手渡しました。

「心臓を脱転したくないので、サテンスキーの方が良いと思います」という看護師の発言もすごい。

第一助手がムッとすると、執刀医のキムタクが「僕もサテンスキーの方がいいと思いますよ」と助け船。

これが他の病院に出向いて行った「出前手術」だったものだから、双方の病院の関係がこじれてきます。

ていうか、何度も何度も「サテンスキー」という言葉が説明もなしに出てくるドラマって、どうなの。

「サテンスキー」をどう使うのか、なぜもめるのか、一般の視聴者はそのイメージすらつかめないでしょうに。

温泉と地震

2月6日なので「風呂の日」だろうと思ってググったら、違いました。「風呂の日」は毎月26日なんですね。

それが11月だと「いい風呂の日」で、4月だと「よい風呂の日」になったりする。

それはそれでかまいませんが、2月6日も風呂の日じゃだめですか。むしろ風呂の日の総本山じゃないですか。

さらに言えば、平成26年は「風呂の年」だったのでしょうか。となると26世紀は「風呂の世紀」か。

先日のブラタモリでは、別府温泉をとりあげていました。湧出量と泉質の多さは日本一だとか。

その秘密は、火山から二手に広がる断層とそれに挟まれた扇状地という、地形の妙だという説明でした。

「断層のおかげ」みたいな表現を、タモリはやや言いにくそうに話し、少しだけ地震にも触れていました。

その別府を通る断層帯ではまさに、昨年4月16日の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1654.html" target="_blank" title="熊本地震">熊本地震</a>の本震のとき、別の地震が起きていました。

熊本の本震M7.3に誘発されて、その32秒後に、M5.7の地震が大分で起きたことがわかっています。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1688.html" target="_blank" title="活断層">活断層</a>には歪みがたまっており、1000年から数万年間隔で、ついにずれ動いて地震が起きます。

熊本の断層がずれて歪みが解消したことで、大分の断層の歪みが耐えきれなくなり、ついにずれたのか。

前震に連動して本震が起き、それに誘発されて阿蘇や大分の断層までが活動したのが、一連の熊本地震です。

そして今回の地震活動を起こした断層はすべて、「別府-島原地溝帯」に並んでいます。

これはつまり、別府・由布院・黒川・雲仙などの温泉地を結ぶ、まさに「九州温泉帯」とも呼べるラインです。

「断層のおかげ」「火山のおかげ」という表現も、まあ、しょうがないかもしれません。

警報レベルを超えた?

熊本県と熊本市がそれぞれ、「インフルエンザが警報レベルを超えた」と発表しました。2日前のことです。

警報レベルかどうかは、定点医療機関あたりの1週間のインフルエンザ報告数によって決められます。

定点医療機関は県内に80カ所(そのうち熊本市に25カ所)。県と市がそれぞれ、集計結果を公表しています。

今年第4週 (1/23-1/29) の報告数は、県が40.51、市が43.64と、いずれも20台だった前の週に比べて激増。

警報レベルには「開始基準値」と「終息基準値」があり、インフルエンザでは、前者は30、後者は10です。

流行が拡大して、1週間の定点あたり報告数が30以上になると、警報レベルということになります。

しかしいつも思いますが、「警報レベルを超えた」という県や市の表現には、違和感がありますね。

超えたのは基準値であって、警報レベルを超えたわけじゃない。警報レベルよりも上のレベルはありません。

厳密に「警報レベル開始基準値を超えた」と言うか、もっと簡単に「警報レベルに達した」と言うべきです。

これはちょうど、「過半数を超えました」という表現の問題に似ています。厳密に言えば、これも誤りです。

「過半数=半数+1」ではありません。半数をいくつ超えたかにかかわらず、超えたらすべて過半数です。

この件は「おかしいけれどもっとふさわしい表現がないためにやむなく使う」とNHKのサイトにありました。

だからNHKも、「過半数以上」という表現はさすがに使わないとのことですが、ちょっと納得できかねます。

それなら「過半数に達しました」と言えばいいじゃないですか。「半数を超えました」だっていい。

オカシイとわかっている表現を「やむなく」使い続けずに、NHKが率先してふさわしい表現を使うべきです。

「警報レベルを超えた」も同じこと。役所は率先して、正しい言葉・表現を使うべきです。

そういうとこって、役所内で誰も気にならないんですかね。

あえ物で食中毒

こんどは松山赤十字病院で、ノロウイルスの集団感染が起きました。今回も、給食が原因と考えられています。

そのメニューは、「アジの南蛮漬け、ほうれん草と豆腐の白あえ、キュウリのレモンあえ」など、だそうです。

どうも、「あえ物」が怪しいですね。

和歌山県御坊市で起きた、ノロウイルスが原因と思われる集団食中毒の原因メニューは、「磯あえ」でした。

下ゆでしたほうれん草ともやしと、加熱したちくわを「あえて」から、刻みのりを加えたものだったようです。

もしかすると「あえ物」って、製造工程で病原体に汚染され易いんじゃないですかね。よく知らんけど。

あえる食材はそれぞれ、あらかじめ加熱してあっても、あえた後には、あえて火を通さないんでしょう? 

給食レベルの大量製造においては、両手でわっさわっさとあえてるんじゃなかろうかと、想像したりもします。

ちゃんと手袋をしてるんでしょうけど、その手袋の使い方が正しく守られているのか、心配になります。

まず<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-839.html" target="_blank" title="手袋の装着法">手袋の装着法</a>からして、外科医のように厳密とは思えません。清潔と不潔の区別もそうです。

外科医が手袋で触ってもいいのは、消毒した皮膚と、体の内部と、滅菌済みの手術器械や材料だけです。

ところが調理の現場では、加熱済みの料理も、調理前の食材も、同じ手袋で触れてしまう可能性があります。

調理道具や調理器具のスイッチやエプロンなど、汚染されていると考えるべきものに、触るかもしれません。

そのようなモノに手袋で触れたなら、すぐに水道水で手袋を洗う必要があります。水洗いだけでも有効です。

あと、洗った後の手袋で蛇口に触れるのも、やめましょう。蛇口は、手を洗う前にも触るところだからです。

清潔な操作には、調理場の工夫と、意識改革が必要です。

高額錠剤偽造事件

C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造事件が起きましたが、医薬品の流通経路って、複雑ですね。

厚労省が公表した「偽造品流通ルート」によると、今回のケースでは、9社の薬品卸が関与していたようです。

メーカーから薬局までの間に、卸が何段階も介在していること自体おかしくないですか。なんか闇がありそう。

C型肝炎が、肝がんの原因のうち約6割を占めることがわかっています。その治療法は随分進歩してきました。

かつてはインターフェロン注射が行われ、15年前から内服薬の併用が始まり、いまでは内服薬1錠だけです。

「夢の治療薬」として1年半ほど前に登場した「ハーボニー配合錠」はしかし、1錠で8万171円もします。

1日1回1錠を12週間。医療費は3割負担でも200万円以上になりますが、国から助成が出ます。

それでも、飲むときに手が滑って、床に落としてコロコロっと転がって見つからなくなったら大変な薬です。

さいわい、転がりにくい小判状の形になっています。落としても、すぐ見つけて拾って飲めるように?

薬の価格は、ひどく複雑かつ厳密なルールに基づいて国が決める、公定価格です。

製造原価や類似薬価格などさまざまな数値を、一定の規則で足したり掛けたり、こねくり回して算出されます。

計算したらひどく高額になったけど、役人は規則に縛られるので、1錠8万171円の薬価に決まったわけです。

さすがに価格が高すぎだろうと、昨年3月には、1錠5万4797円に大幅値下げされました。

これは<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1872.html" target="_blank" title="オプジーボのとき">オプジーボのとき</a>と同様の、「市場拡大再算定(特例)ルール」に基づく、薬価値下げの裏技です。

規則に縛られる役人が、なんとか規則で値下げできないかと鉛筆舐め舐め作った、屁理屈ルールです。

ハーボニーは、このルールの初適用医薬品となり、31.7%ほど値下げされました。

それにしても、超高額な錠剤であることに変わりはありません。悪い人は、偽造したくもなるでしょうね。

ブロッコリーで『安心』

「医師が愛食!ブロッコリーを毎晩1株食べて中性脂肪が正常化!」

本日発売の『安心』3月号(マキノ出版)に、このような記事で紹介された医者がいます。私です。

この健康雑誌には、今回ブロッコリー特集が組まれていて、4人の医師の取材記事などが掲載されています。

そのうちのひとりが私というわけですが、記事を全部読んでみると、私が「浮いて」いるのがわかります。

掲載順に、その要点を書いてみると、こうです。さあ、私はどれでしょう。

(1)医師A:抗酸化作用で老化防止に最適

(2)医師B:毎晩1株食べてます!

(3)医師C:抗酸化力で認知症予防効果あり

(4)医師D:抗酸化力が強く、美容に役立つ

編集部の方もよほど困ったのでしょうか、ネット検索で私を見つけ出し、取材を申し込んできました。

アカデミックなことが何一つ書かれていない私の記事は、他の医師のそれとは一線を画しています。

昨年末に取材を受けたとき、ブロッコリーを毎晩1株食べたことで何が改善したのか、それを尋ねられました。

編集部としては、具体的な数値を示すことで、私の体験談にリアリティーを出すことを求めていたのでしょう。

しょうがなく、体重や中性脂肪の数値を掲載しましたが、私に言わせれば、そのようなことは枝葉末節です。

私が毎晩、食事の最初にブロッコリーを1株食べる目的は、なるべく健全にドカ食いをするためです。

ブロッコリー1株を胃に放り込んだ後の食事は、糖質の吸収もおそらく穏やかで、容易に満腹感が得られます。

私が続けているBOOCSダイエットでは、1日1回の食事でストレスを発散する「1日1快食」が重要なのです。

ワクチン不足は深刻

今年度も、あと2カ月を残すところとなりましたが、MRワクチンの「駆け込み接種」にはご注意ください。

年長児を対象とするMRワクチン第2期接種は、いつも<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1267.html" target="_blank" title="年度末">年度末</a>になって接種希望者が急増するワクチンです。

例年と異なるのは、ワクチン不足。下手したら、品切れのために3月には接種できなくなるおそれもあります。

期限内に接種できなければ、任意接種するしかありません。当院だと、料金は9千円也。やたらに高いですよ。

定期接種なら無料、任意接種は9千円。どうして期限ギリギリまで待つという、リスキーなことしますか。

MRワクチン不足の原因は、これまでにも書いた通り、

(1)ひところの、麻疹(はしか)の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1786.html" target="_blank" title="集団感染騒ぎ">集団感染騒ぎ</a>で、おもに成人のワクチン接種者が急増した

(2)MRワクチンメーカーのひとつ、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1599.html" target="_blank" title="北里第一三共">北里第一三共</a>が、昨年からワクチンの製造を中断している

しかし実際にワクチンが不足していることを認めると、行政の責任になるので、厚労省の言い分(詭弁)は、

(3)ワクチンの流通や在庫が偏っている(全国的に見れば、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1847.html" target="_blank" title="ワクチンは足りている">ワクチンは足りている</a>)

厚労省に尻を叩かれて、保健所があわてて在庫調査や<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1945.html" target="_blank" title="予約数調査">予約数調査</a>をしていることは、前にも書いた通りです。

本日当院が保健所にFAXで報告した、1月末時点でのMRワクチンの予約数は、第1期と第2期あわせて70人。

とてもじゃないですが、そんなに在庫はありません。

途方に暮れていたまさに今日、製造を中断していた北里第一三共が、製造を再開するとの「朗報」あり。

でもよく聞けば、一から作りなおすので出荷まで1年半以上かかるとのこと。朗報じゃなくて「悲報」でした。

MRワクチンの製造が3社体制に戻るのは、1年半後ということです。来年度も、厳しい状況が続きそうです。